見出し画像

2022年 メタルコアベストアルバム20選

 どうもです。

 年末恒例のまとめ記事を今年も書いていきます。

 第1弾は"メタルコアベストアルバム"を20枚選びました。昨年より5枚増えてしまった事は申し訳ないです、豊作すぎてガチで無理だった。まぁ自分の記事なので許される。因みに選定基準として以下の事を気にしています。

・(当たり前ですが)今年リリースした作品
・(別途ベストあるので)国内バンドは対象外
・毎月書いていた記事で紹介済みのアルバムから選出
・いわゆるハズレ曲が1曲もない
・収録曲の中で聴く回数に偏りが少ない
・リリース月だけでなく年間通して聴いていた
・繰り返し聴くことが多かった

 あとは、ここでの”メタルコア”はタイトル付けの為で広義の方だと捉えて頂ければ幸いです。細かいジャンルは記載しています。

 ということで早速、完全主観で選び尽くした20枚を紹介していきます。


#1『Euphoria』/ ENOX

【1/14 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア

 アメリカニュージャージー州ジャージーシティを拠点に活動。12曲入り、待望のデビューアルバムでした。前身バンドであるEnochianから誕生し、2018年のシングル「Convulsions」でデビューした時から注目してましたが、その期待に大いに応えてくれた名盤だったなと。
 何と云っても楽曲の幅広さ、多彩な引き出しが魅力的。ここまで飽きが来ない曲、アルバム中々ないです。武骨なメタルコアをバックボーンに持ち、プログレッシヴとテクニカルな要素、ニューメタルコアやラップメタルも取り入れていく貪欲さ。そして、それを可能にする技量がとてつもないなと。音像や展開としては割りと複雑なのに、クリーンパートなど確実に耳に残るフレーズが楽曲の要であるとするこだわりが感じられるのも好きです。サイン入りのフィジカルを輸入する位には気に入っています。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Radiance」, Tr.2「Blame Shift」, Tr.3「Fade」, Tr.8「Stacker」, Tr.12「Convulsions」


#2『Deadlock』/ InVisions

【2/11 リリース】【メタルコア】【Narrative Records】

 イギリスを拠点に活動。3年ぶり3枚目となるアルバムで、全11曲。
 彼らの3枚のアルバムの中でも本作がイチバン好きですね。かなりアグレッシブで本当に激しく攻めに攻め切った1枚だったと思います。エネルギーが溢れ出ちゃってるというか、ライブ会場かと錯覚するレベル。弾む様なギターリフにブレイクダウン、コーラス、シンガロングパート辺りですね。パンデミックによる約2年間の活動休止で蓄積していたありとあらゆるモノが本作に込められ、ライブでかましてやる!と云う気概を感じざるを得ません。スクラッチ音やストリングスを絡めた処や、ボーカルワークの変化、曲構成など、野心的なアプローチにも魅了されました。イギリスのメタルコアシーンを語る上で間違いなく欠かせない存在になったと思います。こちらもENOX同様、好きすぎてフィジカルとTシャツ輸入しましたね。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「The 669」, Tr.3「Annihilist」, Tr.4「DVPE」, Tr.6「Deadlock」, Tr.9「DEALER」


#3『THE DEATH OF PEACE OF MIND』/ Bad Omens

【2/25 リリース】【ニューコア/メタルコア】【Sumerian Records】

 アメリカバージニア州リッチモンド出身。3年ぶり3枚目のアルバムは、15曲入りの大ボリュームとなりました。
 年末ベストにこのアルバムを入れる事になるとは…自分が一番ビックリしてますw と云うのも、自分の記事をチェックしてくださってる方はご存知かもですが蔵出し盤なんです。リリース当初は全然ピンとこなくて…でも毎日聴いてたら徐々に徐々にハマってしまった。クソスルメ曲で沼でした。
 まず、曲順通りに聴くのが必須条件。すると、20周目辺りから本作の世界観に飲まれてる感覚があって、純粋に身体に馴染み始めたなと。余りに研ぎ澄まされたメロディと、Vo.Noahの力強くも色気のある歌声が身体中に響き渡ってくる様になりました(特に高音域が堪らない)。シンセ中心の脈打つようなインストゥルメンタルも心地よく、従来通りのヘヴィで強靭なグルーヴ感にどうしても体が揺れてしまう。そんなベストアルバムでした。ライブ映えしそうな楽曲もあるので、また来日して欲しいですね。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.4「THE DEATH OF PEACE OF MIND」~Tr.7「bad decisions」, Tr.13「What do you want from me?」, Tr.14「ARTIFICIAL SUICIDE」


#4『Eulogy』/ If Not For Me

【2/25 リリース】【ポストハードコア/メタルコア】【Theoria Records】

 アメリカペンシルバニア州ハリスバーグを拠点に活動。今年リリースのEP4曲を含む、待望のデビューアルバムでした。全11曲。
 完全に好みドストライクでしたね。10年代前半のポストハードコア/メタルコアバンドを連想すると云うか。でも、サウンドはちゃんと現代的。基本は綺麗なクリーンで存在感を放つボーカルがグイグイ引っ張っていってるけど、耳を傾けるとDjent寄りの結構テクニカルなフレーズなんかも多くて聴き応えあるのも推せますね。哀愁漂うメロディにキャッチーなメロディ、はたまた重厚且つアグレッシブに魅せるメタルコアサウンド、強弱・押し引き等メリハリの効いた展開美がドラマティックに楽曲を彩っていると思います。また、この手のボーカルはスクリームへの移行も綺麗で耳馴染みが良いので、抵抗ある方も聴きやすいんじゃないかなぁと思ったり。是非。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Voices」, Tr.3「Better Days」, Tr.7「Too Far Gone」, Tr.8「Bury Me」, Tr.11「Dearly Deceased」


#5『Virtual Reality』/ Dreamwake

【4/5 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア】

 アメリカコネチカット州ニューヘイブン出身。待望の1stアルバムでした。
 全9曲とアルバムとしては少し短いながらも、高品質なトラックのみで構成されてて、想っているよりも満足感を得られましたね。シンセウェーブとメタルコアの融合にサックス、どこか懐かしさのあるメロディライン。本作を聴けばユニークでノスタルジックな体験ができるはずです。ついついリピートしてしまう中毒性もあるのは、純粋にメロディセンスが良すぎる証拠でしょう。2ndまでのNovelistsが好きな人はハマれるエモーショナル且つスタイリッシュなメロディと云うか。儚げで浮遊感もあるエフェクトを施しながらも、落とすトコはきっちり落としてくるブレイクダウンも好き。クリーンとシャウトの絶妙な使い分けが非常に心地良いボーカルワークに絡みつくDjent由来のピロピロギターで耳が無限に幸せです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Night Rider」, Tr.5「Midnight Rain」, Tr.7「Paradise」


#6『Harmony In Absolution』/ Monument Of A Memory

【4/8 リリース】【メロディック・メタルコア】

 アメリカニュージャージー州バーゲン郡出身。記念すべき1stフルアルバム。嘗てWill Ramos(現.Lorna Shore)が在籍していたバンドで、これまでドラムを務めてきたDylan Newhouseがリードボーカルも務め、双子の弟Jeremy Newhouseがギター、 Eren Guneyがギターとソングライター、Joshua Correaがベースを務める編成に。
 かなり堅実で完成度の高い1枚でした。工夫を凝らし緻密に作ったのが窺えると云うか。2000年代初期のメタルコア、デスメタル、スラッシュまで様々なジャンルからインスピレーションを受けたであろう、それらをモダンで勢いのあるエッジで融合させたスタイル。重厚なメタルサウンドでありながら、抜群のメロディセンスと上品さによって不思議と重く感じないし、古臭さの欠片もないのが魅力的だなと。ボーカルの身体つき通りの野太いスクリームも好きだし、楽器陣によるテクニカルでタイトな演奏も楽曲によっては恐ろしい程に壮大に仕上がってて、ライブ映えするだろうなぁと想像に難くないですね。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Black Gold」, Tr.5「Distlling Spirit」, Tr.8「Victoriois When The Devil Failed」, Tr.10「Shadow Walker」


#7『In Stasis』/ Monuments

【4/15 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア】【Century Media Records】

 イングランドはミルトン・ケインズを拠点に活動。前作『Phronesis』から実に4年ぶりとなる、4thアルバム。2019年に加入したボーカリストAndy Cizekにとっては最初のアルバム。また、2015年に怪我で脱退し、2019年に復帰したドラマーMike Malyanも参加し、新たな4人体制で制作された一枚。
 プログレッシヴメタルコア歴代名盤にも入れたい位には名盤。キャリアに裏付けされたテクニックと並外れたグルーヴのみが生み出せる緊密なインタープレイによってドラマティックな完成度を誇る楽曲達。ひたすらに圧倒される事間違いなし。Vo. Andyの凄まじいスクリームと綺麗なファルセットクリーンは神秘的美しさの要となってて本当に聴き惚れます。全曲4分越えのボリュームであり、中でもTr.10「The Cimmerian」は8分超。アルバムを壮大かつ流麗に締めくくってくれました。個人的にプログレッシヴメタルコアにハマらせてくれたバンドは彼らなので、今でも最高にカッコイイの本当に嬉しいです。メンバー交代が激しいキャリア上これまでリリースした全アルバムと違う印象であり、Monuments程ここまで1枚を選べないバンドは珍しいと思いますので、過去作も是非。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Lavos」, Tr.3「Cardinal Red」, Tr.5「Collapse」, Tr.7「Somnus」, Tr.9「Makeshift Harmony」, Tr.10「The Cimmerian」


#8『Love Language』/ Windwaker

【5/6 リリース】【メタルコア/ポストハードコア】【Fearless Records】

 オーストラリア・ニューサウスウェールズ州ワガワガを拠点に活動。記念すべきデビューアルバム。
 クオリティ的にも自分の好み的にも完璧に限りなく近い1枚。デビューアルバムにしてちゃんとオリジナリティを確立すると同時に、多彩な要素を取り込んで昇華できるんだとイマのメタルコアを象徴してくれる様な作品でした。R&B、ソウルを合わせ持った洒落た感じもあり、2000年代のオルタナティブ・ロック要素を取り入れたエレクトロミックスをメタルコアに落とし込んだスタイルだと思います。これだけ幅広い楽曲を難なく歌いこなして魅せたボーカルWill Kingも凄いです。彼はこの後グループを脱退する事になってしまいましたが、代わりにLiam Guinaneがリードボーカルとして再加入。新体制初で11月リリースの「Left In The Dark」も最高だったので、バンドとしては全然大丈夫そうです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Lucy」, Tr.3「Nighthawk」, Tr.4「Dopamine Freestyle」, Tr.8「Superstitious Fantasy」, Tr.11「Hide & Seek」


#9『Remade In Misery』/ Memphis May Fire

【6/3 リリース】【メタルコア/ポストハードコア】【Rise Records】

 アメリカテキサス州ダラス出身。4年ぶり、7枚目となるアルバム。
 昨年からリリースされたシングル曲で殆ど構成されてるので、新鮮さは薄かったものの最高でした。楽曲のクオリティは申し分なかったのでね。結成から20年経つベテランの意地と本気を魅せつけに来た作品であり、間違いなく2nd, 3rdアルバム頃の彼らが"帰ってきた感"があった1枚で、なんか純粋に嬉しかったです。ダイナミックでありながら研ぎ澄まされたサウンドの切れ味、攻撃性とキャッチ―さを兼ね備えたメリハリの良さ、圧巻のメロディセンス。どこを取っても有無を言わせない貫禄でした。目立った革新的要素は無いけれど、多様化していく昨今のメタルコアとは逆行する形で、この数年の世界情勢で失われてしまったモノを取り戻そうとする姿勢には、ベテランだからこその安心感や定石もある訳で。良い意味で変わらないリリックやメロディからも根底にあるエネルギーや揺るがぬ想いを感じる事ができました。僕は彼らみたいなスタイル大好きです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Blood & Water」, Tr.3「Somebody」, Tr.5「The American Dream」, Tr.9「Left For Dead」, Tr.11「The Fight Within」


#10『2222』/ Chaosbay

【7/29 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア】【Circular Wave】

 ドイツはベルリン出身。2年ぶり3rdアルバムです。全12曲。
 7月当時"名盤入り決定"と書いた通り、ベストアルバムです。何度聴いてもむっちゃ良い!!と云う感想しか出てこない。昨今の世界情勢を乗り越えた未来への想いを込めたコンセプトアルバムとしての完成度も高く、曲の繋ぎを意識した部分が目立ち、最終トラックでそのままリピートさせる構成もやはりズルいなと。どれも世界観際立つ爽やかイケメン超メロディックヘヴィアンセムであり、このバンド独自の太い歪みまくった弦のサウンドはもはや殴っている様に攻撃的。その一方で、数多のジャンルや他媒体作品からヒントを得たであろうエフェクトの装飾はあまりにお洒落。また、印象として強く残るのはサビメロやギターボーカルの透明感ある伸びやかな歌い上げ方だったので、ポストハードコアシーンにも全然アプローチしていける魅力も持っていると思います。今後も楽しみです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Future of Death」, Tr.4「2 Billion」, Tr.5「What Is War」, Tr.6「All This Beauty Can't Be Real」


#11『Disparity』/ Oceans Ate Alaska

【9/1 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア】【Fearless Records】

 UKバーミンガム出身。前作『Hikari』から5年ぶりとなる、3rdアルバム。2016年に脱退したオリジナル・ボーカリストJames Harrisonが2020年に復帰しての体制です。全11曲総時間約30分。
 彼らのバンド史上"最も聴きやすく耳に残る"に尽きる一枚でした。トリッキーで読めない複雑に転調を続けるマスコア的アプローチが武器だった彼らですが、少しだけスマートにコンパクトに仕上げてきたなと。棘を潜めた分2nd『Hikari』で磨いた繊細で美しい、聴き心地の良いメロディを絡めてきた印象。雰囲気も爽やかで幻想的なのに、ちゃんと激しくヘヴィなパンチがあると云うか。スクリームとクリーンが入り乱れるパートとか特に。相変わらず意味わからんテクニカルな事を平然としてくるので、聴き応えは十分です。Vo. Jamesの歌声も良い意味で変わってなくて。その安心感は、ポストアポカリプス的な世界について歌いながらも、"俺たちは変わらずここにいる"と、リスナーに希望を与えてくれるモノだったと思います。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.3「Metamorph」, Tr.6「Dead Behind The Eyes」, Tr.7「Plague Speech」, Tr.11「Hallucinogen」


#12『TEKKNO』/ Electric Callboy

【9/16 リリース】【メタルコア/エレクロニコア】【Century Media Records】

 ドイツを拠点に活動。2020年6月に新Vo.Nico Sallach(ex-TO THE RATS AND WOLVES)が加入。今年3月には呼称問題から改名も果たし、Electric Callboyとしては初、キャリア通算6枚目のフルアルバムとなりました。
 聴く者を笑顔にさせ、楽しく踊れて、ちゃんとメタルコアな楽曲達で構成された本作。新体制後すぐにリリースした「Hypa Hypa」は爆発的大ヒットを受け、しっかりとこのコンセプトに磨きを掛けてきた素晴らしい作品でした。今回紹介する20枚の中でイチバン"楽しい"1枚です。MVも最高にバカバカしくて笑えるユーモア溢れるセンスが目立つ一方で、そこに挑戦する姿勢、多くを融合させるバランス力と構成力、それを実現する技量・実力がちゃんと備わっているバンドパワーも改めて実感させられました。この鬱屈とした時代だからこそ、音楽聴いてる時くらいは現実逃避してもいいじゃないかと。マイナス感情をゼロ越えてプラスにまで持ってってくれる、"音楽とはこうあるべき"の答えの一つを提示してくれた彼らに最大級の感謝を。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Pump It」, Tr.2「We Got the Moves」, Tr.4「Spaceman(feat. FiNCH)」, Tr.6「Arrow of Love」, Tr.8「Tekkno Train」


#13『Lotus』/ Within Destruction

【9/30 リリース】【デスコア/メタルコア】【Ultra Heavy Records】

 スロベニアはイェセニツェを拠点に活動。前作『Yokai』からメンバーが減り、オリジナルメンバーはDr. Luka VezzosiとVo. Rok Rupnikの2人で、2020年から加入したGt. Howard Fang(ex-Defying Decay, ex-Fallen, ex-Sinking City)を含むトリオ編成に。そんな新体制初、通算5枚目となるアルバム。
 リリースされてから聴き込みまくったら、全12曲好きになってました。シングルカット曲に感じていた不安は何処へ…と自分でも驚き。これだから音楽は面白いですね。一応主な要因としては、後半の新規曲が軒並み良すぎた事。前半との差別化じゃないけど、聴き比べる形でそこからアルバム単位で1周する様になって気づいたら…と云った感じです。全体通してバンド史上最高に個性豊かでキャッチー且つ、ガチのメタルコアをプレイ。それでも随所にはスラミングデスコア時代の名残も垣間見えました。このバンド特有の堂堂たるグルーヴ感だったり、骨の髄にまで響くダークでヘヴィなリフだったり。あと、Tr.12「Ultima」は最高級キラキラDjentスタイルでアジア人好みの美しいエモーショナルメロディを奏でてくれてますので必聴。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Toxic」, Tr.4「Survival」, Tr.8「Dehumanized」, Tr.9「Illusions」, Tr.11「P.O.P」, Tr.12「Ultima」


#14『Pain Remains』/ Lorna Shore

【10/14 リリース】【ブラッケンド・デスコア】【Century Media Records】

 アメリカニュージャージー州ウォーレン出身。昨年に4代目新ボーカリストWill Ramos(ex-A WAKE IN PROVIDENCE)と、ベーシストMichael Yagerを迎えた新体制初、通算4枚目のアルバム。全10曲で総再生時間1時間強。
 今世紀最強、永遠に語り継がれるべき神盤でした。また、年末記事で紹介するバンドの中で唯一2年連続選出ですね、おめでとう、そしてありがとうLorna Shore。この手のシーンでは他の追随を許さず、普段デスコアをあまり聞かないリスナーにまで届く作品だったかなと。自分も「今年の1枚は?」と聞かれたら迷わず本作を選ぶ位には好きだし、聴きまくった。最初から最後まで納得感ある曲構成、人外じみたテクニック、そして稀有なる才能と技術を披露しまくるWillの強烈なボーカルワーク。これらを支え包み込むオペラやオーケストラによる装飾。聴く者全てを劇場に誘い込む様で、言葉を失う程の感動の渦に包まれる事でしょう。特に組曲「Pain Remains I~III」がヤバすぎる。まだ聴いていない方は今すぐ聴きにいってください。今すぐ。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Welcome Back, O' Sleeping Dreamer」, Tr.3「Sun//Eater」, Tr.8~Tr.10の組曲「Pain Remains I~III」


#15『Darkbloom』/ We Came As Romans

【10/14 リリース】【メタルコア】【SHARPTONE】

 アメリカミシガン州出身。前作『Cold Like War』から5年ぶり、6枚目となるアルバム。全10曲。2018年に亡くなったKyle Pavone(Vo/Syn)に捧げる1枚であると共に、バンドとして前進する為に完成させた至極の1枚でした。なお、新たなボーカルは追加せず、元々ツインボーカルだった為、引き続きDaveが1人でスクリーム、クリーン共に見事に歌いあげて魅せました。
 前後半5曲ずつで綺麗にまとまっていたかなと思います。前半はこの手のジャンルの前線を走り続ける事を証明するかの様な、彼らなりの一つの完成形を見たトラック達。非常にアグレッシブで爆発力がありつつ、WCARと言ったらやはり外せない一級品の歌メロを搭載。Tr.4「Daggers」だけは全編スクリームでヤバかったですね。一方、後半はKyleへの追悼を共にできる様な楽曲達だったと思います。改めて制作してくれた事に感謝です。こちらは懐かしさすら覚えるフレーズもあったし、相変わらず歌メロが素晴らしいです。一緒に歌いたくなるんよな、本当に。これからも彼らの活躍を陰ながら応援しております。来日してくれたら絶対観に行く。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Darkbloom」, Tr.2「Plagued」, Tr.3「Black Hole」, Tr.4「Daggers」, Tr.6「One More Day」, Tr.9「Holding The Embers」


#16『Quarter Life Daydream』/ Crooked Royals

【10/21 リリース】【プログレッシヴ・メタルコア】【3DOT Recordings】

 ニュージーランドはオークランド出身。8曲入りキャリア初のアルバム。
 短めですが、多彩な楽曲が並び、全体的に完成度がガチで高い。プログレッシヴ・メタルコアを体現するが如く、ヘヴィでテクニカルなプレイが目立つドタイプな1枚でした。一つ一つの音色が丁寧に作り込まれており、ドラムの牽引力も凄まじく、楽器陣が世界観をスムーズに確立しているなと。そして、その世界観に立つツインボーカル。スクリームはブチギレ系でテンション上がるし、クリーンは音域広すぎでヤバイですね。高音では透明感ある美しさをこれでもかと放ってます。ニューメタルコア要素も取り入れたTr.4「Counterfait」で魅せる独特のドライヴ感とリズム感は、他の楽曲でも垣間見え、このバンドの強みな気がしないでもないです。アグレッシブな曲からキレイ目シンガロング必至ナンバーまで。将来性ありすぎで期待です。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Grass Hands」, Tr.3「Waypoint」, Tr.4「Counterfait」, Tr.7「Paper Warrior」, Tr.8「Between You and I」


#17『Wastelands』/ Chiffre

【10/27リリース】【モダンメタルコア】【753307 Records DK】

 ドイツはオスナブリュック出身。全12曲、待望のデビューアルバムです。
 これがデビューアルバムって…将来有望株でもあり、次回作へのハードル高いだろうなぁと。その位素晴らしいアルバムでした。彼らが掲げるバンドコンセプト通りノスタルジックな雰囲気を醸し出す、エモーショナル且つ力強さのあるポストハードコアサウンドが魅力。その一方で、メタリックで重心の低いアプローチにブレンドされたラップパートやシンセ装飾達によるモダンな味付けもアリ。中々に映画級の壮大な展開美も得意としていそうで、かなり器用でセンスフルなバンドだなと思います。お洒落な歌メロが非常に強くはあるんですけど、それだけじゃないと云うか。平気で転調してくるし。ボーカルも暖かい柔らかい感じだけでなく、野太いグロウルまで出せるの普通にえぐい。かなり気に入っているので、今後も楽しみです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Astatos」, Tr.3「Gaslights」, Tr.5「Cipher」, Tr.6「One Hour」, Tr.7「Strigoi」, Tr.10「Forevermore」, Tr.12「Neon」


#18『Trinity』/ The Gloom In The Corner

【10/28 リリース】【メタルコア】【SHARPTONE】

 オーストラリアはメルボルン出身。Sharptone Recordsからは初となる3rdアルバム。全13曲入り。
 バンド史上最高傑作であり、曲順通りに全て聴き通したくなる名盤でした。開幕感溢れる序盤の引き込まれた方とか異常ですし、小休止もあって、通し聞きでしか味わえない音楽体験が間違いなく此処に在るなと。コンセプトアルバムでありながら、曲調はバラエティに富んでおり、13曲中9曲に及ぶフィーチャーリングゲスト達も超豪華で、さながら物語の登場人物の様。リリックに込められたストーリー性や映画に関する知識が全く解らなくとも楽しめるのが本当に素晴らしいと思います。メタルコアに留まらず、デスコア、ニューメタルコア、Djent、ポストハードコアのニュアンスを織り交ぜ、ピアノの旋律やストリングスの音色などバンドサウンド以外のアプローチも駆使し、これまでにない音楽劇を奏で、人間の本能に訴えかけてくるシアトリカル・メタルコアの完成形の1つと言って差し支えない1枚でしょう。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「Obliteration Imminent」, Tr.3「Ronin」, Tr.5「New Order」, Tr.8「Behemoth」, Tr.9「Gravity」, Tr.13「Hail To The King」


#19『From The Dark』/ Lost In Sight

【11/4リリース】【メタルコア】

 Sapphire StudiosのOriel Leviによるワンマンメタルコアバンドのデビューアルバム。全9曲の作曲、プロデュース、ミキシング、マスタリングを彼が行い、ボーカルは全てColosseumsのVo. Billy Douglasが担当。
 これまでのメタルコアデータベースを研究し尽くしたのか疑う程に、みんな大好き王道メタルコア要素を軸に貫きながらも、クリアな世界観でドラマティックに展開する様がひたすら気持ち良い1枚でした。少し浮遊感のある音作りでエレクトロやストリングスによる装飾も絶妙だし、時折入るボーカルエフェクトもカッコイイ。ポストハードコアシーンにもアプローチできるメロディセンスの良さがありながら、容赦なく刻み込まれるリフの嵐。Vo. Billyもハイスペックすぎて閃光の如く存在感を発揮しながら、バンドサウンドに上手くフィットしています。落ち着いたトーンの楽曲もありますが、全体的には非常にパワフルで爽快感すら感じる激烈作でした。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.1「Save Me」, Tr.5「Finding A Way」, Tr.6「Set Me Free」, Tr.8「Why Should I Believe」, Tr.9「Remember Me」


#20『All Fine / eniF llA』/ Stain the Canvas

【11/18リリース】【メタルコア/ポストハードコア】【InVogue Records】

 イタリアはミラノを拠点に活動。2年ぶり2枚目となるフルアルバム。2021年の「End」以降コンスタントにリリースされた楽曲も全て含まれた、全16曲の大作。
 アルバム新規曲は少ないけど、曲順が入念に練られており、アルバムコンセプト及びストーリーが視えてくる素晴らしい1枚でした。年末までクソ聴いた。途中挟まれるインスト曲も緊張感あるので、是非、曲順通りに聴いて欲しい。全体的に不穏で不気味で狂気的なサウンドスケープで、非常に映像的なトラックが並んでるのもあり、前作よりもシアトリカルな一面が一気に前に出てきましたね。どの曲も展開が読みづらくてむっちゃ面白いです。クラシックなポストハードコアサウンドに磨きを掛け、ダウンチューニングに、トラップ/R&Bテイストまで盛り込み、エレクトロな装飾も忘れないと云った現代のあらゆる要素を見事に融合させたスタイル。Vo.Bryanの細く掠れ具合高めのスクリームは健在で、野太い低音もよく出るようになったなと。ライブパフォーマンスでの再現性がどこまでなのか見てみたいです。

★特にオススメするTrack
 ⇒Tr.2「HXPE」~Tr.6「End」, Tr.10「Dead Circus」, Tr.11「Ravenous」, Tr.13「Puppet」~Tr.15「ob-la-di, ob-la-die」



#総評

 今年の総評としては、以下の通り。

・デビューアルバムが比較的多い
・キャリア10年以上のベテラン勢の本気も見えた
・世界情勢の影響を受けて制作されている
・曲順通りに聴きたくなるコンセプトアルバムにハマる

 書き終わって感じたままに凄いざっくりと書いてみました。今年1年振り返ってみて選出外の作品を踏まえても、パンデミックや戦争下で制作された事が窺える作品はやはり多かった様に思います。バンドが思い思いの楽曲を制作してくれたお蔭で色んな角度から視た時の現状と、そこから描こうとする未来が浮かび上がってきて、ただ聴くだけじゃない音楽体験が間違いなくあったなと。
 あとは、デビューアルバムを見つける事ができて良かったです。これも日々のdigと毎月の音楽記事の賜物かなと。流行の音楽に敏感ではありながらも、そこに左右されない好きな音楽を引き続き見つけていきたいですね。
 今回、20選から漏れたアルバムも多数ありますが、やはりこーゆー記事って選ぶことに意味があると思うので、個人の趣味趣向も感じていただければ少し嬉しかったり…。網羅性と云う意味では毎月の音楽記事の方に役割があるのでね。(来年からは毎週になるかも…?)

 とゆーことで、ここまでお読みくださってありがとうございました。そして、この記事を書くことができた事にも感謝。バンドが素晴らしい作品をリリースしてくれたのもそうですし、これまでの僕の音楽記事を読んでくれる方の支えが本当に励みになっています。何だかんだ年末記事は3年目です。今後とも楽しい音楽ライフを!来年もよろしくお願いいたします。

 ではまた!


この記事が参加している募集

振り返りnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?