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「ファンからの支援のおかげで、毎日描けている」会社を辞めて半年、“ゆとり世代あるある”漫画で人気の福田ナオさん

“ゆとり世代”のネットユーザーなら思わず共感してしまうあるあるネタをテーマにした1ページ漫画を、毎日Twitterに投稿している福田ナオさん。

主に、福田さん自身が好きなオタク趣味に関するネタを描き、同世代の人たちに向けて発信。約半年で、3万人近くからフォローされたそうです。

今年3月に会社を辞め、Twitterでの発信に集中して以降は、それまで以上に多くの人に読んでもらえるようになったそうですが、発信と創作、課金コンテンツの制作のバランスに悩むこともあるそうです。

漫画を読んでもらうために工夫したことや、ファンからの支えに対する思いなどを、インタビューで伺いました。

福田ナオ
Twitterユーザー。1995年生まれ。2019年2月より「福田ナオ」名義でVTuberとして発信を開始する。2020年8月にはTwitterで絵の練習用アカウント「福田ナオ絵」を開設し、1ページ漫画が人気を博す。

「凡人だけどネットでウケたい」“ゆとり世代”向け漫画を描く理由

ーー福田さんは、主に同世代のオタク趣味を持つ人が共感できるような1ページ漫画を毎日投稿されています。なぜこの活動を始めたんですか?

福田:「ネットでウケたい」という欲望だけで始めたんですが、自分にとってそれを達成しやすい方法がTwitterの1ページ漫画だったんです。

インターネットって本当にいろんな人がいて、すごく面白い発想をする人や、とんでもない変人がいたりするわけですが、私は本当にただの凡人で……。

そうなると、私がネットの人たちに面白がってもらえるようなネタって、自分の好きなコンテンツくらいしかないんじゃないかと、Twitterで絵を投稿するうちに気づいたんです。

それに、私が知る限りでは、同世代でこういう活動をしている人って、まだ少ないと思っていて。

ーーそれは、どういう点がでしょう?

福田:私はゆとり世代の人間なんですが、自分たちが学生の頃って、ニコニコ動画のような、オタクが見ているコンテンツを「好きだ」と言うのって、ちょっと恥ずかしいような空気があったんです。

でも、それは私たちにとって間違いなく楽しかった思い出で、「あの頃はすごく楽しかったし、その思い出が今の人生を楽しくしてくれているよね」って言う人がいてもいいんじゃないかって思うんですよね。

例えば、漫画家の山本さほさんや押切蓮介さんは、“ゆとり”より上の世代の人たちにとっての楽しい思い出である「レトロゲーム」をテーマに作品を描かれています。

同じように、「あの頃のフラッシュ動画やニコニコ動画って楽しかったよね」と伝えるような漫画を描くことは、他の人がまだあまりやっておらず、その上で自分がやれることだなと思ったんです。

ウケるかどうか以前に、自分が好きで描きたいものなのは間違いないし、その好きな気持ちを理解してくれる人はたくさんいるだろうから、見てもらえるんじゃないかと。

会社を辞め、Twitter漫画に本腰

ーーご自身に描けるものを毎日探して描く中で、今のようなテーマにたどり着いたんですね。

福田:まさにそうだと思います。Twitterで毎日投稿をしていないと、今のような漫画の描き方にはなっていないんじゃないかな。

最初からTwitter漫画を上げていたわけでもなくて。福田ナオとしての活動を始めたのは2019年2月なんですが、そのときはYouTubeで動画を投稿していました。

福田さんが発信を始めた当時YouTubeでアップしていた動画

福田:当時は会社員だったんですが、仕事が暇で時間が余っていたから始めてみたんです。でも、途中から仕事がすごく忙しくなって、投稿する余裕がなくなってしまって。

それで、「このままではいけない、何か作りたい」と思って、動画よりは気軽に取り組めるイラストの投稿をしていこうと、まずは絵の練習用のTwitterサブアカウントである「福田ナオ絵」を立ち上げ、絵の毎日投稿を開始したんです。

最初はこのアカウントには練習として描くラフな絵をアップするだけのつもりで、きちんと描いた作品をメインアカウントの「福田ナオ」にアップしていく予定でした。

でも、サッと描いたネタ絵やレポ漫画が思いのほか読まれるようになって、「これを楽しんでもらえるなら頑張ってみよう」と方針を変えていきました。

ーーそうだったんですね。今、会社員としてのお仕事は?

福田:実は今年3月に退職していて。仕事もネットのエンタメに関するもので、やりたいことの延長線上だったんですけど、組織の中で働くのってすごく難しくて……。

割り切って働いていた面もあったんですけど、日本中で話題になっているようなコンテンツを会社の偉い人が知らなかったりして、そういう環境も辛かったです。

3年働いたんですが、ストレスに耐えられなくなっちゃったので、辞めました。

ーー少し踏み込んだ質問になりますが、そうすると、今はどうやって生活されているんですか?

福田:お恥ずかしながら、仕事が嫌になったから何も考えずに退職して、人生どうでもよくなって「せめてインターネットに爪痕を残してから死ぬか~」とTwitter漫画を頑張り始めただけなんですよね。

だから今は、かつて馬車馬のように働いていたときの貯金を切り崩して、たまにアルバイトをしたりしながら生活している状態です。

そろそろお金の問題へ真剣に向き合わなきゃいけない時期だと思っています。

こんな状態では、他のクリエイターさんの参考になるような話はできなそうで、取材を受けていること自体恐れ多い気持ちもあるんですが……。

ーーいえ、多くのクリエイターさんにとってすごく参考になるお話だと思います。今のところ、Twitter漫画の発信活動から仕事につながってはいないんでしょうか?

福田:一回だけ、アダルトグッズのPR案件を受けたことがあります。

当時はアダルトな話題なども気にせず話すアカウントだったので、活動内容的にも違和感はないからやってみようと、レポ漫画を描きました。

けれど今の「福田ナオ絵」の漫画は、誰もが安心して見れるような作品にしたいから、アダルトな話題はあまり出さない方針にしていて。

もちろんアダルトな作品を否定するつもりは一切なく、私の場合はそういう方針に決めたというだけです。

その後も同じようなPR案件の依頼自体は来ているので、それを受ければ日銭を稼ぐことはできると思うんですけど……受けていないです。

ーー仕事自体はあっても、必ずしもそれが、福田さんがコンテンツを届けたい人に求められているものではないということですね。

「踏み出して良かった」ファンからの課金支援

ーー福田さんは、ファンからお金を支援してもらえるサービス「pixivFANBOX」を使っていらっしゃいます。そこで受けている支援の話もお聞きしたいです。

pixivFANBOXでは、月額300円支払ってくれた支援者に向けて、限定の漫画や日記などを投稿。支援者になるには、記事下のURLへ

福田:pixivFANBOXは2021年8月から始めました。始める前は「結局お金が欲しいだけなんですか?」みたいに言われる怖さがすごくあって……。結局は杞憂だったんですが。

仕事をやめたときから、収入源があった方がいいとはずっと思っていて、一刻も早く始めた方がいいのは分かってたんですけど、なかなか始められませんでした。

でもアカウントを開設してみると、支援してくれる優しい人がいただけで、支援を受けようとすることに対して何か言ってくる人もいませんでした。

支援してもらえるのはすごく嬉しかったし、改めて、始めて良かったなと思っています。

ーーネットでは嫌儲のカルチャーが根付いていますから、福田さんのように一歩踏み出すのを怖れてしまうクリエイターさんは多いように思います。その後、支援はどれくらい集まったのでしょう?

福田:最初の1ヶ月は10,000円くらいだったと思います。具体的な金額は言いませんが、今はそのときよりも増えています。

私は家でまったく作業ができない人間で、何かするには喫茶店に行かないといけないんですが、支援いただいたお金でその費用をまかなっています。

毎日漫画を描くとなると、毎日喫茶店に行かないといけないので、なるべく安いお店を選んだとしてもそれなりにお金がかかってしまうんですが、支援のおかげで通うことができています。

今となっては支援のおかげで毎日漫画を描けているような状態で、本当にありがたいですね。

暗い自分を見せても、応援してもらえる

ーー素敵な話です。福田さんの場合、どういうときに支援されることが多いですか?

福田:Twitterで大きくバズる漫画を描いたときよりも、個人的な心情を吐露するような漫画を描いたときの方が、支援していただくことが多い印象があります。

TwitterでいいねやRTをしてもらえるタイミングと、私個人を応援したいと思ってもらえるタイミングって、どうやら違うみたいなんですよね。

「福田ナオ絵」のアカウントでは、基本的にみんなが共感してくれるような明るいネタを載せていて、それはもちろん楽しんでもらいたいからなんですが、一方で自分の少し暗い一面を見せるのが怖くて、明るいネタで塗り固めていたような部分もあるんです。

けれど、そういう一面を見せてこそ応援してくれる人も実はいて……pixivFANBOXを始めて、素の私に興味を持ち、応援してくれる人がいるんだと知れました。

お金がどうかという話だけでなく、自分が今の活動を続ける上でとてもありがたい出来事で、励みになっています。

ーー素の自分を応援してもらえる嬉しさも、活動の原動力になっているんですね。福田さんのpixivFANBOXのトップページに書かれている文章、ご自身のことを伝えるのがとても上手く、思わず応援したくなる内容ですが、これはどういう意図で書かれたんですか?

福田さんのpixivFANBOXトップページには、本人の来歴とやりたいことがつづられている

福田:これはクラウドファンディングを参考にして書いたんですよね。

それは、お金をもらうためとかではなく、支援してくれるような人には、自分がどんな人間で何をやりたいのかをしっかり伝えないといけないなと思って書きました。

やっぱり、福田ナオ絵の漫画を見た人には、楽しい気持ちになって帰ってもらいたいから、Twitterで暗い話題はなかなか書けなくて。

でも、Twitterで私という個人に興味を持って、pixivFANBOXのURLをクリックしてくれた人に対しては、自分のことを丁寧に伝え、その上でもしよかったら支援してもらえると嬉しいと言ってもいいんじゃないかなと。

少しでも楽しさを伝えられたら

ーーどこまでも、漫画の読んでくれる人のことを第一に考えていらっしゃいますね。福田さんは現状、創作活動だけで生活は成り立っていないということでしたが、今後の活動について考えていることはありますか?

福田:なんでしょうね……。できる限り、この活動は続けたいと思っています。ものを作る人として、それを受け取った人がすごく楽しい気持ちになれるものをこれからも作りたい。

人って、辛いことがあったとしても、何か楽しいもの、面白いものを見つけられれば、その一瞬は救われるんじゃないかと思っていて。私の場合、それを初めて感じたのって、ネットで面白いゲーム実況を見たときで。

自分も一瞬でもいいから、誰かの救いと言ったらおこがましいですけれど、少しでも楽しさを伝えられたらいいなと思うんです。

そういう何かを届けられるように、福田ナオ絵や、Twitterの枠を飛び越えた場所でも、活動を続けたいです。

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pixivFANBOXで福田ナオさんの支援者になるにはこちらから。

https://naofukuda.fanbox.cc/

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