不法投棄『2023.12.13』
今日は本の返却日。
私は計画性がゼロなので、一冊も読めず返却することになった。重い本を借り、読まずに返す。自分でも意味が分からない、無駄な運搬だった。
「散歩に出ろ」
大学時代の尊敬している先生に会いに行った時に言われた。
働かないで家にずっといるより、外に出て何かを感じた方が、物語も思い浮かぶだろう。先生はそう言ってくれた。
それを聞いてから外に出ようと試みた日もあったが、私の住む地域は鬼寒い雪国。先生に会った時点では雪は降っていなかったけれど、雪を待ち侘びている寒さだった。
仕方なく断念していた散歩だけれど「本を返す」という名目で、外に出ることにした。
1番近くの図書センターまで、片道徒歩25分だとGoogle先生は教えてくれた。だが、前日に降った大雪がまだ残っているからとても滑りやすい。注意しなければいけない。
外に出た時、私に対向するように中学生が帰って来ていた。ちょうど帰宅時間だったみたいだ。10年前に着ていた制服達が、私の前を通り過ぎた。
10年前?やば。
大きな橋を渡って、大きなスーパーを越えて、図書センターはそこにあった。経過時間は約25分。Google先生は積雪まで想定していたのかと疑う。
「はい、良いですよ〜」
今日の目的は4秒で終わった。早い。ここまで来てもったいないかと思ってセンター中を見回した。
だが、冬靴で踏んでも分かるほどの柔らかい絨毯や、「のみものはのまないでください」と優しい自体で書かれた看板が、その場のアットホーム感を演出していて、怖くてセンターを出た。
仕事を辞めてすぐ、辺りを散歩していた時は、目的を達成した後もぐるっと遠回りをして家に帰っていた。いつも徒歩では通らない道を回って、色んな気付きを得て帰りたいと思うからだ。今日もその予定で、センターのドアを開けた。
待ってましたと言わんばかりに私の右頬から左肩に向かって暴風が突き抜けた。
行きと違って、阿呆みたいに雪と風がはしゃいでいた。
私の計画は丸潰れ。ああこれ風邪引くなあ。そう思いながら耳を真っ赤にして、陽気な音楽を聴きながら家に帰ったのだった。
さて、ここまでで870字ある日記。たかが1時間外に出ただけで、こんなにも書けるものがあった。
やっぱり先生の言っていた事は正しかった。中にいる時の無駄な悩みや葛藤は、この1時間には1ミリも含まれていなかったからだ。外に出ると、それだけ情報を収集出来て、深く考え込まないでいられて、日記を充実させることが出来て、いい事づくめだ。
外に出ようと思った。次は完全防備をして、小学生みたいな格好で外に出てやろうと思う。
家に籠り過ぎて育ってしまった、小さな「負」を持って、雪山に捨てに行こう。
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