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CSキャリア”インタビューリレー”第十一弾

CSだけでなくWebマーケやPdMなど多様なキャリアを経験され、現在はPLG(※)事業部の事業戦略部長を務めていらっしゃる甲斐さん。
CSとしてのキャリアが現在にどうつながっているのか、経験したからこそ思うサクセスの重要性などのお話を聞いてきました!

※「Product-Led Growth(プロダクトレッドグロース)」の略。プロダクトそのものに営業やマーケティングの機能を付け、グロースを目指す考え方。


はじめに

-こんにちは。今回は、株式会社KOMMONSが企画する”CSキャリアインタビューリレー”の第十一弾です。
 
株式会社KOMMONSは、カスタマーサクセスに特化したサービスを提供する会社です。企業向けのカスタマーサクセス支援サービスやカスタマーサクセスを職業とする方たちのコミュニティを運営しながら、カスタマーサクセスの方たちが自信を持って働ける世界を目指しています。


インタビュー内容 

【1】 甲斐さんのご経歴

2016年9月に株式会社ベーシックに入社。
入社後はWebメディアのマーケティングを担当。
その後、SaaSの経験を経たのち、ECプロダクトのディレクター兼カスタマーサポートの立ち上げを経験。
また、ECプロダクトの担当事業を譲渡することになり、サポートや事業周りの引継ぎと並行して買収したPLG事業(現:formrun)のポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)を担当することに。
1人目のBizDiv.(事業開発担当)として、顧客接点を持つ業務全般を経験後、主にプロダクトマネージャー(PdM)を担当しながら、次のPLG事業(bookrun)の立ち上げにも奔走。
2つの事業における事業戦略、事業開発、PMM、PdMなど、事業とプロダクトに関わる多くの役割を横断しながら、2024年7月よりPLG事業全体の事業戦略部長を務める。
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【2】事業戦略部長になり振り返るカスタマーサクセスの経験

甲斐さん、本日はよろしくお願いします。
ご経歴を拝見していると、お客様とコミュニケーションを取りながらサポートをするよりも、事業全体の戦略やサービスのあり方を考える役割が長くみえますが、ご自身にとってカスタマーサクセスとしてのキャリアをどう捉えていらっしゃるのでしょうか。

この数年はたしかにプロダクトマネジメントや事業戦略がメインですが、EC事業部のサポート立ち上げや、formrunの1人目のBizDivも経験してきました。1人目のBizDev.時代、当初はサポートも1人、ユーザーインタビュー/サポートヒアリングも1人だったので、今振り返るとカスタマーサクセスのキャリアを積み重ねていたとも解釈できると思います。
VOC(Voice Of Customer)をいただいたときに、意見という現象から課題を特定し、その課題を解決策に落とし込むプロセスを1人で完結させていました。

たしかに1人CSは大変なことも多かったと思います。
現在は事業戦略部長を務められていますが、今回のCSキャリアインタビューを受けていただいたきっかけがあればぜひお聞かせください。

まず、弊社の日程調整サービス「bookrun(ブックラン)」をKOMMONSさんが使ってくださっていた、という背景があります(笑)
KOMMONSさんは、bookrunのクローズドな検証期間からご利用いただいており、そのようなお客様は自分にとって特別ですし、正式リリース前にたくさんのフィードバックをいただいた経緯もあり、心からの感謝の気持ちでいっぱいです。
また、個人の考えとしてもこうしたつながりを大事にしていきたいという想いがあり、何かお役に立てることがあればと考えました。
今回のお話をいただいた際にも、もともとはマーケター的な仕事からキャリアを歩み始め、プロダクトマネージャーや事業企画など、さまざまなキャリアを経てきた上でも、お客様との接点を持つCS経験が今の自分に大きな影響を及ぼしており、そうした面で「何か伝えられることがあるんじゃないか」と感じ、今回インタビューを受けることにしました。

新卒やインターンを始めとする若いメンバーが現場仕事で悩んでいるときに、私自身もお客様と接していた時の悩み・苦しさを乗り越えた経験からフィードバックに取り組み続けてきました。

【3】1人目のBizDiv.として奔走した事業立ち上げ

お客様と接点を持つキャリアがご自身の今につながっているということですね。これまでのご経験について、1人目のBizDiv.を経験されたPLG型SaaSの立ち上げについて聞かせていただけますか?

そもそも、formrunはベーシックが買収したサービスでした。
そんな中で、一緒に関わるメンバーも他はエンジニアとデザイナーで、副業のメンバーもいたチーム構成で、BizDiv.を1人で担当する時期が長かったです。
とはいえ「0→1」の新規事業ではなく、肌感としては「0.2→10」くらいの時期を担当していたといつも言っているのですが、着任当初はPMFからは程遠い状態であったところから、事業を継続的に成長させていく必要がありました。

1人BizDiv.の時期は、「自分の有限な時間をどう使うか?」に悩みました。今思えばよく働いていたなと。
SaaS指標の定点的な算出、マーケ目的のWebサイト構築、お客様へのメールサポート、プロダクトの要件定義、エンジニアやデザイナーとの折衝など、多方面から私自身の実力不足を突っ込まれながら、なんとか形にしてレビューを受ける繰り返しの日々でした。
その上で、カスタマーサポート、カスタマーサクセスは、他の業務と比べて最も時間の融通が効かない業務でした。
当時のユーザー数は数千台だったと思いますが、お客様に対するリアクションゆえに同期性を求められ、問い合わせの発生に伴い時間が拘束されるというシンプルな辛さがありましたね。
その後にまずはなんとか手を動かせるインターン生を採用したり、即戦力となる社員に部署を異動してもらったりしてなんとか回るようになりましたが、当初の1人でやることが多かった時期は、本当に辛かったです。

【4】PLGでこそ求められるお客様とのリアルな対話

それはとても大変な思いをされたんですね。
そんな中、事業を成長させる上でPLGならではの大変さはありましたか?

お客様と接するときに自身の主体性がないと、課題感をシャープにしたり、お客様の本質的な困りごとを理解することができません。
例えば、お客様のメール文面から「困っている事象」が発生していることはわかるものの、その逼迫感や温度感はわからない。そんなとき、課題の大きさを確認するために単にメールで回答するだけでなく、自分でWeb会議を設定したり、時にはお客様の生の声を聞きに会社の外へ足を運ばないといけない。お客様の生の声を聞くだけで「わざわざ1時間、これだけのトーンで問題を伝えてくれるぐらい大変なことなんだ…!」と気づくこともあります。

不具合が発生した際の事象1つを例としても、文面だけではどれほどの温度感で問題を捉えているのかはわかりづらいです。実際に、メールでは非常に丁寧で冷静な問い合わせであるように感じたものの、いざ会ってみると話し出したら止まらなかったケース、ぎっしりと内容が詰まったアジェンダを事前に用意してくださったケースは少なくなく、実際には非常に困っていた機会が数え切れないほどありました。
これらの経験から、お客様の温度感を正しく確かめるためには、CSの主体性が重要だと実感しました。
PLGというと、「プロダクトを自動でセルフサーブして課金されるモデル」というイメージが強いですが、事業の成長という観点では、実際に会って声を聞きに行った時に得られる発見こそが成長の種となっており、これらの取り組みを積み重ねていかないと、改善は進まないと感じています。
PLGだからこそ、お客様とのリアルな接点を持ち、生の声を聞きにいくことは重要ですね。

それは興味深い視点です。
お客様の声を聞きに行く活動も1人でされていたんですか?

お客様のところへは1人で行くこともあれば、エンジニアに同行してもらうこともありました。
エンジニアからみると不具合A・不具合B・不具合Cがあった時に、どの不具合も文面上は同様の温度感に捉えてしまうケースが多く、対応優先度を明確に設定してもらう難しさがありました。
そこでサクセス活動に同行してもらい、「これはめちゃくちゃ困ってるんです」「これが直されないと業務が全く進まないんです」お客様から直接伝えてもらった方が「こんなに困ってる話だったんだ」と気づけてもらえ、納得感を持って高い優先度での対応を進めてもらえるようになります。

今はZOOMも当たり前で便利な世の中になったなと思いますが、オフラインでやらざるを得ない時期は大変だったものの、お客様の声を聞きにいく活動は、エンジニアに納得感を持って開発してもらうためには重要な意味がありました。

やはりカスタマーサクセスはエンジニアやデザイナー、営業など連携が大事な部署ですよね!

そうですね。
お客様の意見そのものは「目に見えている現象」であるケースが多く、カスタマーサクセスが課題に昇華するプロセスを担えるようになるだけで、要件を定義するプロダクトマネージャーや、デザイナー、エンジニアが思考を巡らせる手間を大幅に減らせるようになると思います。
お客様の意見を横流しで言われてもみんな困ってしまうので。組織によってはこれらの役割をPdMが担う場合もありますが、サクセスによる「橋渡し」も、問題解決のプロセスにおいて大事な役割だと思います。

【5】カスタマーサクセスの思考プロセスの磨き込みが、事業戦略の思考にもつながっている

「お客様の抱えている課題をどのように解決していくか?」がサクセスの大事なミッションということですね。
これまでの多様なご経験を通して、仕事の面白さ・やりがいを感じたのはどんなところですか?

PLGプロダクトに関わり始めた初期と現在でそれぞれあります。初期のカスタマーサクセス業務としては、お客様からいただいた改善要望をデザイナーと協力して仕様に落とし込み、エンジニアが実装して、自分がチームを代表してお客様に改善済みである旨を連絡する役割を担うことで、お客様の問題解決プロセスに立ち会っている実感がありました。
お客様とプロダクトそれぞれが良い方向に向かっていると、肌で感じられることが面白さであり、やりがいでした。

チームを構成するようになってからのプロダクトマネージャー業務、現在の事業戦略の遂行業務としては、カスタマーサクセスの業務の延長ではありますが、より大きな改善や、プロダクトの進化に関わる意思決定を行うことで、お客様の抱えている、より大きな問題解決に携われていることに、やりがいを感じております。
職位のレイヤーが上がるにつれて、目の前のお客様が抱えている「N=1の問題解決」だけでなく、「同じような問題/課題を抱えているお客様が数多く存在するはずだはずだ…!」と、抽象度を上げて考える機会も増えてきました。
このような思考プロセスは、自分のキャリア初期にお客様との繰り返しのOne to One 対応で積み重ねてきた経験ゆえに培われてきたもので、「目の前にいるような人たちが使ってくれるはずだ!」という観点から仮説を立て始めるプロセス、仮説の筋を見極める経験は、現場メインのカスタマーサクセス業務の頃から変わっていません。
小さな向き合いの積み重ねから、次第に解ける問いのサイズが大きくなり、自分の担当するプロジェクトや、解決したい問題を抱えている人の母数を次第に増やせていく経験が、今の自分につながっていると感じています。

【6】多様なキャリアだからこそ活きる自身の強み

なるほど。カスタマーサクセスとしての経験が現在の事業戦略部長にもつながっているということですね。

そうですね。今、株式会社ベーシックPLG事業部では、2つのサービスを取り扱っています。
「戦略の組み立て方」として「戦略」「作戦」「戦術」「兵站」のワードを用いる機会が多いかと思いますが、現在は両PLGサービスの事業戦略立案の遂行の取りまとめを担っています。イメージとしては事業部寄りな経営企画担当の役割が近いかもしれませんが、PLG事業部の場合はプロダクト開発とマーケティングの協業体制を整えることが事業成果に最も影響を及ぼすため、事業側の戦術や兵站に思考を巡らせられる人でないと、役割を全うすることは難しいかもしれません。
自分たちの考えた戦略を遂行するために、プロダクト部門やマーケ部門とは密に連携を取り、自分たちの基本戦略を示すだけではなく、多くの場合にはプロダクト部長やマーケ部長が考えている仮説の筋を確かめたり、考えた戦略にミートさせられる組織体制を構築できるように、数多くの調整を行っていただく機会が多いです。

PLG事業部は数十人のメンバーが所属する部署ですが、おおかたの職種はデザイナーやエンジニアが担当する業務を除けば、ビジネスサイドの場合は私自身が当事者として取り組んできたものが大多数です。
また、先ほどお伝えした「戦略」「作戦」「戦術」「兵站」の中で、「戦略」と同じレベルで必要な要素が、実は「兵站」であったりします。わかりやすい言い方をすると、戦略を遂行するためのリソースや人がこちらに当たります。つまり、「現場の人」「現場の取り組める環境」のそれぞれに意識を向けないと、数字が積み上がらないどころか、組織が正しい方向に進むことができず、空中分解してしまいます。そのため、各メンバーに対して「どうしたら動いてもらえたら良いのか?」「動きやすくなるための仕組みはどうあるべきか?」を考え抜くことが重要で、自身の経験から一定の解像度の高さから「兵站」に向き合うケイパビリティが、今のキャリアに活きています。

【7】事業戦略部長になった今、次にチャレンジしたいこと

カスタマーサクセスを含む様々な現場での経験が今につながり活きているのですね。最後にご自身が今後のキャリアでチャレンジしたいと考えていることがもしあれば、ぜひ教えてください!

まず、formrunやbookrunといったサービスは、今以上にお客様にご利用いただける可能性があるサービスだと思っています。
これらのサービスが提供する価値にまだ気づけていないお客様、潜在的にはフォームの作成や保守運用に課題を抱えているお客様、煩わしい日程調整に無駄な時間を費やしてしまっているお客様がまだまだたくさんいらっしゃると思っており、そのような方々にサービスを届けていきたいですね。
フォームって簡単に作れると思っている人が多いのですが、実際には「ツールで解決してほしい」と思うエンジニアがゴマンといるくらい、実はとても面倒くさい扱いをされている存在なんです。
日程調整も「メールで候補日時を2,3出して、何度かやりとりを行う中で調整すれば良いんでしょ?」と思っている人もいますが、実はツールを使うことで時間が大幅に短縮できる。今回のオンラインインタビューもbookrunをご利用いただいているKOMMONSさんからの調整URLを、私がたった10秒ちょっとで回答しただけで今日を迎えられたように、このような業務効率化できる話が、まだまだ届いていないと感じています。
なので、サービスを使ってくださる方を増やしていくことがチャレンジですね。

参照:bookrunにより自動的に商談の日程調整が進む⁉︎ 1人営業でも次々とアポを獲得できるようになった背景とは? | bookrun(ブックラン)| 誰でも手軽に始められる日程調整ツール

私自身も年齢を重ねるなかでより成長したい気持ちがありますし、スキルのある人の考えを学びたいという想いもあります。
また、若い人でキャリアにつまづいている人、実力を伸ばせる可能性があるのに伸び悩んでいる人の手助けをしていきたいという想いもあり、実際には社内外問わず、キャリアの相談をいただく機会も増えている今日この頃です。

CSから広がる多様なキャリアについてお話いただきありがとうございました。もっとお話を伺いたいところではありますが、残念ながらお時間となりましたので本日はここまでとさせてください。
お話いただきありがとうございました!

ありがとうございました。

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