見出し画像

丸美屋のふりかけで1つ異質なヤツがいる件について


序論 味道楽という「味」

丸美屋のふりかけに「味道楽」って味がある。冷静に考えて意味がわからない。他のふりかけの味は、全て食べものの名前が入っていて、ふりかけが何者であるのか明確である。

一方で「味道楽」は、訳のわからない「味」表現にも拘らず、我々の目の前にある。そして丸美屋のなかでも、ひいてはふりかけ業界のなかでも「のりたま」の次くらいに強いやつなのだ。

本稿では、一見するとわけわからん「味」である「味道楽」の、「味道楽」たる要因と、その強みについて考えてみよう。

1 「味道楽」味であること

ここでは、なぜ「味道楽」といういわば抽象的な名称であるのかについて触れる。

「味道楽」(丸美屋食品工業)は、同社のふりかけ部門で大黒柱の「のりたま」に次ぐ存在だ。1969年発売と歴史も長い。ところで、味道楽はなぜそんな名前になったのか。
「当社の商品の多くは、たらこのふりかけは『たらこ』、かつおのふりかけは『本かつお』と原材料がイメージできます。『味道楽』はさまざまな素材からなり“○○のふりかけ”の○○がないため、いろんな素材の味がして楽しめる“味の道楽”から商品名となったようです」(広報宣伝室課長・青木勇人さん)
商品名に象徴されるように、原材料は鰹削り節、のり、たまご、ごまに加え、こしあん、抹茶、青のりなどが細かくブレンドされている。味の完成度は高く「2019年に50周年を迎えた際、品質改良を考えましたが変えられませんでした」(井原さん)という。
具材のセンターはかつお節かと思ったが「それは『本かつお』で、『味道楽』はすべての具材がセンターなのです」と井原さんは説明する。

「のりたま・ゆかり・味道楽」ふりかけ不動3強の訳(東洋経済オンライン、2021年10月31日)https://toyokeizai.net/articles/-/465250?page=4

この貴重な証言からは、以下の要素が読み取れる。

  • 「味道楽」は長い歴史があること。

  • いろいろな素材を組み合わせていること

  • 黄金律のようなものがあり、素材全てが主役で、容易に具材の入れ替えはできないこと。

ピザで言うとミックスピザみたいなものなのだろう。何が入っているとは明確にしていないのに、妙なスタンダード感がある。そのスタンダードは、長い歴史が蓄積されたこと、組み合わせの妙によりとても味が良いということに要因がある。

2 「名もなき味」の強さ

「味道楽」は何かを言っているようで何も説明していない。なのに強い。

仕事でも私生活でも、こういうタイプが一番強いのではないだろうか。名前がないのにそれっぽい名前がついて、そこにマターとして存在するタイプ。

ビジネスで考えてみよう。特定の名前のついた、一見してわかる仕事がある。それはそれで大事だが、なんだかよくわからない名前のない仕事を任せられていて、そこで収益を上げている人もいる。皆さんの周りにも、ぱっと見どう儲かっているかわからないけれども店や仕事を続けている人がいるのではないだろうか。

こちらの方が「強い」印象があるし、独創的でありクリエイティブな存在とも言いうる。

3 「独創性」とは何か?

今日の文章は「味道楽」から出発しているが、最終的には「独創性」とは何か? について言及することになる。

「味道楽」は述べてきた通り無名なものを有名にした強さがある。これは「独創的」であるとも指摘した。

「独創的」「独創性」「クリエイティブ」と聴くと、なにか瞬発力があり既存の事柄からぶっ飛んだモノ、という印象がある。ところが「味道楽」の独創性はそれとは異なる点から出発しているように思う。

「味道楽」は

A 長い時間をかけ
B 手持ちの味を組み合わせ
C その組み合わせの絶妙さを見出し

ふりかけとして君臨してきた。「独創的」「独創性」「クリエイティブ」とはこうした、むしろ地味で地道な営為にこそ宿るのではないだろうか。

おわりに

私はこうした考えを持っているので、「味道楽」がかなり好きだ。若い頃は「すきやき」味ばかりだったのだが、最近は「味道楽」ばかり。述べてきた通り理詰めで「味道楽」を愛しているし、もちろん日々の食事のお供としての「味道楽」味もまた愛している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?