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Drinkを一杯

私は今、友人3人と飲みに来ています。仮にコーラさん、ジンジャーさん、烏龍さんとしましょうか。私はアセロラにでもしていてください。
 さて、私は飲み物を飲むのが遅いのですが、私が最初に頼んだグラスの半分を飲むまでの間にいったい何があったというのでしょう。
 ジンジャーさんが早々に酔いつぶれるのはいつものことですが、今日は烏龍さんまで酔いつぶれてしまいました。そして、やたらと私にジンジャーさんの名前を呼びながらすり寄ってきます。正直、うざい。
「烏龍さん、私はアセロラです。ジンジャーさんはあっちですよ」
 親切にも声をおかけしたんですが、唸るだけで私の腰に腕を回してきました。そのうちセクハラで訴えてやろうか、この男。
 なかなかに私の烏龍さんに対する扱いが酷いように感じられるでしょうか。いえ、烏龍さんもいつもはこんな人ではないのですよ。いつもの烏龍さんは気遣いができる人で、皆に頼られる人です。ジンジャーさんは騒がしい人、ムードメーカーで皆に愛されるキャラです。コーラさんは無口な人、でも優しい人です。基本はジンジャーさんの隣にいてジンジャーさんができないことをサポートしています。
 飲みに行くと、真っ先に酔うのがジンジャーさん。飲みすぎないように止めにかかるのが烏龍さんです。その時、コーラさんは何もしません。黙々と注文した料理を食べながらジンジャーさんの様子を見ています。ジンジャーさんが完全に酔いつぶれたときはコーラさんがジンジャーさんを背負って帰ります。
 烏龍さんがジンジャーさんの家より自分の家の方が近いからジンジャーさんを家に泊めると言ったことがありましたが、コーラさんがぶっきらぼうに断りを入れていました。その時の烏龍さんの残念そうな顔は今でも思い出せますね。非常に面白かったです。私こんな3人の様子を見ているのがとても、とても楽しいのです。
 さて、今の状況を整理してみましょう。居るのは、私とコーラさん、ジンジャーさん、烏龍さんです。
 内、酔いつぶれているのがジンジャーさん烏龍さん。
 料理を楽しみつつ飲み続けているのがコーラさん。そして未だに一杯目のアセロラサワーが飲み切れない私です。コーラさんの隣でジンジャーさんが寝ています。コーラさんがたまにトントンと背を叩きあやしています。私の隣には先ほどまで腰に手を回していた烏龍さんが伸びています。上体を起こして、寄りかかりながらジンジャーさんの名前を呼んだので、流石にうざくなりまして、エルボー、裏拳、ひじ打ちの3連打を入れたら伸びてしまいました。どうしましょう、これ。
「コーラさん、これどうしましょう」
「ほっとけ、そのうち起きるだろ」
 コーラさんが箸を伸ばすのはスモークサーモンのおつまみです。美味しそう。そう思ってみていると、私が届く距離にお皿を移動してくれました。ありがたいですね。コーラさんとのなりで寝そべっているジンジャーさんはうにゃうにゃ何か言っています。
「やはりこうなってしまいますね。烏龍さんがつぶれたのは想定外でしたけど」
「あいつが、こっちに来なくて助かった。あいつジンジャーに纏わり付くとうるさいからな」
「私が被害にあっているんですが?」
「綺麗に落としたな。見事な3コンボだ」
「あなたも酔ってきてますね?」
「久々に飲んでるからな」
 いつもよりコーラさんの口数が多いです。コーラさんの笑顔なんてそうそう拝めませんが、今回は拝めましたね。
 いつもこれくらい笑っていれば女子勢から相当モテたでしょうに。残念な人ですね。
 私の飲み物は大体3分の2以上飲みました。先ほど烏龍さんが目覚めまして、私にジンジャーさんがいかに可愛らしいか話し始めました。はいはい、と流していますが、さっきから同じことしか言っていません。酔っぱらいの会話って難しいですね。そうしていると烏龍さんが倒れて寝始めました。
 忙しい人です。普段はあんなにしっかりしているのに。
「どうします?そろそろお開きにします?」
「……そうだな」
お開きにするかどうか聞いて、その返答がこうなのにコーラさんはなぜかラストオーダーの時間ぎりぎりで注文を入れました。どっちなんですか?私は何とか飲み物を飲み切りました。やれやれ、もう少し、この飲み会も続きそうですね。
「すいません、アセロラサワーも一つお願いします。」
 まぁ、楽しいので困りませんが。

初出:2015.06.20
修正:2022.05.22


サイトに掲載しているもの。大学2年生で誕生日の都合上まだ飲酒できない時期に書きました。
私自身はアセロラ系よりもカシス系が好きです。

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