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豊かさと幸せと理想の社会像

いろんな国に住んで、いろんな国の人の話を聞いてきた私が、豊かさと幸せについて思うこと。


停電の過ごし方

NY郊外で、トトロどころかハイジみたいな環境の寮に住んでいたとき、Hurricaneが来て停電した。街路樹と電柱が近くに立っているから、木が電柱を倒してしまい停電になるらしいのだが、その後数日間、家では水しか使えなかった。学校や友達の家は問題なかったので、gymでシャワーを浴びたり、友達の家に泊まらせてもらったりして私は過ごした。寒い時期だった。

そのときとても印象的な出来事があった。話すたび、「それめっちゃいい~」と言ってもらえる話である。

寮のKitchenに物を取りに行ってみると、コートを着込んだhousematesたちが、candlesを囲んで楽しそうに話していた。停電している環境を、みんなで、できるだけ楽しく過ごそうということで集まっていた。

停電していないときのKitchen. Partyだったんだね

お湯が出ないとか、電気が点かないとか、文句を言うことはいくらでもできる。パニックになることも、悲観することも、諦めることもできる。当時20歳だった私は、それしか思いつかなかった。
でも、こうして、いろんなモノがなくても、楽しく過ごすことは可能なんだな…と、物質と豊かさについて、考えたのだった。

この家に住んでいた人は、EUが多かったことは付け加えておく。これが重要であることが、ぶるぶるに来てわかったのである。

その後も、「雪が降ったら学校が休みで交通機関が止まる」という、雪国育ちで一度も学校が休みになったことがない私からすると仰天なことが、アメリカでは普通だった。日本のインフラって強いんだな…と実感すると共に、当時、とても印象的だったのが、

高校のclassmateが、"JRは最近遅れが多くて、なってないと思う!"と文句を言っていた

ということである。笑
かたや、数時間の遅れで文句を言う。
かたや、交通機関が一切動いていないのに、こんなこともあるよね、と楽しんでいる。その日は雪の中友達が寮に遊びに来て、帰りに友達とバス停まで歩いて送った。

こうも違う状況と反応だけど、その状況で私たちが幸せかどうかには、やはり直結しなかった。文句を言っていたclassmateのほうが、交通機関が止まっている私たちよりも、不幸だったろうと思う。

こうして常識が覆されるというか、そういえば大切なものって何だろうな?と考えるようなことが、アメリカでは繰り返し起こった。幸せそうなhomelessについて↓で書いたけれど、これが起きたのも同時期だった。

イギリスとアメリカ

ここでもう一つ思い出すこと。
NYの学校には、イギリスから留学に来ている子がいて(珍しい)、共通の友達がいて仲良くなった。

当時、Royal weddingがあり(Meghan/Harryより前ね)、この子がNYのお茶屋でroyal weddingのマグを買い、そのお茶屋でみんなでCream teaを頼み(Tea and sympathyという、Crazy Rich Asiansにも出てくるお店だよ)、そのお店のとなりでFish&Chipsを食べたこともあった。私が冬休みにイギリスに行って文学(Shakespeareとかね)を学ぶクラスを取ったときには、帰省していたこの子に現地でも会った(Camdenに飲みに行った)。

画質に時代を感じるね。当時は編集Appもなかったもんなあ

その子の話である。私の留学前学校時代の友達が、NYに遊びに来たとき、「アメリカとイギリス、どっちがおすすめ?」と聞いたところ、
「お金持ちになりたいなら、アメリカ。いい人(partnerよりも広義で)に出会いたいなら、イギリスだよ。アメリカは若い国だから、お金が人を幸せにするってまだ信じている。イギリスはそんなアメリカがうらやましくもあるんだけどね」

と答えていた。これがとても印象に残った。あくまで20歳そこそこのイギリスの子の一意見ですけども。
「経済が伸びておらず、古いものを修理しながら大事に使っていく文化だからね」、とその後中学の恩師に言われた。

ネパールは貧乏でも幸せ

ネパールでは、道路(というか大通りから入って住宅が並んでいるあたり)で子供が遊んでいたり、お母さんたちが野菜を裂いていたりと、日常生活を見ることができた。アメリカでも日本でも、cafeにいる人や、公園でくつろいでいる人を見ることはあっても、生活の様子を見ることはなかったなあ、と思った。

Momo屋台

そして、ネパールの人は、とても幸せそうだった。ネパールが好きで、道で食べるアイス(大人気)やmomoやPani puri(売り切れ御免)が好きだった。欧米のようにはなってほしくない、と言っている人もいたし、こんな貧乏な国は嫌だわ、早く出たいわ、豊かな国になってほしいわ、と聞くことはなかった。アメリカの大学(院)に行こうとしている人にはたくさん会ったけれど、それでも、「給料や機会の差がなければ帰りたい」とよく聞いた。ネパールに限らんけど。
(そして、これを聞くたびに、日本嫌いだった私は、悶々とした)

そうして日本に戻って町中を歩いて聞こえてくるのは、なんと文句が多いのか、というか、できていないほうに目が向くのはなぜか、細かい民族だからそういうものらしいんだけど…と思った。
アメリカで同じ家に住んでいたトルコの子が旅行に来た時に聞いてみたところ、「電車で通勤している人は幸せそうじゃなくて、みんな受け身で話しかけられるのを待っているかんじ。だけど週末は幸せに見えるよ」と言っていた。

ベルギー

EUの中でも、南北や東西やらで、かなり違いはあるものの、私が感じているのは、全体的にsocialist/welfare stateということ。

Socialistというのは、政治として、下の層の人(難民とか低所得とかね)を助けることをとても重視しているということ。自分が高収入の仕事に就いて稼ぐ、ということではなく、必要な人にserviceが届くかどうかをすごーく気にしている印象を受ける。そういうわけで、公営住宅をsupportしたりするらしい…私は公営住宅に住みたくはない。

家の資産価値というのは、こちらでは基本的に上がっていくものらしい。
価値が落ちて行くだけの日本のhousing marketが例外らしい。

競争社会でもないのだけど、その分税金はものすごく高い。上でイギリスの子が指摘したような、伸びている国の勢い、というようなものを感じない。個人的にはつまらない。

そして、消費しない、ということ。アメリカではonline shoppingの利用率が高く、郵便事情もこちらより良かった(信じられないことだけど)。それに比べると、Amazon boxes/deliveryの数が少ないし、外食も高いのでしないし、おしゃれやメイクも全然しない。

週末はどう過ごしているのか?と言えば、ある人によると、スポーツして、house partyをしているらしい…都会にいる意味ないやん!
外食や買い物、新しい気になるお店に行ってみる、という楽しみがあるんだけどなー、と思いながら、私は出かけている。

ちなみに、ベルギーの帰化コースを取っているのだけれど、最初に学んだ価値観というのが、「余暇の権利」だった。貧乏でも余暇の権利はあるから、電車が安いとか、割引がある、ということである。
"勤勉"でも"社会保障"でもなく、余暇/leisureが、仕事や難民やらでベルギーに来た人に学んでほしいこと。そんな国である。

豊かで幸せな北欧は

で、さらに私が驚いたのは、ぶるぶるで会った北欧の子が、
「クリスマスには、ユニクロで色々買い物をしてしまうかもしれないわ」
と、楽しそうに話していたこと。

ユニクロだっておしゃれになってきてるんだよ最近は!なんてのは、おしゃれじゃない人が言うことだと思う。

さらに安いGUはあるけれど、ユニクロって誰でも買える、一切高くない、全身コーディネートしてたらセンスないと言われるお店だ。着ていたら見ればわかる。少なくともおしゃれな人だなとは思わない。
言うならば、"100均でたくさん買うわ"、と言っていたようなもの。この子は学生だからね、で済んだらいいんだけどね…

税金が高いと、収入が高くても、使えるお金が少なくなる。
税金が高いと、物価が上がるので、消費をしなくなる。

物の生産・消費ではなくthrift storeで買い物をするとか、近所の人が協力してモノを直し合うrepair cafeとか、そういう取り組み自体はいいものだと思う。ただ、物が高くなくても、税金が高いことで結局消費をしなくなるのであれば、経済は回らないわけで、理論的には賃金も上がらないことになる…よね(それでprotestsするのかな)。

これが豊かで幸せな国の実態なのだろうか?

理想の社会像

で、ここで一つ。
ここまでいろんな常識や前提が違うと、話が通じない。それは、物事とはこう動くもの、という違いもあるけれど、理想の社会が違うということだと思う。というか気づくに至った。

"Equal opportunity"というのが、アメリカの価値観であるように思う。American Dreamにあるように、まじめに働いていれば、blue collarでも家が買える。Immigrantでも、子供が大学に行けば、はしごを上ることができる。だれでも平等、それがアメリカ。

日本の格差については詳しくないけれど、社会の仕組みとしては、"だってその方が便利でいいじゃん"で回っているような気がする。
「こっから先はほかの誰かの仕事なんで」「休暇なんで」「ストライキするから」と線を引くことも、良しとされない。まわりの目があるので、ちゃんとしておかないと、というpressureが、宗教も何もないのに強い。だから、家やインフラや制度なんかは、何やねんこれは!とはならない。
加えて、お客様は神様であるからして(めっちゃ日本な言い回し、これもuniversalでは全くない)、文句を言っても言わなくても、色々サービスをやってくれるように思う。そうして至れり尽くせりなものが残っていく。

EUは、これはある人の意見も参考にしているのだけど、みんなそれなりのレベルにいて、飛び抜けることもなく、取りこぼすこともない、というかんじ。
Classで習ったのは、social mix=いろんな所得の人が同じ地域に暮らしている=良い、ということ。Ethnic mix/diversityは私もいいと思うけれど、incomeは…正直同意しない。高級住宅街って素敵だなあ、タワーマンションっていいなあ、稼いで住めるようになったらいいなあ、と思うよね?家賃が高すぎてhomelessになった人がいっぱいいるのに、問題解決になってないじゃないか!とは、思わないよね?これもcultural differenceなのである。

もちろん、どれも理想であり、現実は色々あるけどね。

どっちもほしい

モノの豊かさと、人のつながり。
人とのつながりが希薄な日本から出ると、どこの国に行っても、人っていいなーと思うものだと思う。それはアメリカでもそうだったし、こっちでもそうだ。お金やら流行りやら、物質的な豊かさ以外にも、良い家族や友達がいることも豊かであることはわかる。どちらも必要で、どっちかっていうと、つながりの方が重要なのもわかる。

私は日本脱出前はメルカリで売買することが多く、新品の服を買うことは少なくて、それでいいと思っていた。新しい物を買う!というのは、雑誌では見れど、もう考えとして古いんじゃないかな、とも思った。
けれど、これだけ倹約な場所に来てみると、外食も買い物もおしゃれも楽しいじゃん!と、反対側にswingしていることに気づく。だって、倹約続きじゃ、つまんないじゃん?貯蓄が伸びていく安心感や達成感もあるし、お金の余裕は心の余裕でもある。

だから思う。私はモノの豊かさもほしいわ、と。
"When you have all you need, build a longer table, not a higher fence."
というのは、20代でmillionaireになったTori Dunlupが書いていたこと。
豊かであれば、与えることもできる。私は清貧ではなく、豊かになって与える道を選ぶ。


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