この後、日本はいまだ創造的な能力に欠けるところはあるが、良い点は積極的に取り入れていくとし、さらに、自らが1年ほど前に滞在したニューヨークでの体験を語り、これまで諸外国から学んだ多くのことは既に実行に移されていると紹介して、今回も学んだことは国に持ち帰って導入したいと述べています。
日本には、新しいものを生み出す力はないが、文明諸国から良いところを学び、学んだ結果は、即座に反映させていると、鉄道や電線の敷設、灯台の設置、造船所の建設など具体的な例を紹介し、こうしたことへの支援に感謝を述べています。
そしてさらに、今回も多くの情報を持ち帰り、みなさんが発展してきた成果を学び、短時日で通商を増進し、健全なる基礎をつくりたいと述べています。
通商を増進し、生産の増加を図りたいというのではなく、「その一層大なる活動を助長すべき健全なる基礎を作らんことを望む」と言っているのですね。結果を求めるのではなく、結果が生まれる状態をつくりたい、と言う主張です。これは、すごいことですね。
普通であれば、結果を求めるでしょうが、伊藤はそうではありませんでした。言ってみれば、成績の悪い子供が、「成績をよくしたい」というのではなく、「成績をよくできるような習慣を身に着けたい」と言っているようなものです。こんな発想は日本人にもともとあったものでしょうか? 早急に成果を求めるのではなく、体質を変えたいという主張は、聴いていたアメリカ人を驚ろかせたのではないかと思います。
そして最後に、伊藤は以下のように続けます。