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【第23章】センスメイキング理論・未来は予想するものでなくつくり出すもの

著者は「現在の日本の大手・中堅企業に最も欠けており、最も必要なのがセンスメイキングである」と考えている。このセンスメイキングの考え方を発展させてきたのはミシガン大学の世界的な心理学者カール・ワイク教授だ。
センスメイキングとは平たく表現すると「組織のメンバーや周囲のステークホルダーが、事象のいみについて納得(腹落ち)し、それを集約させるプロセスをとらえる理論」だ。


プロセス①:環境の感知

センスメイキングは、新しかったり、予期しなかったり、混乱的だったり、先行きが見通しにくい環境下で重要になる。具体的には以下の3種類がある。
危機的な状況:技術変化、天変地異、スキャンダル、ライバル企業の攻勢
アイデンティティへの脅威:環境変化による存在意義の陳腐化
意図的な変化:新事業創造やイノベーション
多くの日本企業は、今上記3ついずれかの状況に直面しているのではないか。

プロセス②:解釈を揃える

プロセス①の環境では、「現状の把握」「問題の原因」「すべきこと」に絶対的な1つの見解を見つけることは不可能。しかし、そこでバラバラにならないよう「足並みを揃える」ことが大事となる。つまり、「組織の存在意義は、解釈の多義性を減らし、足並みを揃えること」大事だとセンスメイキング理論では考えるのだ。
組織・リーダーは、多様な解釈の中から特定のモノを選別し、それを意味づけ、周囲にそれを納得させ、納得・腹落ちしてもらい、組織全体での解釈の方向性を揃えるが求められる。ここで重要な力が、納得性である。
ここで「ストーリー性」が重要になるのだ。その手法として、デザインを物語として語る「ストーリーテリング」の効能が主張されている。
事例:ソニー
ソニーの低迷期、「ソニーは何会社だと思いますか?」とメディアから質問を受け「一言でいうと「感動会社」だ。エレキ、金融、エンタメそれぞれで(消費者に)感動をお届けする会社だ。」と平井一夫氏は回答した。
この解釈の集約化にが行われたことで、腹落ち(センスメイキング)が進んでいった。

プロセス③:行動・行為(イナクメント)

足並みを揃えた上で、行動に出る段階。「何となくの方向性」でまず行動を起こし、環境に働きかけることで、新しい情報を感知する必要がある。
初めてのことを必死にやり切った後で「ああ、これはこういう事態だったのだな」と納得(センスメイキング)する感覚に近い。
マギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授はStategy craftingの論文において「優れた陶芸家は、最初に何をつくりたいのか自分でもわからず、まずは泥をこね、ろくろを回し、次第に自分でつくりたいものが分かってくる」ことを引き合いに出し「新規事業も同じで、まず始めはとにかく行動し、やがて次第におおまかな方向性が見えてきて、さらに形になっていく」と主張した。

セルフ・フルフィリング:未来は本当に生み出せる

「大まかな意思・方向性を持ち、それを信じて進むことで、客観的に見れば起きえないはずのことを起こす力が、人にはある」これを「セルフ・フルフィリング(事故成就)という。
経営者・リーダーが「未来をつくりだすために必要なのは」以下の要素である。
1 アイデンティティ Identity
「センスメイキングは常に「自分(所属する組織)が何であるか」のアイデンティティに基づいている。
2 回想・振り返り Retrospect
人は後的に振り返ることで のみセンスメイクでき、事 象の瞬間にはそれを センスメイクできない。
3 行為 Enactment
人は行動することで 環境に働きかけることが できる。
4 社会性 Social
主体(自身)と周囲の 主体(自身)と周囲の 常に切り離せないので、 センスメイキングは常に 他者との関連性の 中で起きる。
5 継続性 Ongoing
「センスメイキングは、繰 り返される循環プロセ スである。
6 環境情報の 部分的感知 Extracted cues
人は認識のフィルター を通してしか事象が認 識できないので、認 識・解釈されたものは 常に全体の一部でし かない。
7 説得性・納得性 Plausibility
人は「正確性」ではなく 「説得性」を持って、自 身や他者をセンスメイ クできる。
事例:ソフトバンク・孫正義氏
孫氏は傍からみると「極めて難しい」と思われる、ヤフー・ジャパン立ち上げ、ブロードバンドの普及、ボーダフォン日本法人の買収を次々となしとげてきた。孫氏が語るのは極めて主観的なストーリー・信念であり、正確性は必要ないからこそ、多くの人をセンスメイクして、足並みを揃え、巻き込めるのである。


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