冬野新月

一次創作メインで活動中、たまに読書感想文かな サイトだと自分の作品が誰の目にも止まらな…

冬野新月

一次創作メインで活動中、たまに読書感想文かな サイトだと自分の作品が誰の目にも止まらない現実からnoteにやって来ました。 今年も創作頑張るぞ!

最近の記事

牡丹

ドーナツ型の家の中庭には冬と春に牡丹が咲き誇る、夏と秋には葵が咲く。この家で「人間」は3人しかいない、お嬢さんと頭(かしら)と…… 「葵!朝だよ、起きて!」  声とカーテンを開ける音、それから鋭い光が広る。あまりの眩しさに、一瞬顔をしかめた。 「……おはよ」  ベッドから上半身を起こす。出た声は思った以上に掠れて、ぼんやりとしたものだ。  深い眠りから醒めたばかりの脳は完全には覚醒してないらしい。前後に揺れる頭をどうにか窓の外へ向ける。  思っていたよりも日の位置は高かった

    • Drinkを一杯

      私は今、友人3人と飲みに来ています。仮にコーラさん、ジンジャーさん、烏龍さんとしましょうか。私はアセロラにでもしていてください。  さて、私は飲み物を飲むのが遅いのですが、私が最初に頼んだグラスの半分を飲むまでの間にいったい何があったというのでしょう。  ジンジャーさんが早々に酔いつぶれるのはいつものことですが、今日は烏龍さんまで酔いつぶれてしまいました。そして、やたらと私にジンジャーさんの名前を呼びながらすり寄ってきます。正直、うざい。 「烏龍さん、私はアセロラです。ジンジ

      • 【読書感想文】富豪刑事

        '22.05.01読了 著 者:筒井康隆 出 版:新潮文庫 honto(丸善ジュンク堂書店)商品ページ:https://honto.jp/netstore/pd-book_00289510.html ――あらすじ―― キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた〝富豪刑事〟こと神戸大助が、迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を......次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。靴底をすり減らして聞き込みに歩く〝刑事もの〟の常識を逆転し、こ

        • 【読書感想文】アイヌ神謡集

          '22.04.29読了 翻訳者:知里幸恵 出版社:岩波書店 honto(丸善ジュンク堂書店)商品ページ:https://honto.jp/netstore/pd-book_03544024.html アイヌ文化における神謡(ユーカラ)、その中でも神々が体験した事を語る「カムイユカル」が13編まとめられたものです。 アイヌ文化について知るは小中の校外学習や大学の講義くらいなものだったので、一度位読まないとダメかなぁなんて思いました。 アイヌ語の発音をアルファベットに起こした

          【ミュージカル】天使について【観劇しました】

          友人からオススメして貰ったミュージカルを観劇しました。 「天使について 堕落天使編」です。 HP:http://musical-tenshi.jp/ ミュージカルや舞台といったものに縁がなく(縁はあっても興味がなかったり)して観劇した事がありませんでした。 今年はフッ軽を自称しているので見たいなと思っていました。 配信期間ぎりぎりになってしまいましたが無事にチケットを購入し、観劇しました。 オンラインでチケットを購入して、観劇・閲覧した事がなかったので「こんな風になってるん

          【ミュージカル】天使について【観劇しました】

          満月珈琲店の星詠み~ライオンズゲートの軌跡~【読書感想文】

          '22.03.16読了 『満月珈琲店の星詠み』、『満月珈琲店の星詠み~本当の願いごと~』に続くシリーズ第3弾になります。 著 者:望月麻衣 出版社:文藝春秋 honto(丸善ジュンク堂書店)商品ページ:https://honto.jp/netstore/pd-book_31271351.html ―あらすじ― 八月の新月、三毛猫のマスターのもとに、美しい海王星の遣い・サラが訪れた。特別に満月珈琲店を手伝うという。人に夢を与えるサラが動いたことで、気後れして母に会えずにい

          満月珈琲店の星詠み~ライオンズゲートの軌跡~【読書感想文】

          手に残るものがあるならば

          お題:雪降る夜に 群像劇の最後のお話 悲劇は繰り返す、アーモンドアイはまたそれを見つめる  男性は自分以外誰も居ない、広い家の中でソファに体をうずめるように座っていた。ソファの前にあるローテーブルには、娘と息子が書いた、少し誤字の多い手紙がある。膝の上には、ページがずれている新聞が三紙程乗っている。どの新聞も戦況が芳しくないことを伝えていた。男性は、新聞でも、手紙でもなく家の天井を見上げていた。  町の大通りから聞こえる子どもの声に、今この場に家族がいないことに対する寂しさ

          手に残るものがあるならば

          ある男の手記、あるいは遺言状

          お題:午時葵 とある記者の命がけの正義の物語  スクープを掴んだ。前からきな臭い政治家だとは思っていたが、前の戦争を手動した政治家の親戚筋らしい。親戚筋だからって戦争をするなんて馬鹿げたことだと思っていた一週間前が羨ましいくらいだ。  政界のドンと言える人間が何を世迷言を言っているのだろうと思う。正直なところ。今年で八十だったか、良くまぁそこまでご健康でいられるものだ。食ってるもんが良いのかもな。国民から吸い取った金でブクブク太りやがる。  問題は、このドンだけじゃない。今

          ある男の手記、あるいは遺言状

          迷子の子守歌

          お題:Nothing can bring you a peace but yourself.――「キミ以外にキミに平和をもたらすものはないんだよ。」 群像劇の一つのお話、とある精神科医と引きこもり少年の日々。 少年が育ったのは、両親だけでなく医師や周りの人々の関わりがあってのものだったのでしょう。  あの少年と初めて会ったのは、私が医師となったばかりの頃でした。無事に学校も実習も終えて医師となったものの現場経験がまるで足りず、毎日毎日先輩の先生の後について回る日々でした。

          迷子の子守歌

          ぶどうの実

          お題:柘榴石 娘が彼氏を連れてくるのを前に倉庫からあるものを探す父親。 ものと一緒に仕舞い込んだ記憶。  倉庫の中で眠っているはずの木箱を探している。一歩踏み出す度に舞い上がる埃に辟易する。掃除をさぼったのはあなたでしょう、と妻に言われると何も言えなくなってしまう。倉庫に入る前に、天井にある明り取りの窓を先に綺麗にしておいて正解だった。窓から入る光がなければきっと手元すらも暗くて見えなかっただろう。  入ってきた光を埃が反射する。キラキラして綺麗といったのは娘だったか、息子

          ぶどうの実

          Nightfall moon

          お題:夕月夜 戦争の後、復旧が進んだ街の事。服を考える女性と建物を考える男性の出会い  その人を初めて見たのは、店の窓の向こうからでした。雨がしとしとと降る中で、傘を差して立っている姿が印象的でした。暗い青色の傘を差して店の前に立っているかと思えば、思い出したかのように足早に立ち去っていくのです。  私と同じく店で働いている子は、その男性を訝しがるよりも、恋人へのプレゼントを探しているのかしら? それとも奥さん? と想像力を働かせておしゃべりしています。店では女性ものの服や

          Nightfall moon

          足跡と墓標

          お題:何が続いていくかなんて ぼくにはどうでもいいんだよ 群像劇の一幕、ある傭兵の最後の仕事 殺害描写多数、惨殺していくシーンが続きますので苦手な方は閲覧をお控え願います。特別グロテスクな描写はないです。  傭兵としてこの20年間生きてきた。ある時は後ろ暗い奴らの用心棒、ある時は貴族お抱えの私兵だ。一番最初に殺したのは10歳の時だ。殺したのは家に押し入ってきたコソ泥崩れ、なぜ殺したのかは覚えていない。ただ、ぶっさした包丁の鈍い光と手についた気持ちの悪いぬるりとした感覚だけは

          足跡と墓標

          泡沫でも幸せを

          テーマ:水泡 群像劇のようなお話が進んで行きます。とある科学者夫妻のお話 ボロボロになってから立ち上がり幸せになった人達  祝福の声と色とりどりの花が咲き乱れている今日は、本当に喜ばしい日です。一人息子の結婚式はここまで嬉しいものだとは二十年程前には思いもしませんでした。  緊張した息子の顔を見たのは久しぶりです。ここまで緊張した顔をしたのは大学試験の結果発表の時かしら?そんな息子の隣には、栗毛色の可愛らしい娘さん。今日から、私達の娘でもあるのかと思うと、むずがゆくなるよう

          泡沫でも幸せを

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          テーマ:僕の信じる神は僕を儚いとは言わなかった 群像劇のようなお話が進んで行きます。とある牧師のお話 絶望の淵に立ちながら人々に助けられ、また助けた人  教会はボロボロになってしまった。何度も立った説教壇はなくなり、それがあった場所には朽ちた木の残骸が積みあがっている。ステンドグラスは一部を除いて砕けている。教会一番の自慢だった聖母マリアの顔を跡形もなく崩れ去って、窓枠にステンドグラスの一部が残っているだけだ。  天井を見上げると空が見える。ぽっかりと空いた穴から見える空は

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          青空教室と白い鳩

          テーマ:若葉色 群像劇のようなお話が進んで行きます。とある孤児院のお話 どんな立場の人でも少なからず傷ついているのです。  片田舎の小さな領地を持つ地主の娘、それが私でした。  昔から外を走って回るのが大好きで、父には笑いながら「社交界には間違っても出せない」と言われました。母は弟を産んですぐ儚くなりましたが、寂しくはありませんでした。  幸いにも私には思慮深い兄がいましたし、狩りが得意な弟もいました、そして、どこか浮世離れしたー姉妹という贔屓目をなしにしても美人な!ー姉

          青空教室と白い鳩

          全てを僕が背負うから

          テーマ:まっすぐこちらを見つめる君の目がぼくなんて見てなかったとしても 群像劇の一幕 戦争描写、威圧的態度の描写あり  僕が君と出会ったのは、まだ冷たい風が吹いている時期だった。雪は少しずつ溶けて、緑が鮮やかな季節がすぐそこまで近づいていた。その時、僕は25歳。君は16歳だった。  僕は政治家である父の手伝いをしながら、役人として少しずつ仕事を覚える生活を始めて1年経った。慣れない仕事と毎日のように行われる社交界の付き合いに少し疲れが出始めていた。それでも、小さい頃から追い

          全てを僕が背負うから