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在学中からNFTアート制作、個人発の成功例「META KAWAII」ファウンダーにインタビュー

こんにちは、クリエイターのためのお金やキャリア、テクノロジーの事例を紹介する媒体・クリエイターエコノミーラボです。

今回は、最近は見聞きすることも増えた「NFT」がテーマのインタビュー企画です。

「よく分からない」「なんだか怪しい」という印象を持たれることも多いですが、NFTによって今までにない形でコンテンツを作り、お金を得ているクリエイターさんの事例は増えています。

この記事では、NFTコレクション「META KAWAII」(メタカワイイ)を運営するMeta Kawai(メタカワイ)さんにインタビューを実施しました。

メタカワイイは、最大手のNFTマーケットプレイス・OpenSeaによれば、1000人以上が保有しており、流通総額が298ETH(※記事執筆時点でのレートで7500万円以上)のNFTコレクションです。

メタカワイイは昨年8月にリリースされ、約3000点のNFTの完売を達成しました。2021年10月に制作が始まった当時、メタカワイさんはまだ学生だったそうです。

現在も企業勤務と並行して同コレクションを運営しているメタカワイさんに、これまでどのような道のりを歩んできたのか伺いました。

メディアアート制作、アプリデザイナーを経てNFTの道へ

——NFT作品を作ることになったのは、どのような流れだったのでしょうか?

メタカワイ:僕がNFT作品に取り組み始めたのは、ちょうどNFTが盛り上がり始めた頃で、一昨年の9月頃です。

その後は大学を卒業して株式会社リクルートに入社し、本業をこなしつつNFT作品を作ってきました。

——NFT作品に興味を持ったきっかけは何でしたか?

メタカワイ:3DCGを勉強していた頃、RTFKT(アーティファクト)というNFTブランドのクリエイティブに衝撃を受けたのがきっかけです。

——学生時代に3DCGを学習されていたんですね。

メタカワイ:3DCGは趣味の一つとして楽しんでいたのですが、将来的に作品を出したいという思いはありました。

——NFTプロジェクトに取り組む以前は、どのような活動をされていたのでしょうか?

メタカワイ:学生時代にはメディアアートの作品を作ったり、趣味で3DCGを楽しんだりといった創作活動をしていました。

表現活動が好きで、さまざまな制作手法で作品をつくってましたね。

——大学でそういった分野について学ばれていたのですか?

メタカワイ:はい、学んでいました。大学がITやアートなどに強い慶應SFCというところだったので、その影響もあると思います。

——では、アートなどのクリエイティブな領域について学ぶために進学されたのでしょうか。

メタカワイ:はい。SFCに入学したのは、高校生のときに通っていたアプリ制作スクールで、デザインをするのが楽しかったからです。

それから入学後、アートやメディアアートの領域の楽しさにもハマっていきました。

イルミネーション系の作品がとても好きで、分かりやすく言うと、チームラボのような光やプロジェクションマッピングを使った作品に興味があり、例えばスマートイルミネーション横浜というイベントに応募して、作品を展示したりしていました。

その後、「ピカブル」というアプリの立ち上げにデザイナーとして関わっていった感じです。

——作品制作を経て、アプリ制作に戻ってきたわけですね。

メタカワイ:当時、メディアアート作品やその他の制作物を作る過程で、基本的に収益がゼロでありながら、制作費だけがどんどんかかる状況になっていました。

具体的な数字は覚えていませんが、確か50万から100万円程度の赤字が出ていたと思います。

主にアルバイトで稼いだお金で工面していたんですが、これは大学生にとっては大きな負担でした。

そういった状況の中、お金と向き合わずにものづくりを続けるのは難しいと感じるようになったんです。

そこで、ものづくりを続けるために、ビジネスモデルの勉強もしようと考え、高校時代以来のアプリ制作に取り組むことにしたんです。

そして、その経験をもとに、昨年4月にリクルートに入社しました。

——すごく幅広い経験をされていますね。

メタカワイ:はい。アプリ開発の経験によって、ビジネスモデルのことだけでなく、ユーザー目線でのものづくりも鍛えることができました。

自己表現をするためのアートと、ユーザー目線でつくるデザイン両方やっていく中で、バランス感覚を身につけられた気がします。

また、メタカワイイのWebサイトやTwitterで投稿するコンテンツのデザインをする際も、デザイナーとして身につけたスキルが役立ちました。

META KAWAII公式サイト

10ヶ月間、プロセスを公開しながらNFT制作

——NFTを始めるにあたって、どのように進めていかれたのですか?

メタカワイ:RTFKTをベンチマークにしていたので、3DCGを使ってNFT作品を作ることに決めました。

——メタカワイイの3000点のNFTは、全てご自身で作成されたのですよね。

メタカワイ:一部パーツをお手伝いいただいた箇所もありますが、基本的には自分が作成しています。

またジェネラティブという制作手法を用いて、3000体を1体ずつオリジナルで制作わけではなくたくさんのパーツを作り、それらを組み合わせて3000点のNFTを作りました。

僕の場合は一昨年の10月頃に活動を始め、実際にリリースできたのが去年の8月です。なので、取り掛かってからおおよそ10ヶ月くらいかかりました。


——それほど長い期間、結果が出るか分からないまま、黙々と作品を作り続けるのは、すごく大変だったんじゃないかと思います。

メタカワイ:確かに大変だったこともありましたが、制作過程の10ヶ月間、作品を楽しみにしてくれる人のリプライやコメントで応援してもらえることが制作のモチベーションにつながっていたので、楽しく制作することができました。

またこれだけ応援してくれる人がいるのだから、いいものを作りたいなという気持ちでした。

——SNSでのフォロワーの方々による応援が力になったわけですね。

メタカワイ:はい、その通りです。またありがたいことにNFTを始める前はフォロワーは1000人くらいしかいなかったのですが、制作過程を公開しながらリリースに向けて進めていく中でおよそ1万人まで増え、多くの人に作品を見ていただけました。

——フォロワーの方々は、NFTユーザーの方が多いのでしょうか。

メタカワイ:アカウントを作ったのがこのプロジェクトの立ち上げ時なので、ほとんどがWeb3やNFT界隈の方だと思います。

——制作過程を発信している中で、特に注目が集まったタイミングなどはありましたか?

メタカワイ:ありがたいことに、立ち上げ当初から多くの方に作品を見ていただけたと感じています。NFT業界が盛り上がっていたタイミングだったので、注目してもらいやすい状況でした。

また、当時はNFTを作る人のほとんどがイラストレーターだったのですが、僕のように3DCGでNFTを作るというのは国内では珍しかったので、そういう意味で目立ちやすかったんだと思います。

——リリースした際の反応はどのようなものでしたか?

メタカワイ:リリースしたタイミングは正直、NFTの市場環境があまりよくなくて、滑り出しは好調とは言えないものでした。

メタカワイイは販売開始から数時間くらいかけて完売したんですが、当時のプロジェクトは、発売から1分以内に全部売れるような感じだったので、相対的には苦戦したプロジェクトになります。

とはいえ、完売に至らないプロジェクトも多い市況の中、完売できてよかったです。

NFTはプレセールで約2000点を販売し、残りの約1000点をパブリックセールで販売しました。

メタカワイ:販売に苦戦したことは、今振り返ると良かったなと思っています。

なぜならミント(※NFTを購入すること)が進む様子をコミュニティの皆さんと共有できたからです。

当時のコミュニティでは、在庫がどんどん減っていく様子を盛り上がりながらコメントで応援してくれる方もいて、感動したのを覚えています。

苦戦したからこそ達成感があり、コミュニティのつながりが強まったと思います。

——メタカワイイのコミュニティについてはいつから運営されていたんですか?

メタカワイ:リリースする前から運営していました。Twitterだけでなく、コミュニティでも事前情報を発信しながら、リリースを待ってくださっている人たちとコミュニケーションを取っていた感じです。

作品づくり、コミュニティ運営、マーケティングの三本柱が重要

——自分で作品を制作しながら売り方を考えたり、コミュニティ運営を行ったりするのって、すごく大変そうに思います。

メタカワイ:コミュニティ運営に関しては、モデレーターという役割の方がおり、当時3名ほどがかなり手伝ってくれました。

また、セールスの戦略に関しても知見のある方から色々と教えていただいたりしました。

——では、TwitterやDiscordで知り合った方と協力していたんですね。

メタカワイ:そうです。最初は一人で始めたんですが、気づけば多くの人が集まってくれました。

メタカワイイの活動に共感してくれた方がチームに入ってくれた感じで、いわゆるDAO(※分散型自律組織)っぽい組織の立ち上がり方でした。

——ちなみに、少し聞きづらいのですが、積極的に手伝っている人には報酬や委託の形で支払いをしているのでしょうか。

メタカワイ:はい、運営メンバーに関しては、もちろん報酬をお支払いさせていただいてます。

メタカワイイの売上の一部をレベニューシェアしたり、フリーミント権を付与させていただいたりしました。

仕事として正式に依頼する場合は、人によっては累計で300万円くらいの報酬をETHでお支払いさせていただいた方もいらっしゃいます。

もちろん、役割によって金額は異なりますし、全員に同じ金額を支払っているわけではありません。それぞれの人に対して、相談しながら報酬をお支払いしています。

NFTに関する報酬設計に関してはあまり情報が共有されていないので、こういった場だからこそはっきりと公表しておくべきだと思い、回答させていただきました。

——確かに、新しい業界ですし、具体的な報酬額はあまり分かりませんよね。

メタカワイ:そうなんです。正直、僕も報酬設計に関してはかなり悩みました。

特にNFTのモデレーターの報酬設定についての情報が全くなくて、すごく迷ったのを覚えています。

だからこそ、META KAWAIIの事例が何か参考になればと思い、報酬設計に関して具体の数字を交えてお話しさせていただきました。

——クリエイターとしてNFTを売る際に、「こういうスキルを持った人がいないと大変だ」という意見はありますか?

メタカワイ:まず、クリエイティブがイケていることが前提条件になります。その上で、コミュニティ運営が非常に重要です。

また、マーケティングも重要で、アローリスト(※NFTの優先購入権)の配布や価格設定、発行部数などの細かい調整が必要です。そういった戦略を立てる人も非常に重要だと思います。

アローリストの配布方法など、外から見ても分かる部分はいろんなプロジェクトを参考にしつつ、具体的な販売戦略については詳しい人に相談していました。

NFT以外の価値提供で、IPとして展開

——メタカワイイはリリース後にも、さまざまな展開がされているようですね。

メタカワイ:はい。完売後も作品制作は続けていて、現在は鷹の爪団とのコラボNFTを制作しています。

メタカワイ:現在はNFTクリエイターやYouTuber、ブランドやアニメ等とのコラボを通じて、認知度を高めていくことに力を入れています。

また、NFT以外の部分でも、フィギュア制作やアパレルなどの事業を進めていて、ブランドとして展開していく予定です。

——NFT以外の分野にも幅広く展開されている理由について教えていただけますか?

メタカワイ:現時点では、Web3やNFTに興味を持っている人が少ないからです。

そのため他の分野でも活動し、もっと多くの人に知ってもらいたいという考えがあります。

また現状ではNFTというだけで敬遠されることがあったり、不審に思われることも正直多いです。

そこで、フィギュアやアパレルのように馴染みのあるものを入り口とし、まずはメタカワイイの世界観やキャラクター、ブランドを知ってもらう。

その後にNFTプロジェクトとして始まったことを知ってもらう流れのほうが、可能性が高いのではと考えていて、その方向性で取り組んでいます。

——単なるNFTプロジェクトではなく、ブランドとして拡大していきたい意図があるのですね。

メタカワイ:NFTはあくまで手段だと思うので、NFTだけにとらわれずブランドとして面白い取り組みをたくさんやっていきたいと思っています。

——なるほど、NFT以外のプロジェクトでの反応はどのような感じなのでしょうか。

メタカワイ:正直、苦戦している部分はあります。特にアパレルのほうは、なかなかうまくいっていません。

Web3に興味がある方の多くはNFTが欲しい方やテクノロジーが好きな方が多いので、そういった方々にアパレルを手に取っていただくのは難しいと感じています。

これから試行錯誤をして、いろんな可能性を模索していこうと思います。

——今後の展開について、ほかに考えていることはありますか?

メタカワイ:NFTやWeb3のおもしろさをもっと多くの人に知ってもらいたいと考えています。

メタカワイイのアパレルもそうですが、NFTを知らない層に僕たちの世界観やブランドを知ってもらい、そこからNFTの魅力を知ってもらったり、手に取ってもらったりすることが、一つの目標です。

——Web3的な価値観の、どういった部分に面白さを感じているのでしょうか?

メタカワイ:いくつかあると思いますが、一つは非中央集権的な思想で、ユーザー主体で創り上げる世界観は面白いと感じています

また、NFTを用いた報酬設計にも面白さを感じています。メタカワイイが人気になるほどメタカワイイの価値が上がりやすくなり、応援してくれた人たちが持つNFTの価値が上がることになります。

これにより、プロジェクトが成功した際に適切に還元されることも魅力的だと思っています。

今のWeb3業界は黎明期でカオスな状態ではありますが、根本にある世界観や価値観には将来性を感じているので、未来を見据えて、焦らずに着実に進めていきたいと思っています。

ということで、メタカワイさんのインタビューでした。

NFTというよく分からないものについて、クリエイターさんが理解する上での一助になれば幸いです。

さいごに

話を聞いた人

Meta Kawai 「META KAWAII」(メタカワイイ)CEO兼NFTクリエイター。2022年4月にリクルートへ新卒入社。現在はWeb3企業で働きながら、META KAWAIIも運営している。

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