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「永遠の0」改め「プロジェクトX」?「ゴジラ-1.0」ネタバレレビュー

こんばんは、烏丸百九です。
あっという間に月後半ですね!!(繰り返される悲劇
 
実は先週には見ていたのですが、山崎貴監督による「ゴジラ」シリーズ最新作、「ゴジラ -1.0」を見てきましたので、本日は資料などで内容を思い出しつつ、感想を書いていきたいと思います。

作中の世界が「第二次世界大戦直後の日本」であることと、山崎貴があの「永遠の0」の監督である事、書いているのがである事などから、多分に政治的な内容が含まれますので、閲覧の際にはご留意ください。

※以下、本作品の結末及び、他ゴジラシリーズの一部設定のネタバレが含まれます。


悪逆非道な侵略者「-1.0ゴジラ」 

本作の真の主人公とも言える怪獣、「-1.0バージョンのゴジラ(通称マイゴジ)」のキャラクター造形が素晴らしいので、ゴジラファンとしてまずは褒めておきたい。
 
大戸島に住んでいた古代恐竜の生き残りと思しき謎の生物が、アメリカの核実験による放射能で巨大化、日本を襲う……という基本設定は初代「ゴジラ」を踏襲しているが、作者の山崎監督の性格のためか(後述)、「核兵器や戦争/大災害の象徴」「人々のヒーロー」「(地球のバランスを保つ)破壊神的存在」といった従来のシリーズによく見られる「ゴジラらしさ」はあまり見られず、故に直接比較の対象になるだろう近作「アニメゴジラ」にも「シン・ゴジラ」にも「モンスターバースゴジラ」にも全く似ていない。
 
過去のシリーズで(キャラクター的に)類似していると思えるのは、悪名高いエメリッヒ版「GODZILLA(通称ジラ)」や、直接の元ネタだと思われる金子修介の「GMKゴジラ」だろう。彼らと「マイゴジ」に共通しているのは、「動物的凶暴性」の強調と、「人類に対する強い敵意/害意」である。

「ゴジラ-1.0」宣伝スチルより、今回のゴジラの容貌。あまり性格が良さそうには見えない

魚が好きでよく食ってる」のは「ジラ」を連想させるし、人間に対して噛み付き攻撃を繰り出したのも「ジラ」以来のような気がするが(どっかでやってたらすみません)、とにかく人間が嫌いで殺戮を好む性質は非常に「GMKゴジラ」に似ている。しかもよりタチの悪いことに、こちらは「GMK」のような「戦争で死んだ兵士の亡霊」といったある意味で「人間臭い」バックボーンはなく、人間を襲う理由は「巨大化によって自分の縄張りが拡大し、日本列島が位置的に目障りになったから」という身も蓋もないもの。
 
旧来のシリーズ通り、身勝手な核実験により犠牲となった生物という側面はあるものの、攻撃すると逃げずに逆上し、体力が尽きるまで追いかけてくるし、デザインも生々しくて気色悪く、特に必要もないのに(「シン・ゴジラ」のような反撃意図でなく)銀座を放射熱線で壊滅させ、かといって「ジラ」のように新たに仲間を増やそうとしたりはせず、ただ只管に人類その他の生命体を蹂躙していく。その「地球の自然法則を無視した」生物としての特殊能力も含めて、「KOMゴジラ」のキングギドラを彷彿とさせる、いっそ清々しいほどの「悪の帝王」ぶりである。

このゴジラの「非情な悪役」ぶりが、豪奢なVFXを恐怖と共に存分に楽しませつつ、ゴジラの脅威に立ち向かう人間達のドラマを際立たせる効果となっている。
これまでゴジラを「悪」「人類の敵対者」として描いた作品は数あれど、ここまで自分勝手で鬼畜外道な性格のゴジラは珍しく、流石は過去にドラえもんをセワシ君の奴隷にしたりドラクエをMMORPGみたいにして原作ファンの大顰蹙を買った山崎貴監督らしい仕事である。

彼のように「原作をあんまり尊重しない」タイプの映画監督はしばしば嫌われるが、今回は「ゴジラ」というキャラクターの解釈の幅の広さと、「絶対的な悪」に振り切った脚本がエンタメとして奏功したと言えるだろう。

山崎監督は「永遠の0」を乗り越えたか?

山崎貴は右翼的な作家である。映画監督は(多くは原作ありきの企画を手がける)職人的な仕事だという前提を置いても、「宇宙戦艦ヤマト(実写)」「永遠の0」「アルキメデスの大戦(私は未見)」が全部同じ監督の手によって作られ、しかも概ね好評を受けているというのは「そういう企画が多いから」「VFXの第一人者だから」で片付けられる話ではないと思う。
 
特に「永遠の0」の映画版は、山崎監督に日本アカデミー賞などの栄誉を与えると共に、原作者・百田尚樹の人気を不動のものとし、彼の極右的/差別主義的/国粋主義的な政治活動の原資の一部を齎したという意味で、左派が山崎を「山崎貴だから」というだけの理由で非難するのは故のないことではない。
ゴジラシリーズのファンである私自身も、実際に映画を見るまで「-1.0」の評価には懐疑的だった。世間的には「面白い映画」だとしても、自分には合わないのでは? と思っていたのだ。

少なくとも本作の冒頭を見たときは、そういう「嫌な予感」は割と的中したと感じてしまった。何しろ神木隆之介くんが演じる人間サイドの主人公・敷島は「特攻志願だったが、いざとなると死ぬのが怖くなっていまい、逃げ出して生き残った元兵士」と言う設定で、「「永遠の0」の主人公じゃねーか!」と思わずツッコミを入れてしまうもの(それぐらいコンセプトが似ている)。しかし、描かれるドラマはまた別物だった。

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