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ドライアイの女はカレーの嫁になってはいけない #04

4年4ヶ月間、毎日カレーを食べ続けた夫と一緒に暮らしているカレーの嫁の手記、4回目です。

最近の夫は、ヴィーガン料理にお熱です。

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夫は、毎日連続でカレーを食べ続けて600日を超えたあたりからイベントでカレーを振る舞うようになった。

600日を超えたあたりからソワソワがはじまる。自分が作ったカレーを誰かに食べてもらいたい... という衝動。ちょっとした飲み会ではカレーを振る舞ったりしていたが、それだけでは飽き足りない。これはギターを始めた人がバンドを組んでライブをやってみたいっていうのと一緒だ。

「好きと、友達と、現場。」 takenacurry

ただ毎日カレーを食べ続け、カレー屋でもなく、間借りカレーもせず、自宅でカレーを試作してウフウフしていた夫に出店オファーがくるという時点で、なんかおかしくない? カレー屋じゃないですよー!

それでも、カレーイベントの依頼はコンスタントに来ていた。ふしぎ。

(※ご安心ください、イベント出店する為の食品衛生責任者の資格は取得済みです。)


夫からは 自宅で作ったカレーを誰かに食べて欲しい欲求 をビシバシ感じていたので「イベント出店できてよかったね…(ホロリ。)」と流れた涙は、イベント前の仕込み時に別の涙となって涙腺から放出することになるのだが、この時のわたしには知る由もない。


イベント時に仕込むカレーの量は、会場キャパ・開催時間・飲食系出店数から来場人数を予想し、なるべく過不足のないような分量を導き出して材料を買い込むのだが、少なくても50人前くらいは作るようだ。

11リットルも入るような寸胴でカレーを作るには、材料もてんこ盛りに必要になる。

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↑ 11リットル入る寸胴をもらって有頂天の夫。

イベントは通常土日に開催されるので、前日の金曜日の夜や土曜日に仕込みが始まる。

普段料理もしないし、ましてや二桁の量のカレーを作るのは未知の領域なので、この量でいいのかな、どうやって切ればいいの…?などとブツブツ言いながらたどたどしく仕込みを始めた夫を、リビングのソファに寝転びながら生ぬるく見守ることにした。

うちはキッチンとリビングが同じ部屋にあり、壁側に向かって料理をする格好になるので、ずっと背中を見ていることになる。


・・・見守ることに5分くらいで飽きたので、読書をしながら料理についての質問や味見のタイミングがくる時を待つことにした。


夏休みの自由研究に精を出す息子を応援するお母さんってこんな感じなのかな…、なんて感慨にふけっている時だった。


あれ?目が…??

めちゃんこ目が痛い…!!!!


私は「夫のカレー作りには手を出さない」がモットーなので、仕込みも一切手伝わないし、口出しもしないので、何をどう作っているのかは全くわからないが、夫の仕込み中の何かが確実に私の目を破壊しようとしている。

痛みと涙でしょぼしょぼした目を薄く開けながら夫に近づくと、キッチンには大量のタマネギのみじん切りがボウルの中に積まれていた。
その数10個以上。

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涙の原因になるのは、硫化アリルという物質です。包丁などで切るとタマネギの細胞が壊れ、中にある物質(アミノ酸や酵素の一種)が混ざり合って反応して、硫化アリルができます。これが蒸発して鼻や目の粘膜を刺激すると、神経から「涙を出して洗い流せ」という信号が出ます。粘膜を守るための、自然な体の反応なのです。

引用:子供の化学


なにこれ…想像通りじゃん。


薄々勘づいていた方も多いと思うが、考えてみてほしい。


確かに、自分で料理をする時にタマネギを切ると目に痛みを感じることは多々ある。

その時、タマネギとあなたは対峙していて、その距離は30cm程度ではないだろうか。

だが、今はお互いが12.2畳の部屋の両端にいて、約4メートルも離れた距離にいるのだ。

間取り

4メートルあれば、フィレンツェのダビデ像がわたしと夫の間に寝そべることができてしまう。

だび

ダビデ像 (ミケランジェロ) 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

それくらい離れているのに目が痛くなるというタマネギの硫化アリルの威力よ…。恐ろしい。


そして、不運なことにわたしはドライアイなのである。

眼球の直上に涙とムチンが合体した液体層があり、その液体層を守る役割の油層を張るために上下瞼の奥に、マイボーム腺というのがある。

目の仕組み


この2層が、外からの刺激やゴミなどで角膜が傷つかないように目を守ってくれている。

だが、わたしはこのマイボーム腺が年中梗塞気味なので、人よりも硫化アリルの刺激を受けやすいんじゃないかと思っている。

目_攻撃


マイボーム腺梗塞はホットタオルなどで温めることにより緩和するので、毎朝毎晩ホットタオルで目を温めるのが日課になった。

だが、揮発した硫化アリルは口や鼻からも粘膜を刺激するのでドライアイだけを治しても結局痛みからは逃げられないのだ。

別の部屋に逃げようにも、寝室との仕切りは引き戸なので揮発した硫化アリルはどこまでも追ってくる。


そう、自宅にわたしの逃げ場はないのだ。


ただ夫がカレーを作っているだけなのに。


それから、イベントの仕込みをする時は行きつけのカフェに避難し、仕込み後の換気が終了してから連絡をもらって帰宅するようになった。

自宅で寛げないストレスも、イベントで夫が作ったカレーを食べたお客さまが「美味しい!」と驚いてくれたりして、一緒にキャッキャしている夫を見ると、まぁいっか。という気持ちになるよね。

得体の知れないカレーを食べてくれた皆さま、ありがとうございます。


今年はコロナ禍でイベント関連がことごとく中止や延期になり、CHANCE THE CURRYで企画していたイベントも当分できない雰囲気なので世の中が落ち着いたら、また企画しようと思います!

その頃には夫のカレーもさらにパワーアップしていると思うので、食べに来てくださいませませ。


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