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好きだったけど、恋人になれなかった人のこと。

彼女の歌は、
大切な人たちへの気持ちを、
そっと抱きしめてくれる。

私は彼女に、
何度も助けられて来た。

あの人に対する想いなら…、
この曲かな?

といった、
私の心を温めるための、
レシピの様な存在。

『Flavor Of Life』といえば、
あの人を思い浮かべる。

昔の話。

好きだったけど、
恋人になれなかった人のこと。


彼との出会いは、雨の日の通勤途中。

会社の前で、
盛大に転けた恥ずかしい私に、
駆け寄って、手を差し伸べてくれた。

私は気まずかったので、
半笑いで「すみません」と
謝り続けていた。

彼の顔を見ると、
端正な顔つきの彼が、
「いや〜盛大でしたね。大丈夫ですか?」
と支えながら、笑ってくれた。

それが出会い。
タイプだった。
一瞬で恋に落ちた。

会社の飲み会で彼と再会した。
彼とは部署が違って、
あまり接点が無かったので、
久しぶりの再会だった。

飲み会が終わり、
彼と家の方向が同じということで、
家まで一緒に歩いて帰ることになった。

帰る途中で、
深夜0時まで営業してるカフェを見つけた。

私は彼の連絡先も知らないし、
会社の人がいる時にはなかなか話せない。
どうしても、2人きりになりたかった。

「酔い覚ましに、コーヒー1杯いかがですか?」

私は、勇気を振り絞って彼を誘った。

「お、いいね!」と彼は言ってくれた。

趣味の話や、会社の話、
大学時代の話、
色々話したが、

恋人はいるか…

この言葉だけは、交わされなかった。

別れ際、週末の映画デートに誘われた。

そこからの3ヶ月間、
友達なのか恋人なのかわからない状態で、
週末は一緒にデートした。

彼との最後のデート。
港で夜景を見ながら、沢山話した。

彼は私が転ける前から、
私を知っていたみたい。

「通勤途中、あんまり千華ちゃんの肌が白く輝いてて、眩しかったんだよ。」
とおかしなことを言って笑ってた。

彼の少し寂しい横顔を見てると、
不思議ともうこうやって会うのは
最後なんだと確信した。

そこから1ヶ月間、彼からの連絡が途絶えた。

しばらくすると…、
社内の噂で彼が地元の女性と
結婚したことを聞いた。

その噂を背中で受け止めて、
固まってしまった。
唇が痺れたのを覚えている。

私「ご結婚おめでとうございます」

(彼女がいたことをなぜ伝えなかったの?
私は、結婚前に遊ばれただけだったんだね。)

この思いを思い知ってもらいたかった。
苦し紛れにLINEした、このおめでとうに、

彼「ありがとう」

( …。)

彼「千華ちゃんのハンカチが家にあるから、
届けたい。あと、少し話がしたい。」

と返事が来た。

また、唇がジンジン痺れた。

(ずるい。私が好きだと知ってるくせに。)

私「大丈夫です。そのハンカチは、
もう古いので燃えるごみで捨てて下さい。」

彼「わかった」


これまでの恋愛で、こんなひどい人
はじめてだった。
だけど、彼女がいるか確かめなかったのは、
それを聞くと、会えなくなるのがわかっていたから。

私も知らなかったというか…
耳を塞いでいたというか…。
まあ同罪のような気がした。
(彼女さんからしたら、
私は知らなかったといえ最低だ。)

この失恋で免疫力が突然弱って、
謎のウイルスに感染した私。
高熱で1週間休んだ。

短すぎる恋だけど、
酷い人だったからこそ、嫌でも
良い時の彼が素敵な記憶として
刻まれてしまった。

この療養期間に聴いたのが、
『Flavor Of Life』

どんな失恋の慰めの言葉より、
私の心に寄り添って温めてくれた。

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