私(8歳)『日記:2024.3.11』
今日は1日掛けて部屋の掃除をした。
仕事を辞めてすぐ、1日掛けて掃除をした日があった。
住めれば良いと思っている本当にだらしない人間なので、家族以外の人間は部屋に入れられないくらいごちゃついている。
だからたまに「あ、明日掃除しようか」と思い付いては、一日中掃除をする。そしてピカピカになった部屋を見渡して、新品みたいだな、と思う。
本棚の上にぬいぐるみを3体置いている。
高校生の時、ぬいぐるみいっぱいのベッドに憧れて、部屋にある全てのぬいぐるみを枕元に置いてみたことがある。とても可愛くて夢のような空間だったけれど、だらしがない私が彼らの管理をこなせる訳もなくすぐに埃に溢れてしまった。
ぬいぐるみ達との生活は2日で終わった。
それから様々な配属先を経て、本棚の上に就職したのが、水色の犬、黒い犬、母お手製の服を着た熊の女の子。彼らはいつも寄り添って、私のことを見守ってくれている。
だが私が覚えている限り、今までの掃除で彼らに触れたことがない。彼らを綺麗にしていない。
「仲良くさせておくからね」
熊を真ん中にして2匹の犬が寄り添うように置かれた彼らは、母の采配でそのようなポーズをとっていた。でもそれは高校くらいだった気がする。
まずい。
私は3体と、他のフィギュアや雑貨を避けて本棚の上を掃除した。予想通り、くしゃみが出た。
そしてぬいぐるみを確認する。
水色の犬。彼は私が小学2年生の時から一緒にいるぬいぐるみだ。
小学2年生の時に数ヶ月入院した。その時母が寂しくないようにと買ってくれたのが彼だ。首根っこを掴んだら持ちやすかったのか、首元の綿は体の方に降りてしまって布しか残っていない。私は大人になったので、お腹を優しく持つ事が出来る。
頭を撫でると埃が舞った。どうして今まで気付かなかったのだろう。あんなに助けてもらった彼を無碍にして生活していた私はどんなに偉い人間だったのだろう。
私は彼の埃を払った後、彼を抱き締めた。初めて彼を抱き締めた時からもう16年も経っている。
あの時は、24歳になる自分が仕事を辞めて夢に向かって突っ走っているとは思っていないだろうな。な、お前もそう思うだろ?
抱き締められている彼は、自然と顔が上に向くようになっていて目が合った。目も汚れてしまっていたから指で拭った。
8歳だった私は、今と違ってあまり自我が無かった。その代わり「やりたくない」「出来ない」とNOは言える子だった。
それに好奇心が追加された今、厄介な人間になってしまったかもしれない。
でもきっと私(8歳)は、まあ良いんじゃないのその道で、と言うはずだ。
私(8歳)は、何にも興味が無かったけれど、何かに興味を持つことが羨ましかった。習い事に没頭していたり、ゲームが好きだったり、好きな子がいてその話で盛り上がるガールズトークだったり。私(8歳)はそれにあまり付いていけなかった。付いていきたいとも思ってないけれど。
だから逆に褒められるかもしれない。夢とかやりたいこととか見つけられて良かったねって、あの頃から客観視が得意だった私(8歳)は言うかもしれない。
過去の私が大丈夫というなら、大丈夫だろう。
私はまた明日、過去の自分に背中を押されながら前を向く。
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