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連載小説|恋するシカク 第9話『告白』

作:元樹伸


本作の第1話はこちらです
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第9話 告白


 後日、下書きが終わった画用紙を渡すと林原が言った。

「そういえば奈子に伝言を頼まれてたんだ。この前の間違い電話、すみませんでしたってさ。なんのことだ?」

「別に何でもないよ」

 ふてくされて帰ろうとした時、手嶋さんに声をかけられた。

「今日もファミレスですか?」

「うん、まぁね」

 そんな簡単なやりとりがあった二日後、彼女がファミレスに突然現れた。

「手嶋さん、何かあったの?」

「暇だから覗いてみただけです」

 手嶋さんはむかいの席に腰を下ろし、山盛りポテトをつまみだした。

「これ美味しい」

「安いからいつも頼むんだ」

「脚本は順調ですか?」

「まあまあかな」

「ふ~ん……」

 彼女がテーブルに頬杖を付いてこちらをじっと見ていた。本当に何をしに来たのだろう。僕はどうにも落ち着かなくて原稿から目を放した。

「何か頼む?」

「いえ、すぐ帰りますから」

 手嶋さんは僕のグラスを引き寄せると、ストローでコーラを啜った。

「あ……」

「少しくらい飲んでもバレませんよ」

 そうじゃなくて、間接キスだと言いたかった。だけど逆に揶揄われそうだったので口をつぐんだ。手嶋さんは「少し」と言っておきながら、グラスの中身を全部飲み干した。

「先輩、次は何を飲みますか?」

「何でもいいけど」

「じゃあコーラでいいです?」

 手嶋さんがグラスを手にしてドリンクバーにむかう。僕は彼女が気になって執筆に集中できなかった。それにファミレスで女の子と二人きりなんて人生ではじめての経験だったので、僕は密かに浮かれていた。しばらくすると手嶋さんが戻って来て、コーラが入ったグラスを前に置いた。

「私、トン先輩のことが好きですから」

「えっ?」

 手嶋さんはそれ以上のことは何も語らず、テーブルに小銭を残して出て行ってしまった。

 ザザザッ、ザザザッ。

 女の子に告白されたにも関わらず、右耳がいつも以上に騒がしく警告していた。何故なら僕には他に好きな子がいたから、彼女の気持ちに応えることなど、できるはずがなかったのである。

つづく

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