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「好き」が一番の原動力。写真人生のこれまでと、これから。|Artist Interview - Yukinori Hasumi 6/6

What’s “Artist Interview” ?
写真のCURBONが、「写真の階段の登り方」をテーマに、活躍中のアーティストにインタビューする連載企画。Hasumi Yukinoriさんのインタビューを公開中です

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Hasumi's profile (@833__3
埼玉県出身。”都市”の魅力を表現することを追求しているフォトグラファー。癒しや安堵を与えてくれる夜の街明かりをアイデンティティとし、東京とニューヨークへの強い愛着を原動力に、”都会への憧れ”を想起させるような作品を創ることを目指している。大学時代に建築を学んでいたことから、近代建築にも造詣が深い。

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ーー 写真って、最初の一歩も大事ですが、続けることも意外と難しいと思うんですね。続けていく中で心が折れてしまう人も多い。

Hasumiさんは最初のカメラを買われたのが10年近く前とおっしゃっていましたよね。今まで写真に飽きてしまったり、カメラから離れたくなったりしたことはなかったんでしょうか。

うーん、なかったと思います。僕の場合は、被写体である都市への愛が強すぎて。そういう境地に陥ったことがないです。要はバカなんですよ(笑)。

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ーー 10年も続けてこられて、スランプがないんですね……!

あらためて、すごいエネルギーですね。映画「バットマン」への憧れや、都市への愛が枯渇しないから、写真に飽きる理由もないということですね。

僕の場合は、「写真が好き」というより「都市が好き」なんだと思います。

被写体である都市が好きすぎる。だからこそ続けられていると思うんですよ。

ゴッサムシティ(映画「バットマン」に出てくる架空都市)への憧れがある限り、写真は撮り続けます。

ゴッサムシティへの憧れは一生消えることはないんです。だから、写真に飽きることはないと思います。

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ーー 枯渇しない愛……。すごい原動力ですね。写真への向き合い方といえば、フリーランスとして活動されていた頃のお話も伺いたいです。

そうですね……。

だんだん写真にのめり込むようになり、「写真を仕事にしたい」と思うようになりました。それで2019年の頭に、思い切ってフリーランスになりました。

ーー その後いろいろあって、フリーランスから会社員に戻られたというお話でしたよね。

そうなんです。たまに「趣味を仕事にしないほうがいい」という話を聞くことがありますよね。

僕の場合、まさにそうだったんですよ。

フリーランスの写真家の場合、当然、自分の好きなもの以外も撮らなきゃいけませんよね。クライアントの要求もありますし。

そこで葛藤が生じてしまって。純粋に「写真」が好きではなかったことに気付いてしまったんです。

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ーー Hasumiさんが写真を続けるモチベーションは都市への憧れだとおっしゃっていましたもんね。愛情のない写真を撮るのがしんどかったということでしょうか。

そうですね。とある撮影を受けた際、撮って、現像して、納品して……という一連の流れの中で、自分のモチベーションが一度も上がっていないことに気づいたんですよ。

もちろん、お仕事なので頑張って撮影します。だけど、「お金をもらうためにやってるな」という自分の本音に気付いてしまって……。

撮影への情熱がないことに気がついて、「これはもうやめた方がいいな」と。

ーー 「お金のために、愛情がなくても撮り続ける」という選択肢もある中で、「モチベーションが上がらないならやめた方がいい」と選択できる。誰もが取れる選択肢ではないですよね。そのことが本当にすごいと思います。


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ーー 取材も終盤に近づいてきたので、最近のことについてもお伺いしたいです。

2020年、コロナで写真を取り巻く状況も一変してしまいました。今までのように自由に外には撮りにいけない状況の中で、写真との向き合い方に何か変化のようなものはありましたか?

うーん。変化というほどではないですが、ずっと過去の写真を現像していました。撮りにいけないのはしょうがないと思っていたので。

ーー 今まで撮りためてきた作品を、よりよい仕上がりにするために現像をなさっていたと。

はい。ひたすら現像していました。あんまりネガティブな気持ちにはなっていなかったですね。ニューヨークにいけないのはもちろん辛いですけど。

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ーー すごいです。Hasumiさんご自身は「努力している」という意識ではないのだと思いますが、私から見ると膨大な量の努力に見えます……!

今後、写真でチャレンジしてみたいことはありますか?

目標はあります。ひとつは、銀座のソニーストアで個展をやるのが目標ですね。

ソニーストアは、銀座四丁目の交差点という立地が良いんです。去年、写真家の横田裕市さんがそこで個展を開かれていて。実際に行ってみたらとても羨ましい気持ちになってしまいまして。「絶対自分もやろう!」と思いました。

あと、いつか写真集を出したいという気持ちはありますね。

ニューヨークに通って、作品を撮りためていって。いつかは写真展と写真集の目標を実現したいと思っています。

ーー すごく素敵ですね。楽しみにしています!

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<編集後記>

Hasumiさんにお話を伺うなかで一番印象に残ったのは、その膨大な量の “努力” でした。

ご自身は努力しているつもりはないとのことだったけれど、Lightroomの使い方ひとつとっても、地道な積み重ねをこつこつ続けてこられたのは事実。

そしてもう一つ、「写真が好きと言うより、都市が好き」という言葉も印象的でした。

カメラや機材を好きであり続けることももちろん素晴らしいけれど、それだけが「写真愛」というわけではないんだな、と。

あくまで手段として写真を好きでい続けることも、立派な写真愛なんだと思うと、どこか私自身の気持ちも軽くなる気がしました。

100人の写真好きがいれば、100人それぞれの「写真愛」の形がある。そんなことを思わせていただいた時間になりました。

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Interviewer / Writer : 片渕ゆり(@yuriponzuu
大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いから退職。2019年9月から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している
Editor :伊佐知美(@tomomi_isa
「旅と写真と文章と」をこよなく愛す編集者、フォトグラファー。日本一周、世界二周、4年間の旅×仕事の日々を経て、2020年夏より日本で一番人口の少ない沖縄県読谷村にて、海と空とさとうきびに囲まれた暮らしを開始


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