takapee

ソーシャル・グッドな企業・NPO・活動を支援し、ちょっとだけ今より良い社会を実現してい…

takapee

ソーシャル・グッドな企業・NPO・活動を支援し、ちょっとだけ今より良い社会を実現していきたい中年会社員。 趣味:読書、映画鑑賞

最近の記事

【第33章】戦略とイノベーションと経営理論

経営戦略とは何か、近年発表された論文では以下のように定義されている。 定義①「企業の所有者に変わり、ゼネラルマネージャーが経営資源を使いながら、外部環境の中でその業績を高めるための、意図的あるいは非意図的なイニシアティブ」を扱う領域 定義②経営戦略は「資源の活用を通じて業績向上という目的を実現するために不可欠な行動を取ることで、企業が環境に対応するダイナミクス」 では具体的にどのような研究がされているのか、以下に分類を紹介する。 戦略領域の構造 【戦略コンテンツ】 「低

    • 【第32章】レッドクィーン理論・競争すべきはライバルではなく自社のビジョン

      本章では「レッドクィーン理論」を紹介する。レッドクィーン理論はまだ若い理論で研究の厚みは薄いものの、トップ学術誌に次々と発表がされ始めている点で注目に値する。加えて、企業の「共進化のメカニズム」を解き明かして上で「これは望ましい進化なのか」を投げかけている。これは日本企業がこれまで陥ってきた「共進化の罠」のメカニズムを明快に提示するものであり、筆者は紹介をしている。 企業間の生存競争を共進化をもたらす 生物進化学では、捕食関係にあえう生物種同士が競い合って進化し合う循環を

      • 【第31章】生態系の相互作用が、企業内部の進化に繋がる

        本章では、「エコロジーベースの進化理論」の中でも「組織はなぜ変化しにくいのか」「それでもあえて変化を起こすには」について解説していく。同理論の基盤になるのは「多様化(variation)」「選択(Selection)」「維持(Retention)」「苦闘(Struggle)」のプロセスだ。頭文字をとってVSRSメカニズと呼ぶ。 VARSメカニズム スライドで紹介しているVARSメカニズムについて、具体的な事例を以下に紹介する。 米国新聞業界の事例 新聞業界は19世紀初頭に

        • 【第30章】変化の時代にこそ不可欠な「超長期」の時間軸

          本章で紹介するのは「生態学=生物と環境の間の相互作用を研究する分野」である。生態学は、生態系を1つの大きな「生物の社会システム」と見なし、生物をその一員ととらえる。世界標準の経営学では、企業の大きな社会システムを一員と見なし、生態学の知見を応用する分野があるのだ。 その中でも最もよく知られる組織エコロジー論を以下に説明する。 組織エコロジーの前提 組織エコロジーの応用範囲は広いが、組織エコロジー全体で共有している前提は3つある。 1.企業の本質は変化しない 組織エコロジー

        【第33章】戦略とイノベーションと経営理論

        • 【第32章】レッドクィーン理論・競争すべきはライバルではなく自社のビジョン

        • 【第31章】生態系の相互作用が、企業内部の進化に繋がる

        • 【第30章】変化の時代にこそ不可欠な「超長期」の時間軸

          【第29章】中小企業が飛躍するために必要なパワーの活用

          本章では、資源依存理論(resource dependence theory※以下、RDT)を取り上げる。RDTは1970年代後半に生まれた三大組織理論の1つと位置づけられており、企業・組織のパワーに注目するのが最大の特徴だ。企業のパワーはビジネスに様々な影響を及ぼす。しかし、パワーメカニズムを正面から解き明かす経営理論は少ない中で、例外がRDTなのだ。 企業パワーとは PDTにおけるパワーとは「他社と比べてどちらが強い交渉力をもちうるか」といった相対的な力関係のことを意

          【第29章】中小企業が飛躍するために必要なパワーの活用

          【第28章】「常識をそのまま受け入れてはいけない」

          本章では、今の世界の経営学者が盛んに応用する「社会学ベースの制度理論 」を紹介する。と紹介に入る前に「社会学ベースの制度理論」という言葉を出したその理由を簡単に説明しておく。「制度理論」には、社会学ベースと経済学ベースがある。経済学ベースの制度理論とはゲーム理論を基礎に「一人一人のプレーヤーが独立して、合理的に意思決定をする」という全体に立つ。一方で、社会学ベースの制度理論は「人は必ずしも合理的に意思決定するとは限らず正当性で意思決定を行うこともある」という前提に立つ。現在の

          【第28章】「常識をそのまま受け入れてはいけない」

          【第27章】これから必要なのは弱いけれども強いつながり

          最近は様々なところで「ソーシャルキャピタル」「社会共通資本」といった言葉を聞くようになった。ネットで検索すると地域再生の文脈で使うこと多いようだ。いまや、経済学でも重要研究テーマになっている。と書かれているものの内容がピンとこないので、具体的なテーマとして「社会学ベースのソーシャルキャピタル」に絞り、その理論とメカニズムの意義を紹介していく。 2種類のソーシャルキャピタル ブリッジング型のソーシャルキャピタル ブリッシング型とは端的にいえば、全前章の「弱いつながり強さ」(

          【第27章】これから必要なのは弱いけれども強いつながり

          【第26章】人脈を持っている人は昇進が早く、給料も高い

          前章で「弱いつながりの強さ」(strength of weak ties:SWT理論)について解説した。今回は2大理論のもう一方のストラクチャル・ホール(以下SH)理論を解説する。同理論を生み出し発展させてきた中心人物は、シカゴ大学のロナルド・バートである。 繰り返しになるがソーシャルネットワークがビジネスで重要な理由は、人のつながりを通じて情報・知識・噂話・アイディアなどが伝播するからだ。 ネットワークは、1対1(マクロ)の関係性、1対多(中間)の関係性、多対多(マクロ)の

          【第26章】人脈を持っている人は昇進が早く、給料も高い

          【第25章】ゆるいつながりが、イノベーションにつながる

          ソーシャルネットワーク分野の著名研究者であるケンタッキー大学のダニエル・プラスは、以下のように述べている。 「ソーシャルネットワーク研究の伝統の中で生まれた理論の代表は「弱いつながりの強さ」と「ストラクチャル・ホール」である」 世界標準の経営学でプラスの意見に意を挟む学者はほぼいないと思われる。そのため、この二大理論を2章に分けて解説していく。(第25章では「弱いつながりの強さ」を開設する) ブリッジという概念とその特性 ブリッジ=2つの点をつなぐ唯一のルート 上記の定義

          【第25章】ゆるいつながりが、イノベーションにつながる

          【第24章】ソーシャルネットワークの本質は今も変わらない。

          社会学ディシプリンにおいてソーシャルネットワークの研究は急速に発展している分野だ。「人と人との社会的なつながりはどのようなメカニズムで生まれるか」「つながりは、人や組織にどのような影響を与えるのか」と言った分野が研究されている。筆者はソーシャルネットワーク理論をこれからのビジネスを見通すうえで極めて重要と考えている。 「人と人とのつながり」「人脈」「人の縁」というなんとなく大事と思っていること、「なぜつながりが重要か」「どのような時に重要か」「自分を高めてくれる人脈の在り方」

          【第24章】ソーシャルネットワークの本質は今も変わらない。

          【第23章】センスメイキング理論・未来は予想するものでなくつくり出すもの

          著者は「現在の日本の大手・中堅企業に最も欠けており、最も必要なのがセンスメイキングである」と考えている。このセンスメイキングの考え方を発展させてきたのはミシガン大学の世界的な心理学者カール・ワイク教授だ。 センスメイキングとは平たく表現すると「組織のメンバーや周囲のステークホルダーが、事象のいみについて納得(腹落ち)し、それを集約させるプロセスをとらえる理論」だ。 プロセス①:環境の感知 センスメイキングは、新しかったり、予期しなかったり、混乱的だったり、先行きが見通しに

          【第23章】センスメイキング理論・未来は予想するものでなくつくり出すもの

          【第22章】感情のメカニズム:視点を変えれば感情も変えられる

          大まかに言って、人の心理には認知(外部から収集した情報処理してアウトプット=think)と、感情の側面(人は物事に対して抱く気持ち=feel)がある。 1980年代は認知心理が大勢を占めていたが、1990年から感情の理論も注目されるようになった。その背景として、感情が与える影響の大きさ、非言語表現の分かりづらさ、AIに代替できない能力、の3つがあると言われている。 感情は3種類ある ①分離感情 喜怒哀楽のような一般的に感情と呼ばれるものは学術的には分離感情と呼ばれる。分離

          【第22章】感情のメカニズム:視点を変えれば感情も変えられる

          【第21章】意思決定、時には「勘ピューター」を信じてみる

          認知と同様、意思決定もまた脳自身がもつバイアスに左右される。本章では、伝統的な「あるべき意思決定理論」を提示する規範的な意思決定をまず解説し、次に現実に起きうる意思決定バイアスを紹介し、最後に今注目されている「直感の意思決定」のメカニズムを解説している。 補足 ■プロスペクト理論(フレーミング) 0:リファレンスポイントを基準に、現状得している想定で説明すると人はリスク回避(損したくない)の行動をとり、現状は損している想定で説明する人はリスク志向(損を取り返す)の行動をとる

          【第21章】意思決定、時には「勘ピューター」を信じてみる

          【第20章】認知の歪みは多様性で乗り越える。

          認知バイアスについて書く上で、認知とは何かをまず書くと、「外部から収集した情報を処理してアウトプットを出す『脳の情報処理プロセス』」と定義されている。人は認知の届く範囲に限界があるので、無意識のうちに認知フィルターで取捨選択している。バイアスがあったが故に、誤った意思決定を下して、大惨事を招いた事例も枚挙にいとまがない。 以下では、経営においてどのようなバイアスがあるのかを紹介する。 個人レベル:パフォーマンス・アプレイザル 個人に関して経営学で重視されるのは「認知的な

          【第20章】認知の歪みは多様性で乗り越える。

          【第19章】モチベーションは他の人の役に立つのを実感することでも上がる

          この章では経営学におけるモチベーションについて、理論を時系列で過去から最新のものまで紹介している。最初に「そもそもモチベーションとは何か」の定義について問いかけがあり、以下の前提を整理している。 続いてのモチベーションの種類を整理している。この2種類のうち、内発的動機の方が個人の行動へのコミットメントや持続性を高めることは、ほぼ学者のコンセンサスとなっている。 外発的動機 報酬・昇進など、「外部」から与えられる与えられる影響で高まるモチベーションのこと。 内発的動機 外部か

          【第19章】モチベーションは他の人の役に立つのを実感することでも上がる

          【第18章】最新のリーダーシップ理論は「みんながリーダー」

          本章では「リーダーシップ」の理論を説明している。ある調査によると現在、研究などによるリーダー育成業界の規模は約3660億ドル(約40兆円)に及ぶそうだ。今回の投稿では、章全体の中でリーダーシップの定義について触れた上で1980年代以降のリーダーシップ研究についてのみを抜粋して紹介 していきたい。 そもそもリーダーシップとは何か そもそもの話だが、リーダーシップについて学術的な定義は完全には定まっていない。時代ごとに求められるがかわるごとがその理由として考えられる。参考まで

          【第18章】最新のリーダーシップ理論は「みんながリーダー」