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24節季朗読集

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日本にある色とりどりの四季 それは春夏秋冬… しかし、季節ってもっと複雑で細やかなもの アナタは何を感じますか? 日本にある繊細な季節の表現 私なりに『朗読』という形で…
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記事一覧

冬至(とうじ)

冬至(とうじ)

『冬至』

この日が訪れる瞬間、僕の心は黒く染まる

恐れているのか‥‥夜を

怖いのか‥‥暗闇が

冬の寒さと一緒に連れてくる濃い群青の色がオレンジに染まっていた夕日を飲み込んでゆく

北風のように強く、吹雪のように鋭い‥‥

あぁ

そうだ

僕は怖いんだ

言葉を失う程に綺麗に黒く、青く‥‥染まる夜が

僕の心が美しく‥‥黒く染まる

寒露(かんろ)

寒露(かんろ)

昼が短く、夜が長くなり秋空が濃く

月が綺麗に見えた中

菊の花が咲いている横を僕は歩く

暑がりの僕にも過ごしやすくなって内心喜びながら

空に手をかざす

月明かりが綺麗だからか

街灯の光がないからか

自分の手じゃないみたいで
儚く消えそうだった

何もかも月の光で消えてしまいそうと怖くなった

でもそれは意識と共にここに戻された

隣にいる凛となる音によって

僕はその音を聞きたくて

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秋分 (しゅうぶん)

秋分 (しゅうぶん)

秋の訪れをどこで感じる?

紅葉を見た時か?
暑さが和らいだ瞬間か?
それとも…モズの鳴き声が聞こえた時?

僕は違う

僕が秋の訪れを感じる時は
新米を食べた時だ

その年に起きた出来事を沢山詰め込んで出来たお米
沢山の身に浴びる恵みを受け…
それがお米の味わいになっていく

それをいただく
1年のこの秋にしか口にすることが出来ない、この年しかない味わい

今しかない味

新米を炊いたご飯を口に

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白露(はくろ)

白露(はくろ)

『白露』

人でごった返す街
気づけば新しいビルが増えて
ゆっくり空が消えていくこの世界

無機質な人や街に何か感じるものがあるのか

音や目に見えるものばかりでうんざりしている

その視界から見えたアスファルトに
汗がしたたり落ちた

アスファルトに落ちる前に
その雫は熱気で見えなくなった

この熱はいつまでで続くのかと
ベンチに座わり日陰を堪能した
生ぬるい温度の風が肌を掠めた中に

感じた

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処暑(しょしょ)

処暑(しょしょ)

『処暑』

アスファルトの匂い
人の匂い
物が焼ける匂い

独特な香りが和らいでくる
ゆっくりだが熱共に鼻から柔らかに匂い始めた

その変化に一瞬、僕はホッとしたが
変化のきまぐれさを知っているから
ぬか喜びそうと自分を抑えた

ただゆっくりと日々は変わる

変わらないなんてことはない
必ず、季節も僕も変わる

だから今は季節と共に
夏から秋へと変化を楽しむことにした

立秋(りっしゅう)

立秋(りっしゅう)

『立秋』

静かな空間に扇風機の音だけがサーサーッと風の音を作る

昼間の暑さから少し落ち着いたかなと肌で感じていた

ペラペラと最後、手を動かす度に手のひらにくっついてくる紙がくっつかなくなったからだ

カランと氷の入った麦茶のコップから音が生まれた

もうすぐ
もうすぐ終わる

『終了』という希望が見え、大体の時間を予測する

水滴がついたコップを持ち上げ、
もうひと頑張りを気合いと共に麦茶を

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大暑 (たいしょ)

大暑 (たいしょ)

『大暑』

喉が乾く
心も乾く
潤っているのは汗による肌くらいだ

走っても走っても届かない
掴むなんてもちろん、かすりもしない

前に輝くひとつの影を捕まえようと空気を何度掴んだだろうか

満たされない
乾く乾く

力なく伸ばした手にポツリと水滴が落ちた

汗かと思えば
体の上から落ちてきたものだった

強くなっていく

夕立がこんなにありがたいと思ったことはない

『これだけ降れば、少しは潤う

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小暑 (しょうしょ)

小暑 (しょうしょ)

『小暑』

段々と触れている水の温度が上がり、手先が動きやすくなった

その温度催促は私を上へ上へ、光へと導くようにと感じた

水面へと顔を出した私は光の強さに驚いた

体から光る水が消えてゆく

体の温度が上がってゆく

ここから先は1番、私が輝く時

限りあるからこそ、美しい

私を見て?

1番綺麗な私だから

光へと伸びて開いていく

蓮の想い

夏至(げし)

夏至(げし)

『夏至』

透き通る雫に喜びを感じる紫陽花と違って

僕の頬を流れる滴に喜びを感じることは出来ない

紫や青、桃色と……
彩度が低く淡く煌めく紫陽花の花達はまるで

「今日も雨が降ってくれて嬉しいわ」

と談笑してるように見えた

街に住む僕にとっては不快でしかない雨は

この世界に必要不可欠なもの

と上を見上げて黄昏ていたら
灰色の雲が、次第に薄く青に変わってきた

太陽だ

視界が白く、キラ

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芒種(ぼうしゅ)

芒種(ぼうしゅ)

『芒種』

ジメジメした
今にも水が降り出しそうなこんな日に
ベランダで汗をかきながら
ガーデニングを始めた彼

その姿は楽しそうで

唯でさえムシムシと蒸し暑く
イライラしている私には目もくれず、
『種』と向き合っている

『それ、何になるの?』と聞くと

『花』と返ってきた

花なんて好きじゃないくせにとぼやき、
アイスコーヒーでも入れてあげるかと
キッチンに戻ろうとした時

『必ず、色とりど

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小満(しょうまん)

小満(しょうまん)

『小満』

毎朝、繰り返し歩く道のりに僕の心や目、
足は飽きていた

何も変わらない毎日

何も変わらない繰り返す作業

何も変わらなく繰り出される言葉

すれ違う顔は僕のように飽きた顔に見えた

単調に毎日を送る、僕は成長しているのだろうか。

飽きてきた心に小さな不安が光る

歩き慣れた道の途中で公園がある

そこに生えている草木は色を変え、
形を変え、大きくなっている

目に見える形に

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立夏(りっか)

立夏(りっか)

首から流れ落ちた
この季節になると感じるゾワっとした懐かしいもの

とうとうこんな季節が巡ってしまったのかと
嫌な思いを感じた矢先、
目の前を掛けていく少年少女、
持っていたカバンの中から水着が少しはみ出していた

楽しそうに笑いながら風のように掛けて行ったのだ

「今」しか感じられないもの

私の頭の中でシャワーの音が流れ出した

「あ……」声が出た

水に触れる機会が増える季節
子供だけじゃな

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穀雨(こくう)

穀雨(こくう)

僕はひとつ、種をまいた

何になるかわからないその種

誰にもわからない

不思議な種

でも誰にでも、蒔くことが出来る種

そうだ、この種は「未来」

出来たそのものは

不揃いだがとても美味しそうな「未来」だ

晴明(せいめい)

晴明(せいめい)

音が紡ぎ出す世界
リズムが人の形をして踊り出す
笑顔がこぼれ出す

好き

楽しい

幸せ

心が訴える

音の世界は素晴らしい

僕はこの世界で救われたんだ

僕は君の手を取って走り出す
今度は君が楽しむ番なんだ