夫と別居することになった話
結婚式の約1ヵ月前の9月のこと。
10月から夫は隣県に2ヵ月間、出張予定だった。
仕事柄長期出張が多く、1年のうち4~5ヵ月程は出張で家にいない。
出張前はいつも仕事の佳境で、毎日22時頃まで残業していた。
加えて結婚式の準備もあり、9月はとても忙しくしていた。
いつものように遅くに帰宅した夫にご飯を用意して、食べ終わったら束の間の二人のコーヒーブレイク。
なんだかいつもよりそわそわした夫から改まって「話がある」と言われた。
私は普段、かなり楽観的だ。
なのにこういうときは瞬時に最悪の事態が頭の中をよぎってしまう。
夫の話は、想定外だった。
「上司に呼ばれて、転勤のオファーがあった。
新しいプロジェクトに携わって、持ち帰ってこっちでもそれを立ち上げる仕事。
だから、終わったらまたこっちに戻って来れるけど、2~3年くらいはかかると思う。
まだ結婚して1年も経ってないし、結婚式も挙げてない新婚だから、断ってもかまわないと言われてる」
その話を聞いて、まずはホッとした。
頭によぎったいろいろは、もっと辛いものだったから。
そして夫は、自分の意見を言う前に、「どう思う?」と私に聞いた。
私は答える前に「行きたい?」と聞いた。
「その新しいプロジェクトには尊敬している上司もいて、・・・(行きたい理由をいろいろ述べてた)・・・行きたいな、と思ってる」
「じゃあ、引き受けたらいいと思うよ」
夫の会社のことは私にはわからない。
転勤の話も、ステップアップになる良い話なのか、厄介払いのための悪い話なのか、私にはわからない。
けれど、夫が行きたいと言うのなら、どちらにしても、私の中では賛成以外はない。
逆に夫が行きたくないのに、会社に無理矢理行かされる、という話なんだったら、「会社辞めてもいいから、断りなよ」と言っていたと思う。
会社員をする、というのは、1日12時間以上(夫は)、週5日、自分の時間を会社に提供するということ。
会社員として過ごす場所は自宅と同等くらい大事だと思ってる。
その環境が少しでも良くなるなら、私には賛成しかない。
その上で、私がどうするかは、別の話。
夫と一緒に引っ越してもいいし、一緒に行かなくてもいい。
メリット、デメリットを考えた上で、私たちは別居することを選んだ。
別居=夫婦仲が悪い、というイメージしかなかったけど、こういうこともある。
子供がいれば単身赴任という言い方になるんだろうけど、お互い一人暮らしなので別居という表現の方がしっくりくる。
このことを人に話すとなんで付いていかないのか、とかなり驚かれる。
私の仕事はどこでもできる仕事だし、結婚したばかりなのに、と。
まぁそりゃそうか、と客観的に見て自分でもそう思う。
今は別居の前段階のような感じで、こっちと転勤先を行き来している。
月の半分~3分の2くらいは転勤先にいる。
寂しいかというと、寂しいこともある。
でも、寂しいことが悪いことでもない気がする。
寂しいからこそ、一緒にいる時間を大切にできる。
相手が傍にいることに感謝できる。
もちろんずっと一緒にいて、ずっとそう思えることが一番素晴らしいけれど、残念なことに人は慣れてしまう。
毎日夫のためにご飯を作らないといけないと、たまには手抜きしたいなぁと思うのに、2週間ぶりに帰ってくるとなると夫の好きな料理を時間をかけて作ろう、と思う。
これから50年、一緒にいるんだから、数年くらいこんなことがあってもいいのかな。
何より、一番救いだったのは
「私が反対したら、断ってた?」と聞いたら
「断ってたよ」と言ったこと
「反対することはないけどね」と言ったら
「うん、知ってる」と言ったこと
この言葉が私のことを一番に理解し、信頼してくれている、何よりの証拠。
この関係が保てるなら、ふたりの形はその都度変わっていってもいい。
夫婦の在り方に直面した、結婚一年目。
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