障害者雇用の面接の結果



ガタッ・・・

午前中、玄関付近から物音が聞こえた。
おそらくこの音の感じで察するにポストに投函された郵便物が、レターパックライトでもなければネコポスでもないことは明らかだ。
恐る恐る玄関へ向かいポストの中を確認する。

“親展”の文字はないものの、私が応募した求人の職場専用の封筒がそこにはあった。
白い封筒からは中の用紙に記載された文字が薄く透けて見え、思わず目を背けた。
封はセロハンテープでしっかりとめられていたがそれを爪の先を使って端からペリペリ剥がそうなんて考える余地もなく、ビリビリと開けた。


紙を開いてぱっと見で文章量の少なさから不採用だと感じた。
採用されているのならば、次の予定の詳細が記載されているからだ。


“採用は見送らせていただくことになりました”

私はここで働くことが出来ないということに対して残念な気持ちになるわけではなく、あの同じ採用面接を受けた他の2人の女性のどちらかが採用されたという現実に落胆した。

1人は後毛が括れていない髪のボサボサの女性
もう1人はフケまみれの肩の女性

私はこの上記2人のどちらかに負けたと言う現実を受け止めたくなかった。

面接の数日前には美容室でトリートメントをしてサラサラな髪に整え、面接の日には車から降りてコロコロでスーツのゴミを満遍なく完全に取った。どこからどう見ても清潔感と透明感に溢れた爽やか就活生⭐︎といった装いに違いなかったと言うのに・・・


憤りを感じた。


面接では精神障害1級に対して鋭い質問ばかりされていた。

こんなに可愛いくて愛想が良くても、精神障害等級のせいで無愛想で清潔感に欠けた人間の方が採用されるのだ。


そいつが早急に辞めて採用したことを後悔すれば良いと思う。
私は全て隠さず正直に話したし何も悔いはない。
カスタマーハラスメントのトラウマを受け入れてもらえなかったのだろう。
接客業に携わると多かれ少なかれクレーム対応をしなくてはいけない場面に遭遇するだろう。私はそれを助けて欲しかった。援助して欲しかった。やりたくないとは言わなかった。おそらくこの職場は正社員が存在しているにも関わらずパート労働者に面倒なクレーム対応を任せている職場なのだ。ここはコールセンターでもない。そんな底辺な職場でこんな可愛く愛想の良い私が採用されなかったのは、ある意味不幸中の幸いなのだと思わないと、自尊心を保つことが出来ない。



この不採用通知を受けたその日の午後には、他の企業のクローズ求人採用面接が待ち構えていた。
このクローズ求人の面接が終わってから、届いた障害者雇用の採用通知の封筒を確認するべきか一瞬戸惑ったのだが、もし不採用でも今日のクローズ求人の面接に力を入れれば良い。と思い私は封を開けて確認してしまった。この判断は間違った判断だった。

不採用という現実によって倦怠感に苛まれ、体がとても重い。
午後からの面接は頑張ろうなんて気持ちになれなかった。


自分は障害者雇用でさえ認めてもらえなかった。
そんな私がクローズ就労出来るのか?

そんな不安な思いを隠しきれない表情のまま次の面接会場へ向かった。


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