旬のチカラを満喫する〜春
毎日作るいつものおかずに、季節感をひとふり。
すごくささやかなことではありますが、
作る心持ちが、明らかに違ってきます。
料理に割ける間が多くないからこそ、
こうした旬の小さな味方たちは大切。
その心強さに、思いのほか支えられている、と気付かされるようになりました。
また、どうしても元気が出ないとき、
毎年の旬を先取りし、満喫し、名残りを惜しんでみてください。
自然の一部でもある食材を扱っているうちに
旬のチカラが、くすんだ心を磨いてくれていることも確かにあるのです。
作って食べるだけで、心にも身体にも漲る栄養をもらえることこそ、何よりの幸せでは、と思えてなりません。
こんなふうに、
いつもと同じひと皿に、その時期だけの美しさや鮮やかさをほんの少し添える楽しみは捨て難いもの。
殊に同じようなメニューに飽きがちなとき、
試してみて頂きたいな、と思うに到りました。
取り入れるのは、ごく簡単で。
生姜焼きの生姜を新生姜でたっぷり。
豚肉を焼く下味の塩に、木の芽を刻む。
お浸しに貝の出汁を含ませる。
焼き魚のお腹に桜の塩漬けをしのばせる。
白身魚の刺身に季節の柑橘をひと搾り。
柑橘ジュースのジュレを添えるのも美味しいです。
うっかりしていたら一度も手に取らずにいる旬の味、言うなれば四季の幸。
そんな瞬く間に去る季節を宝物のようにとらえ、
このような料理に加えるほかに
できる範囲で保存食にし、長く味わえるようにすれば、さらに使い道は拡がり、心丈夫になれます。
たくさんできたら、お裾分けの楽しみもおまけで。
これからやってくる春の旬を保存する例を、いくつかご覧下さい。
炒めたふきのとうのオイル漬け:塩少々で炒めてからオイルで沈める。肉に合う。
ルッコラとにんにく、ナッツのソース:刻むかミキサーで潰して。パスタやポテトに。
桜エビ塩:塩と共に炒ってミルサーで粉末に。調味料としても有能。
新玉ねぎの丸焼き:皮ごと濡れたペーパーに包んで、ホイルをびっしりかぶせ、200℃のオーブンで30〜40分、串がスーッと通るまで焼く。刻んでオイル漬けにすると料理のベースに便利。
鯛のおぼろ:刺身や潮汁の残り物で。自家製なら甘さ控えめにできる。
イチゴのコンフィチュール:好みの酒やスパイスでさっと煮て。そのものがデザートになるくらいの煮方が美味しい。甘さをつけなければ貝などの料理のソースにも。
春キャベツの水キムチ:米のとぎ汁とニンニク、韓国唐辛子、塩で発酵するまで常温で。
木の芽塩:山椒の木の芽がたくさんできたら塩漬けに。たっぷり作って、皮ごとの筍やブロック肉、一尾魚を包んでオーブン焼きにした、塩釜にも。
グリンピースの桜塩漬け:水から茹でたグリーピースの茹で汁に桜塩漬けと昆布を漬けて。
夏以降は、またその季節がやってきたときに、楽しみながらご紹介させてもらいますね。
素材選びは、ある意味、日々着る服を選んで組み合わせることに例えるとわかりやすいなあ、と感じることがあります。
Tシャツやセーター、ジャケットなどの定番のものは、家にある根菜や乾物類のほか、年中入手可能な生鮮品。
トレンドのものや、今年新調したものが、今回お話しした旬のもの。
ベルトやアクセサリー、バッグなどの個性を際立たせるものは、スパイスや調味料、香味際立つハーブや薬味、風味の強い瓶詰など。
こんなふうになぞらえてみると、それぞれを組み立てやすいと思いませんか。
春、夏、秋、冬。
毎年同じようにやってきて過ぎゆく四季。
日本だけではないけれど、これほど季節を大切にする国は、他にないのではないでしょうか。
四方を海に囲まれた、特有の細長い地形の日本。
海と山の近さからくる寒暖差の大きさで、
むせかえるように桜が咲き誇り、
燃えるような紅葉に山が包まれ、
その変化の勢いが、見る人の胸を打つのでしょう。
また、岩や木、山から米粒まで、あらゆるものに精霊が宿るという、(八百万(やおよろず)の神」のような
日本人ならではの自然への捉え方のせいかもしれません。
ここに生まれて良かった、と思えることの一つです。
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