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都市と空が描く輪郭。スカイラインを追い求めて。|Artist Interview - Yukinori Hasumi 5/6

What’s “Artist Interview” ?
写真のCURBONが、「写真の階段の登り方」をテーマに、活躍中のアーティストにインタビューする連載企画。Hasumi Yukinoriさんのインタビューを公開中です。

HASUMIプロフィール

Hasumi's profile (@833__3
埼玉県出身。”都市”の魅力を表現することを追求しているフォトグラファー。癒しや安堵を与えてくれる夜の街明かりをアイデンティティとし、東京とニューヨークへの強い愛着を原動力に、”都会への憧れ”を想起させるような作品を創ることを目指している。大学時代に建築を学んでいたことから、近代建築にも造詣が深い。


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ーー Hasumiさんのnote を拝読してもう一つ印象的だったのが、色にまつわるお話です。

ーー Hasumiさんは東京の湾岸地区を「サードプレイス」とおっしゃるくらいお好きなんですよね。

そして、好きな理由のひとつが「色」なのだと。空と海が青、草木が緑、建物が白。この色のバランスが、自然の配色と同じだーーというお話でした。 

私を含め、多くの人は、そういう視点をもって街を見たことがないと思うんですよね。Hasumiさんの目には、街の景色がどういうふうに見えているんだろう?と気になっていまして。

街を見るとき、どこに注目して見ているのか、どのような色や形を捕らえられているのか。ぜひお話しいただきたいです。

そうですね。たとえば都市の場合ですと、僕が一番好きなのは「スカイライン」なんです。スカイラインというのは、都市と空の輪郭のこと。街の輪郭とも言えます。それがすごく好きで。

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そもそも僕は、街を生き物だと思っているんです。巨大な命を宿した生命体のようなイメージ。

で、スカイラインが高い街というのはつまり、栄えている街なんですよね。

ニューヨークをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。街が空に向かって主張しているような。それがすごく好きなんですよ。

ーー 生命力の強さを感じるということでしょうか?

そうですね。無機質なんだけど、息づいている。

なんて言えばいいんだろうな、難しいな。無機質な物体が、空にむかって主張しているところに惹かれてしまうんですよね。

論理的になぜ好きかを説明しようとしても、わからないんですけど。これも結局は、ゴッサムシティ(映画「バットマン」に登場する架空都市)への憧れですね。

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ーー そうなんですね。じゃあ、たとえば電車に乗って窓の外を見た時、Hasumiさんが一番意識して目を向けるのは「スカイライン」ということでしょうか?

そうですね。つい意識して見てしまいます。

ーーそれが、撮りたい景色とイコールだと考えてよいのでしょうか。

それですね。スカイラインを撮りたいんです。

ーー やはりスカイラインへの愛なんですね。

ちなみに人や動物のような動く被写体だと、いつがシャッターチャンスなのかわかりやすいと思うんですが、ビルは動きませんよね。動かない存在に対して、Hasumiさんが「今だ!」と感じてシャッターを切る瞬間はあるのでしょうか?

いちばん表現したいのは、街の息遣いなんですよ。

街って、時間帯や天候だったり撮影するロケーションだったり、それらを変えることによって、すごく表情豊かに変化するんです。

例を挙げるならば、夕方になって、街に明かりがポツポツついてくような瞬間でしょうか。

あと、すごく好きな瞬間が夜明けです。太陽が昇ってきて、ビルとビルのあいだに強い光が入ってくる。都市が生きているのを感じられる瞬間なんです。そういうタイミングを狙いますね。

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ーー ビルは動かないけれど、息遣いや表情は常に変化しているんですね。

Hasumiさんは大学時代に建築を学ばれていたとのことですが、建築について学んだことと、Hasumiさんの都市に対する視点はつながっていると思いますか?

そう思います。建築も好きなのですが、やっぱり学んだことが生かされている気がしますね。

建築を見ると、つい、設計者の意図のようなものを汲み取りたくなっちゃうんですね。「ここは絶対見てほしいポイントなんだろうな」という部分を、なるべく汲み取ろうとして撮影しています。

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ーー ご自身のnote の中で、丸の内の夜景についても言及されていましたよね。

ーー 「クラウン」と呼ばれる王冠のような装飾部分があるのだと。そのクラウンに対して、単に「きれいだな」で終わらず「自己顕示欲の強さ」と解釈されているのを見て、なるほどと思いました。

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ビルの上部でオレンジ色に輝いているのが「クラウン」。

ーー Hasumiさんが建築から読み取った情報が、写真の中に込められている。だからこそ、見る方にもそのわくわく感が伝わってきているのかもしれませんね。

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Interviewer / Writer : 片渕ゆり(@yuriponzuu
大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いから退職。2019年9月から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している
Editor :伊佐知美(@tomomi_isa
「旅と写真と文章と」をこよなく愛す編集者、フォトグラファー。日本一周、世界二周、4年間の旅×仕事の日々を経て、2020年夏より日本で一番人口の少ない沖縄県読谷村にて、海と空とさとうきびに囲まれた暮らしを開始




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