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ゴキゲンでいること〜魚のチカラ〜

ながく心の不調を抱えている、大好きな人がいます。
役に立てることはないか考えているうち、
歩き方や姿勢、話し方と同じように、
物事の捉え方や考え方にも、その人なりの癖があるのだな、と気づくようになりました。

もちろんこの癖、
自分のなかにも大いに見受けられます。

何かというと自分のせいに帰結しがちだったり、
足りないところばかり気にしてしまったり。
周りと自分を比べて不安になることも。
特に更年期の頃は、頻繁にありました。

もちろん中には熟慮が必要なこともありますが、
大抵は考えても確実な答えは出ない、
休むに似たり、な下手な考えだったりします。 

実際に起きている物事自体ではなく、
物事の捉え方の癖のせいで、
不安になったり気分が悪くなるなんて、至極勿体ないことですが…
それがわかっていても、癖。
おいそれと治るものでもありません。

ただ、癖なのだ、と気づいてからは、
無理に治そうとする代わりに、
その物事からいっとき目線を外すようにしています。
ひたすら自分がご機嫌になることは何かを探して、そちらに目を向ける癖を新たに増やしてみました。

他人ではなく自分の機嫌を取ることは、思いのほか大切。
読んでくださっている皆さんの中にも、それぞれに何をしていると笑顔でいられるか、ワクワクするのか、思い浮かぶことがいくつかあるのではないでしょうか。


私のワクワクを呼ぶ小さな楽しみは、と言えば、
魚を扱うことです。
それは料理の仕事を始めるずっと前、
一人暮らしを始めた20歳くらいの頃からでした。

魚市場や鮮魚店などの店頭、釣りのあとなどで新鮮な魚たちを手に入れた時、
鮮度が落ちないうちに捌かねば、無駄なく頂かなくては、という気の急く状況も手伝ってか、
得体の知れないエネルギーのようなものが、内からむくむくと湧き上がってくる感があります。

折りしも、4月からこれほどの夏日になるような温暖化に加え、ここ2年間に起こったさまざまな非常事態。
遠因にステイホームもあり、
ふだんは一般客向けの市場には出回りにくい珍しい魚が数多く並べられ、
以前なら手が届かないような高級魚が、相当お手頃になっていることも。
サイズや見た目、一般的ではないために買われないのは惜しすぎる美味しさなのです。


初夏に差し掛かる今では、
ヒラメにも負けないうまさのカレイの王様、マツカワカレイや、ふだんは高価なこちにも出会えます。

マツカワカレイはそのままで美味しいので、刺身に。
縁側も立派でいい味でした。
綺麗なしましまのヒレをした魚なのに、
早く食べたい気持ちがはやって、写真を撮るのを忘れてしまいました。

いい形のマゴチ。ちょっとグロテスクですみません。

これからの季節、マゴチは卵を抱えていることも多く、煮付けてもオイル煮にしても美味しいです。

身の方はそぎ切りして塩胡椒し、熱いニンニクオイルをジャッ!とかけて頂きました。

長崎の赤鯖。
鯖とはちがい、刺身‼︎推奨ですね。

身の色に似たマグロよりは旨味薄く
スズキに近い感じの味わいだったため、洗いにしてみました。

切ったそばから氷水に放して水気を取ったら
コリっと感も、旨味までが増したよう。
先人の知恵は、つくづく凄いです。

これはオジサンという魚。
下顎にあるヒゲのせいで、そう呼ばれているそうです。鱗が大きく捌きやすい魚です。

刺身でも焼き物でも煮付けでも。
あらもかなりいい出汁が出ます。
湯引きして、皮霜作りにしてみました。

三浦の魚、イトヒキアジ。変わった形で、初めて出会いました。


お店ではイトヒキダイとも呼ばれていましたが、鯵とも鯛とも似ていない、どちらかというと太刀魚に近いさっぱりした脂。
魚屋さんからも、
太刀魚同様、炙りが合うと助言をもらいました。

左から昆布締めの細切り、刺身、バーナーで皮がチリチリ縮むまで焼く炙り、です。
大雑把な盛りを悔いるほどに、
さっぱりした中に味わいがある、意外にも良い魚でした。 
このイトヒキダイは、サッと粉を振ってバターでカリッと焼いても美味しかったです。

その淡白さを物足りないと思うか、それともどんな料理にも寄り添ってくれると見るか。
後者の方がより楽しそうです。

このように、皮の感じや身の味わいなどで、それぞれの魚のおいしい食べ方を実験的にあれこれ試したり、毎日扱っているお店の方の助言を仰いだりするうちにぐんと増す今の面白味を、
気負わず遊ぶように楽しんでみるのも
日々のささやかな気分転換になっています。

不安でストレスフルな毎日が続いている今、
魚が好きな方に、お勧めしたくなりました。

珍しい魚、希少な魚との出会いを一期一会というのは大袈裟かもしれませんが、
命のありがたさを携え、魚の持つ自然の色の美しさを愛でながら、
出来るだけ頭から尾まで残さず頂く"サカナアソビ"の愉しみは、それほど深遠な感じがしています。


心の治療に限らず、解決に時間のかかることはさまざまあり、それに伴って不安が大きくなってしまうのも自然なことかも知れません。
ただ、その不安だけを見ていては視野狭窄に陥って、より苦しくなってしまいそう。
あえて違う方向を見て、同じ時間なら笑って過ごしてみたらどうでしょう。
それはけして逃げではない、と思うのです。


#note #魚 #マツカワカレイ #マゴチ #赤鯖 #オジサン #イトヒキアジ #思い込みが変わったこと #最近の学び


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