『ポケモン』 ショートショート
「見つけたか?」
ポケモン愛護団体S班のリーダーは茂みの中で汗だくになりながら隣の助手に囁いた。
「見つけましたよ。NO.1105は紛れもなく白です。」
スピードガンのような形をした行動分析機をNO.1105に向けながら、助手は冷静な口調で答える。
「よし。今から捕獲に移る。」
リーダーはおもむろにモンスターボールを取り出し手慣れた手つきでNO.1105の捕獲に成功した。
「しっかし虫タイプがやっぱり多いな。こいつらは戦闘に向いないんだろう、生まれつき。」
リーダーはNO.1105が入ったモンスターボールを見つめながら嘆息する。
「そうですねえ、やっぱり体が小さいですから。向いてないでしょ、ポケモンバトルなんかは特に。」
助手も名残惜しそうにそのモンスターボールを見つめていた。
「ポケモンってだけで戦闘好きだなんてまったく誰が決めたんだろうな。」
「で、こいつの性格はどんな感じだった?」
「”おだやか”、です。多いですよね、おだやかな性格の個体って。」
「まあ、確かに。”おくびょう”とか”ひかえめ”なやつらは引き籠りがちだからな、なかなか見つけにくいってもんよ。」
「そういうやつらをバトル至上主義のこの世界から救いだすのが僕らの役目ですからねえ。地道に頑張っていきましょう!」
「んなことは言われなくてもわかってるよ。」
助手の少々押しつけがましい励ましにめんどくささを感じながらも、身支度を整え二人はトキワのもりを後にした。
【活動レポート】
7月16日
〇場所
トキワのもり
〇一週間の非戦闘気質ポケモン捕獲総個体数
56匹
〇タイプ内訳
・虫タイプ 7割
・草タイプ 3割
〇性格内訳
・おだやか 30匹
・ひかえめ 14匹
・おくびょう 12匹
〇コメント
調査ごとの捕獲個体数は増加傾向にある。
性格によって人間を極度に警戒し発見が困難な個体が多いように感じたので広範囲のポケモンをおびき寄せる装置開発を研究チームに依頼する予定だ。
未だに戦闘気質の個体による非戦闘気質の個体への一方的な殺戮は続いている。ポケモントレーナーと非戦闘気質のポケモンのミスマッチも減少傾向ではあるが0ではない。能力値の高さだけでポケモンを判断し戦闘を強制するトレーナーには虫唾がはしる。
引き続き非戦闘気質の個体が暮らしやすい世界を作るために尽力する。
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