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ドイツのクリスマス文化②、ツリーや飾り

ドイツの豊かなクリスマス文化の全般概要について整理するシリーズ。

前回の第一回目は食べ物や飲み物について。続いて今回は、ドイツのクリスマスツリーや飾りについて(*ドイツに住んでいます)。

この投稿は、「ひぐち @ デンマークで仕事中🇩🇰」さんが立ち上げられたアドベントカレンダー企画の「Let's シェア! 外国のクリスマス🎄」に乗っからせていただきます!

さて、まずはドイツでのクリスマスツリーの作り方から。

【クリスマスツリーの作り方】

クリスマスツリーを飾る文化は、ドイツ南西部(フライブルク)発祥。生モミの木のツリーを飾る家庭と、人工のツリーを飾る家庭に分かれる。ここでは生モミの木を使ってクリスマスツリーを作る要領について。

基本的には4点を揃える必要がある。
①モミの木、②木を支える台、③オーナメント、④ライト

およその値段の目安は、それぞれ最低限のものでだいたい2500円程度ずつ、つまり合計で1万円くらい。これら一式を揃えれば、翌年からは新しいモミの木を買うだけなので、1年2500円程度の出費で継続することができる。けど、だいたい新しいオーナメントを追加したくなったりして、プラスαを買い足すことになる。

因みにドイツでは年間約3000万本の生モミの木が買われるらしい。ドイツの世帯数は約3700万。お店や職場に置かれるものもあるとはいえ、かなりの割合の世帯が生モミの木を買っている様子。

では、どうやって生モミの木を使ってクリスマスツリーを飾るのか。まずは生モミの木を買うところからスタート!

(1)生モミの木屋さんへゴー!

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毎年12月には街の至る所で生のモミの木が売られているから、どこかのタイミングで買ってくる。この写真は、会社近くの空き地に、この時期になると突如出現する生モミの木屋さん(早口言葉みたいな語感・・・)。

他にも、森の中にモミの木市場がオープンする場所もある。そこでは、地面に生えているモミの木の中から気に入ったものを指定すると、その場で電動のこぎりで切ってくれる。

いずれにせよ、気に入った大きさのイイ感じの枝ぶりの木を選ぶ。するとお店の人がメッシュのネットで木を覆ってくれるので、それを車に乗せて持って帰る。この時、だいたい切り口から沁み出した松ヤニが手について、ベトベトした手で運転して帰るのが毎年のお決まり。

ちなみに、木を切るから「環境に悪い」という指摘もある。でも、自然に生えているモミの木を切って売るわけではなく、農業と同じように森の中で場所を決めて計画的に植えて、育てて、売っている。だから、それほど環境に悪くないとも言われている。

(2)クリスマスグッズを売る園芸屋さん

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この時期はいろんな場所でクリスマスグッズが販売されるので、そういう場所でオーナメント(ツリーにぶら下げる飾り)を見繕って買ってくる。併せて、木を支える台や、ライトも購入。

クリスマスグッズが最も豊富に揃っている場所は、植木などを売っている園芸屋さん。園芸屋さんは、冬は植木がオフシーズンになるので、この時期は売り場の半分近くをクリスマスグッズの販売に割り当てる。

(3)デパート

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これはデパートのクリスマスグッズの特設売り場。前述の園芸屋さんには安めの数百円くらいの小物が比較的多く揃っていて、一方でこういったデパートには、作りが良くて精巧な数千円するグッズが比較的多く揃っている。

(4)モミの木を支える台

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モミの木を支える台。台の底の中心から針が突き出ているから、そこに木をブスッと刺した上で、横から4つの支えを絞り込んでいって固定する。

土台の中に水を注入できるタイプのものが多く、水があれば活きが良いままで長持ちしやすい。水がないと木が乾燥してしまい、そのうち葉(針)がパラパラ落ちてくる。

(5)ハイ、完成

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クリスマスツリーは、基本的にメインのリビングに置かれる。昔の伝統では、ツリーの飾りつけは12月24日に大人の男性たちがリビングの部屋を閉め切っておこなった。そして子どもたちは12月24日の夜になって、チリンチリーンという鐘の音(クリスト・キントが来た音)を聞いてから、そこでようやく初めて、飾り付けられたツリーのあるリビングに入ることができた(*クリスマス当日の様子は、また後日に詳細を投稿予定)。

リビングでは、薄暗い中でクリスマスツリーのライトが灯されていて、ツリーの下にはみんなのプレゼントが置かれている。子どもたちは、その美しさに圧倒されるとともに、喜びに溢れる、という段取り。

実際、僕のドイツ人の友人の家でも、いまだに飾りつけは家長にしか許されなくて、子どもは見ることができない。

でも現代ではその段取りは廃れつつあって、オープンにみんなで飾り付け作業をするのが普通になっているみたい。

さて、ツリーの話はこれくらいにして、次はクリスマスの時期に飾る、意味のある重要な飾りについて

【意味のある重要な飾り】

(1)アドベント・クランツ

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ドイツ人が最もクリスマスらしさを感じるであろう飾りは、このアドベントクランツ。ドイツ北部(ハンブルク)発祥。

アドベントとは「到来」という意味で、イエス・キリストの誕生を待ち望む期間のこと。

このアドベント期間である11月末前後の日曜日からクリスマスまでの4週間の間に、各家庭のテーブルの上などに置かれる。ローソクが4つセットされていて、アドベント期間の最初の日曜日にはローソク1つだけに火を灯す。翌週の日曜日にはローソク2つに火を灯し、、、という要領で、クリスマス前の日曜日にはローソク4つともに火を灯して、最大の明るさになる。

これは「イエス・キリストが愛と希望の光をこの世にもたらした」という考えに基づいて、キリスト生誕の時に世の中に光が溢れるようになったことを表現している。日中が短い冬至の時期だから、光がとても大切な役割を果たす。

(2)アドベントカレンダー

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ドイツ南部(ミュンヘン)発祥。アドベント期間が始まったら家の中に飾る。ありとあらゆる形があるけれども、共通しているのは、1から24までの数が書かれた扉があること。この写真のアドベントカレンダーも、よ~く見てみると細かな数字が書かれていて、そこをペロッと開けることができるようになってる。

12月1日から毎日1つずつ子どもが開けていって、24日にはすべての扉が開く。中には、一つずつチョコレートが入っていたり、きれいな絵が描かれていたりする。

昔は、子どもはお祈りしてからしか開けることが許されなかった。こうやって、忍耐や信仰心を学ばせるために活用されたらしい。

(3)クリッペ

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日本ではあまり馴染みのない「クリッペ」。キリストの生誕シーンを再現したもの。イタリア発祥で、ドイツでは南部のカトリック地域でも普及している。

必ずしも全ての家にはない様子だけど、信心深い家や教会には置かれている。飾りという表現をするとバチあたりな感じで、宗教色が濃い。だからこそ、本来のクリスマスの精神に通じている感じがする。

写真のものは一般家庭に置く小さなサイズだけど、教会やクリスマスマーケットでは、等身大に近い大きなものが置かれていたりする。

(4)ピラミッド

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ドイツ東部(エルツ地方)発祥。通常は数階建てになっていて、各階にはキリストの生誕シーンが再現されている。

写真のように、小屋並みに大きなサイズのオブジェから、各家庭で飾りになる小さなサイズのものまで、大小さまざま。家庭用のものはローソクが備え付けられていて、ローソクに火を灯すと、上昇気流で上のプロペラがクルクル回る仕掛けになっている。

こういったクリスマスの重要な飾りの多くは、ドイツから他のヨーロッパやアメリカなど世界に広がっていった。

【ひと言コメント】

こうやってドイツのクリスマス文化について説明しているものの、相当駆け足ではしょりながら書いている。僕の投稿の趣旨は、何回かに分けて全体像をざっと整理することが目的なので、味気なく感じたらごめんなさい。

実際、この時期のnoteのみなさんの投稿では、トピックを絞った形でクリスマスにまつわる話がもっともっと臨場感たっぷりに書かれていて、読んでいてとても楽しくなる投稿が並んでいる。

思うに、ドイツのクリスマス文化は、全体像についてざっと説明するだけでも相当なボリュームの情報量が必要。日本の伝統文化で例えて言えば「年末や正月行事」と同じくらい、歴史に裏打ちされていて地域特性もある、分厚くて多様性のある伝統文化だと思う。

自分がドイツで生活していると、毎年クリスマスの風景は目に入ってくるから、「なんとなく見たことがある」とか「なんとなく知っている」といったものが多かった。でも、そこから「興味が湧いてドイツ人から話を聞いたり調べたりして、全体像が説明できるところに至る」までは、かな~りの年数が必要だった。

それくらい、ドイツのクリスマス文化は奥が深いと思う。

ではまた次回、別のテーマでドイツのクリスマス文化について書かせてもらいます。

by 世界の人に聞いてみた

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