【第24章】ソーシャルネットワークの本質は今も変わらない。

社会学ディシプリンにおいてソーシャルネットワークの研究は急速に発展している分野だ。「人と人との社会的なつながりはどのようなメカニズムで生まれるか」「つながりは、人や組織にどのような影響を与えるのか」と言った分野が研究されている。筆者はソーシャルネットワーク理論をこれからのビジネスを見通すうえで極めて重要と考えている。
「人と人とのつながり」「人脈」「人の縁」というなんとなく大事と思っていること、「なぜつながりが重要か」「どのような時に重要か」「自分を高めてくれる人脈の在り方」に対し鋭い思考の軸を与えてくれる。


エンベデッドネス(埋め込み理論)

異論によると人と人とのつながりは大きく3つのレベルに分けられる。
アームス・レングスなつながり:
初めて取引するような「よそよそしい」関係
交渉がうまく行かなければ他に切り替えられてしまうこともあり得る。
埋め込まれたつながり:
何度かビジネスを一緒に経験したり、苦楽を共にした「深く、それなりに強い関係」
ヒエラルキー上のつながり:
企業の組織図上の上下関係

埋め込まれたつながりの場合、過去の経験から互いが何を考えているかを瞬時に理解できるので、互いを疑わず、直感的に意思決定できるようになる。すなわち、信頼が生まれてくるのだ。両者は心理的に近い状態にあるので、利己性も弱まっていく。そのような相互依存関係をレシプロシティと呼ぶ。

「埋め込まれたつながり」の法則

法則1:関係性の埋め込み
一旦つながると相手のことを知り、交渉などにおける心理的な負担が軽くなる。よって、同じ相手と繰り返し繋がりやすくなる。
法則2:構造的な埋め込み
人は「つながっている相手が、その先でつながっている他者」とつながりやすい。これをネットワーク推移性といい、3者はつながった状態を「構造的な埋め込み」という。
法則3:位置的な埋め込み
より多く人とつながっている人ほど、情報獲得・発信の面で有利となる。
多くの繋がりを持つ人は、多くの情報に接し、また幅広い範囲に情報を発信できるので、情報の受信・発信の両面で有利になる。これをネットワーク中心性という。
法則4:埋め込まれたつながりでは、人は意思決定のスピードが早くなる。
両者は互いによく知っていることで、ヒューリスティック(直感)に頼り意思決定のスピードが速くなる。
法則5:埋め込まれたつながりは「私的情報」を交換しやすくなる。
アームス・レングスな関係から埋め込まれたつながりに移行すると、指摘情報をえやすくなる。ある研究では「埋め込まれたつながりとも企業間では、低い利率で融資を受けられる」という検証結果も出ている。

新しい時代の「つながり」も本質は変わらない

1.インターネット上でのつながり
SNSにおいて、どれくらいメッセージに反応するかを研究した結果「『同じ大学に通っていた』などの埋め込まれたつながりがいる友人からのメッセージに対して、反応度が高くなる」ことが明らかになっている。これは法則2の「ネットワーク推移性」そのものである。
2.超国家コミュニティ
国境を越えた人的ネットワークの形成。VC投資においてスタートアップ企業もVC企業も私的情報を多く持っており、通常は国際的な投資がしにくい。しかし、両国間を行き来し国境を越えた人的ネットワークを持っている人材がいると、VC投資は加速する。
3.起業内外の人のつながり
いまや大手企業・老舗企業でも、従来の企業の境界を越えて人の動きがつながるようになってきている。これにより企業の存在意義は薄れていき、埋め込まれた人と人とのつながりが従来の市場・企業とはことなる次元の強さとしやなかさを持つようになる。

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