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漫画は世界展開が前提になっていく? 少年ジャンプ+編集部が見据える未来

こんにちは、クリエイターのためのお金やキャリア、テクノロジーの事例について紹介する媒体「クリエイターエコノミーラボ」編集部です。

今回は、少年ジャンプ+編集部にご協力いただいての記事となります。

Web・アプリの漫画雑誌サービスとして、「ジャンプを超える」ことを掲げ、創刊から約8年の間、運営されてきた少年ジャンプ+。

編集部ではよりクリエイターの活躍の場を広げるため、積極的に新しいWebサービスを開発しており、そのための企画「ジャンプアプリ開発コンテスト」(編注:応募期限は9月16日。詳細は記事の最下部)が行われています。

その関連イベントとしてオンライン開催された「ジャンプのミライ2022」では、第一回として6月29日に、少年ジャンプ+編集長・細野修平さんと、同じく副編集長・籾山悠太さんによるアプリ開発者向けの講演が行われていたのですが……。

これが、クリエイターの人も読まないともったいないような、本当に面白くて濃い内容でした。そこで、クリエイターエコノミーラボで書き起こしのレポートを掲載いたします。

前後編の2記事構成でお届けする本レポート、後編では、少年ジャンプ+と同時に開始された「ジャンプルーキー!」による新人発掘の仕組みと、海外でジャンプ作品の最新話を追えるという衝撃のサービス「MANGA Plus by SHUEISHA」を活用したこれからの海外展開について語っていただきました。

▼前編はこちら。

「ジャンプルーキー!」の狙いとは

籾山:ジャンプ+編集部では、「ジャンプルーキー!」という漫画の投稿プラットフォームをジャンプ+の創刊と同時にスタートさせました。

紙のマンガ雑誌の仕組みとかルールにはとらわれない、新しい今の時代だからこその仕組みとして「ジャンプルーキー!」を始めました。

このパートでは、そのルーキーの最新状況についてお話ししていきたいと思います。冒頭の「ジャンプとは何か」という私のパートで、ジャンプの持つ4つの機能の1つ目に、作家さんの発掘というのがあったと思います。

ジャンプルーキー!はまさに作家さんの発掘を持ち込みや漫画賞だけでなく、ジャンプとしてさらに強化したいと考えて始めたサービスです。

これまで編集者が漫画家さんと出会うのは、漫画賞や持ち込みがほとんどを占めてきました。 今も少年ジャンプは元気なんですが、それ以外の多くの漫画編集部では。時代の変化でその漫画雑誌媒体の訴求力が落ちており、その仕組みが昔ほど機能しなくなってきています。

籾山:先日もとある編集部で漫画賞の投稿が、この10年で半分以下くらいに減っているとか、おそらく漫画雑誌によっては漫画賞への投稿も持ち込みもほとんどないと、そういう編集部も実は最近は多いんじゃない かと思われます。

時代の変化によってそうなってしまったわけですが、逆にその時代の変化 、インターネットの時代であるということを活かし、新しい仕組みを作れないかと考えて、2014年にジャンプルーキー!を始めました。

以前は、多くの人に漫画を読んでもらうためには、基本的に商業誌に載せる必要があったと思うんですけど、それもあって、漫画編集部にたくさんの作家さんが集まってきてくれました。

僕たちはむしろ、その多くの人に漫画を読んでもらえる商業誌以外の新しい手段を、ジャンプが自ら用意して、それによって漫画家さんとの出会いの場所を作ったということになります。

最新の数字でみる「ジャンプルーキー!」

籾山:2014年にジャンプ+創刊から始まっているジャンプルーキー!ですが、どれぐらいの作家さんが ここで漫画を公開したのかだったり、作家さん発掘という仕組みとしての成果、つまりルーキー!の出身作家さんから新しい漫画をジャンプはどれぐらい生むことができたのかということについて ご紹介していきます。

まず、ジャンプルーキー!に毎月投稿されている作品数になります。投稿は大体、毎月500作品から1,000作品ぐらいが投稿されていまして、編集部ではすべての作品に目を通しています。

話数で言うとですね、大体月3,000か4,000くらいでありまして、累計の数字は、作品数だと5万作品、話数でいうと18万話を、この約7年半ぐらいで投稿していただいています。

籾山:これは最初に話した昔の持ち込みとか漫画賞と比べると、こちらのほうが多い数字になります。これら全部に目を通しているんです。

特に若手の編集者間では、漫画家さんの取り合いなんで、若手スタッフが少しでも早く読んで連絡しようとか、全部読んでみんなが見落としたのを取ってやるという感じですね。

次にジャンプルーキー!で私たちが出会った作家さんが、どれぐらいジャンプで連載したりデビューしたのかという数字をご紹介します。

ジャンプ+はまだ創刊して8年弱ぐらいなんですが、その中で70人もの連載作家さんがジャンプルーキー!出身となっています。

さらにジャンプグループと僕たちは言うんですが、「週刊少年ジャンプ」や「ジャンプ+」、月刊誌の「ジャンプSQ.」 、「最強ジャンプ」や増刊誌などでデビューを果たしている「ルーキー!」の出身作家さんは年々増え、今243人となっています。

昨年は1年で53名ですね。というふうに、新しい仕組みとして作ったジャンプルーキー!で、たくさんの作家さんと僕ら編集部員が出会い、そこから新しい作品をジャンプやジャンプ+で生み出すことができたということが、伝わるかなと思います。

籾山:そして先ほど細野からも話が出ましたが、ジャンプ+の最近の大ヒット作品『タコピーの原罪』という作品がありまして、その作者のタイザン5先生は、ジャンプルーキー!の出身作家です。

『タコピーの原罪』をご存知の方は多いと思いますが、2021年12月に連載を開始して、300万人以上の方が最新話を読んでくれて、単行本も大ヒットしているジャンプ+の作品です。

タイザン5先生は、2020年の9月、ジャンプルーキー!に『讃歌』という作品を投稿しています。

コメントを見ると、「昨年くらいに考えた話です」と書いてあるので、2019年ぐらいに描かれた漫画かもしれません。

今もこのまま読むことができますので、もしご興味ある方はジャンプルーキー!で読んでいただければと思います。

ルーキーでは、読み切りとか連載1話目を投稿すると、勝手に編集部員がルーキー賞という漫画賞を開催して、その対象になるんですけども。

タイザン5先生はこの参加で、編集部期待賞という賞を受賞しています。編集部の部員のコメントには、「読み手にストレスなく進む、SF展開と記憶に残る画面作りが印象的で、開始数ページで惹きつけられました。先生との自然で引き込まれるやり取りや、前に進む主人公の爽快さが丁寧に描かれていて良かったです。画力の研鑽は続けつつ、今後もオリジナリティ溢れる作品を期待しております。」ということで、賞を取り、ここで担当編集から連絡をして、担当に付きたいというふうになりました。

それが2020年9月ですね。 その後、2021年2月には早速ジャンプ+で読切『ヒーローコンプレックス』という作品を掲載しています。

また5ヶ月後には読み切り『キスしたい男』をジャンプ+で掲載してい ます。この2作もジャンプ+で今でも読むことができます。

その後、2021年12月には『タコピーの原罪』を連載デビューということで、大反響となりました。ルーキー!の投稿から大ヒット作品が生まれたという流れになっています。

担当編集者は、タイザン5先生の作品を読んですぐ連絡したわけですけれど、そのときの心境についてちょっと聞いてみました。

『讃歌』は非常にセンスあふれた作品だったと、そういった声をかけたと。それで、ジャンプ+掲載に向けて動きましたと、担当編集は言っていました。

籾山:そして、タイザン5先生の過去のインタビュー記事でもですね、ルーキー!に関する部分があったので、抜粋ですが紹介します。

ジャンプルーキー!に投稿した理由はですね、有名な投稿サイトだったのでなんとなくですと、ルーキー内で受賞するとすぐにジャンプ+で読み切りが描けることがありがたかった、というふうに答えられています。

籾山:特別ジャンプ+を目指していたわけではなくて、投稿サイトに漫画をあげようと思って有名そうなところを選んだと、そういうことだったわけですね。

つまり、僕らが漫画を描いたらまずは公開して、少しでもいろんな人に読んでほしいという作家さんの当たり前の気持ちを受け止める、そういう場所を、ジャンプルーキー!として始めていた。

それによって、このように才能ある作家さんとの出会いにつながり、結果的には『タコピーの原罪』が生まれたということになります。

ジャンプルーキー!のさらなる挑戦

籾山:最後にルーキーで最近やっている、挑戦というか新しい施策、少し古いものもあるんですが、ご紹介させていただきます。

昔の紙の漫画雑誌の仕組みにとらわれない今の時代だからこその企画を、ただ投稿サイトをやっているだけでなく、いくつかやっています。

一つはですね、広告収入を100%投稿している作家さんに還元しています。

これは2018年に始めた企画なんですが、普通、ジャンプルーキー!の成長を目標とするとき、例えば広告収入ですとか、課金機能がある場合はその売り上げですとか、そこが大きな目標となると思います。

ジャンプルーキー!はもともと才能ある新人作家さんの発掘、それに漫画家さんと読者を直接結ぶ、時代に沿った架け橋的な狙いから作ったサービスでした。

少しでも力がある作家さんに活用してもらって、多くの作家さんと僕たち編集部員が出会って、新しい作品づくりのお手伝いをしたいと、そういうことを主目的にしてやってきました。

なので、これも思い切って希望者にですね、広告料を100%お戻しするという方針にしたところ、矢印があるところで大きく変わっているのが分かると思うんですけど。投稿された話数の月ごとの棒グラフですね。

籾山:広告収益還元100%を開始して以降、2〜3倍に投稿が増えて、それを大きなきっかけとして多くの作家さんに投稿していただきました。

しかも、それがその瞬間だけでなく、ずっと今も続いているということで、効果的な施策でした。

次に紹介するのが、ジャンプ+の「インディーズ連載」という企画です。これは、ジャンプルーキー!上にある「連載争奪ランキング」という、毎月の読者の閲覧数だけで決まるランキング。

それで1位になると、ジャンプ+での連載権がもらえるという企画です。この連載枠は、普通の連載枠と異なり、編集部のネームチェックを通さずに、担当編集がつかずにジャンプ+で連載できることと、僕たちは読者数を人気を測る一番の指標と考えていますので、人気に応じて原稿料プラスアルファの部分が変動し、最大で1ページ2万円を作家さんにお支払いすると。

漫画家さんであれば、なんとなくこの感覚が分かっていただけるかなと思うんですけど。1ページ2万円というのは非常に、特に新人作家さんにとっては、とても大きい金額になります。

これらは、インターネットの時代で、個人で活動したいという作家さんも増えているということで、商業誌の仕組みだけにとらわれず、新しく始めた試みになります。

始めてからちょうど1年くらいになるんですけど、すでに毎話数十万人が読み、人気アンケートも上位に来ている『ラーメン赤猫』ですとか『ゴダイゴダイゴ』という人気作、ジャンプ+の主力作品が、このインディーズ連載から生まれています。

このジャンプルーキー!というサービスは、ご存知の方が多いと思いますが、はてなブログとかはてなブックマークのはてなさんに開発してもらってまして、編集部の狙いや要望を伝え、密にコミュニケーションしながら運営しています。

このように新しいアイデアや技術があるWebサービスを手がける開発会社さんと一緒に、僕たちは既存の漫画雑誌にない仕組みを作ることで、『タコピーの原罪』をはじめとする、いろんな人気漫画を生んできました、という話でした。

ジャンプルーキー!のパートは以上となります。ありがとうございました。

「MANGA Plus by SHUEISHA」とはどんなサービス?

籾山:本日の最後のパートですが、「MANGA Plus by SHUEISHA」の最新状況ということで、海外についての話をさせていただきます。

ジャンプ+編集部では、3年前から「MANGA Plus by SHUEISHA」という海外向けの漫画配信サービスを始めています。

こちら、日本では見られないのでどんなサービスかご存知でないという方が多いと思いますので、簡単な紹介を最初にしたいとおもいます。

特徴はですね、日本と同時に連載作品の最新話を更新しています。週刊少年ジャンプの作品で言えば、日本時間でいうと、基本的に月曜日の0時に公開しています。

また、多言語ですね。現在、作品にもよるんですが最大7言語で配信しています。

そして、全世界対象。これまでの時代は国ごとに許諾をしていくというやり方でした。しかし、現在では全世界でジャンプグループの漫画を読むことができます(一部の国は対象外です。)。

そして特徴の4つ目としては、編集部が直接運営していること。これも、海外の漫画の展開を編集部が直接手がけるということは、これまで出版社のなかではほとんどなかったことです。

配信している作品に関して言いますと、現在連載中のものでいうと『ONE PIECE』や『SPYxFAMILY』など、英語だと45作品くらい。

完結済みの作品も含めると100作品ぐらいを配信しています。

籾山:これがブラウザで開いた画面ですね。左のほうがトップ画面ですね。藤本先生の『さよなら絵梨』もありますが、読み切りも一部公開をしています。

右側が作品ごとの詳細な画面で、ちょっと小さくて見づらいかもしれませんが、右側の真ん中くらいに「AVAILABLE LANGUAGES」と書いてありまして、英語、スペイン語、読めないですがおそらくタイ語、ポルトガル語、インドネシア語、ロシア語かな。

この作品では6言語書いてあって、ここを押すと言語が切り替わるみたいな形になっています。

籾山:この画面左側が、実際の漫画のビューアのページですね。

『SPYxFAMILY』を表示していますが、セリフの中が英語になっているのが分かるかなと思います。

右側、ジャンプ+のようにコメント欄も用意しています。

籾山:海外で漫画を売るストア的なアプリということではなく、ジャンプ+と同様に新しい漫画の連載を読者に楽しんでもらおうという、漫画雑誌的なアプリ・Webサービスとして展開しています。

MANGA Plus by SHUEISHAの狙いとは?

籾山:MANGA Plus by SHUEISHAの狙いとは何なのかということを次にお話しします。

かつてインターネットがなかった時代は、各国の地域ごとに現地の出版社からオファーがありまして、その作品ごと、国ごとにライセンスの契約書を結び、その単行本が日本から遅れて出版されていました。例えば、日本では20巻まで出ていたら、国ごとに、この国では15巻が出て、別の国では3巻が出て、というふうに漫画の出版ビジネスは行われてきました。

まして、日本と同時に、海賊版を除いて、正規の場所でジャンプの最新話が読める場所は世界中であまりなかったんですね。

特に言語は限られていました。今は翻訳をすれば、インターネットを通じて世界中で比較的簡単に全世界の読者に漫画を公開することができます。

そこで、新しいヒット漫画を創出するための、今の時代に沿った仕組みとして、世界的に人気の漫画を生まれやすくしたいと、そういう考えで運営しています。

というのも昨今、海外でも漫画の市場は大きく拡大しています。一例を出しますと『ONE PIECE』の累計発行部数は昨年のデータですが国内で4億部以上、海外では9,000万部を突破していると聞いていまして、比率でいうと2割ぐらいが海外ということになります(イベント開催の6月29日時点)。

その時点でシェアとしては大きいと思うんですが、ここ数年、海外の単行本の売り上げが非常に増えていまして。

僕個人の予想ですが、10年後には5対5ぐらいになることもあるんじゃないかなと予想しています。

籾山:海外で漫画の売り上げが伸びている大きな理由として考えられるのが、一つはNetflixやCrunchyroll(クランチロール)みたいな動画配信サービスの普及によって、アニメ視聴の広がり、アニメの人気がここ数年、高まっているというのがあります。

日本と同時にアニメを見られる環境が、海外でも充実してきています。

実は昨年、すでにアニメのビジネスというのは、もう海外の市場のほうが、国内の市場より上回っていると、そういうニュースも出ています。

日本でも作品がアニメ化すると知名度が上がり、コミックスも売れたり、ジャンプ+の読者数も増えるわけですけれど、アニメ化を果たす上で、海外人気が重要だということを示しています。

つまり、漫画を国内を含めて売ることを考えても、海外市場の重要性が高まっているということです。

そんな時代に、私たちはジャンプを超えるということで、紙だけでなくデジタルでジャンプ+という挑戦をここ数年してきました。

さらに、国内のジャンプ+だけじゃなく、MANGA Plus by SHUEISHAを通じて、海外でも新作を生むシステムとして、その対象を紙、デジタル、海外と拡大していくことで、もっともっと新しくて面白い漫画をジャンプから届けたいというふうに考えました。

それが、MANGA Plus by SHUEISHAの狙いです。つまり、かつては国内のジャンプで生んだ人気漫画を海外にも輸出するというのが一般的な流れだったわけですが、今後はジャンプという仕組み自体を全世界を対象にし、さらに世界的にヒットする漫画を生み出したいということです。

漫画に限らず、先ほどのアニメ映像に関してもそうですし、音楽など、あらゆることがそうだと思いますが、いろんなエンターテインメントが、国境を超えていく、ボーダレスな時代になっていると思います。

作品を生み、読者とともに育て、ヒットしていくと、そういう漫画雑誌の役割を、世界を対象に、もっともっとジャンプできるんじゃないかと。

まだ始めたばかりのサービスなのですが、可能性と手応えを感じています。

最新の数字でみる「MANGA Plus by SHUEISHA」

籾山:そしてその手応えについて、どれだけの人が読んでいるのかや、どんな国の人が読んでいるのかみたいなことを次に紹介していきます。

マンスリーアクティブユーザーが最初の頃は50万人くらいだったんですが、この3年で約600万人ぐらいまで、右肩上がりで成長しています。

籾山:この数字はアプリとWebを足した数字なのですが、先ほど細野からお話ししたように、国内のジャンプ+も1,000万人を超えているというふうになっていまして。

国内と海外を足すと、1,600万人マンスリーアクティブユーザーを抱えるという、そういうメディアを、ジャンプ+として運営しているということになると思います。

国地域別では、ちょっと字が小さいかもしれませんが、こんな国で読まれているというのを紹介しますと、1位がアメリカですね。

2位がタイ、3位がインドネシア、4位がフランス、5位メキシコ、6位フィリピンと続いていきます。印象としては、東南アジアや中南米の読者が比較的多いと思います。

籾山:長らく、海外では漫画よりもアニメの人気が先だと、アニメ化して初めて原作としての漫画が売れると、かつては言われてきました。

しかし、MANGA Plusでこれだけたくさんの読者がいろんな国で、ジャンプの連載、ジャンプ+の連載を読んでいてくれているということで、だんだんかつての「アニメから漫画」という流れが変わってきているかもしれないという手応えを感じています。

例えば『SPYxFAMILY』ですと、MANGA Plusの連載で1話目から海外でも非常に人気がありまして、アニメどころか、日本でもまだ単行本が1巻も出ていないのに、海外でメディア化に関するお問い合わせがあったとか。

あとは『怪獣8号』ですと、フランスで1巻が初版部数が25万部でした。25万部って、非常に多いと思っています。

しかも、日本ではジャンプ+作品の単行本は400円から600円台のことが多いんですけど、フランスはもっともっと価格が高いんですね。それでも25万部だと。

そして、『ダンダダン』や『タコピーの原罪』、これらの作品はですね、集英社史上これまで例がないという破格の条件でライセンスが成立しています。

籾山:つまり、アニメになって火がついたということではなく、新連載の最初のほうから、MANGA Plus という媒体で、全世界で連載していることも関係し、読者がたくさん連載を追ってくれて、アニメ化を果たす前から海外でも人気作品になっていると。

漫画雑誌によって読者とともにみんなで盛り上がりながら広がっていくと、そういうことがMANGA Plusにおいて、世界でもできてきているという手応えの話でした。

今後の「MANGA Plus by SHUEISHA」

籾山:そして、今後の「MANGA Plus by SHUEISHA」についてもお話ししていきたいと思います。まず、ここで発表をすることもいくつかありまして、目標などもお話ししていきます。

まず最初の発表ですが、2023年以降に始まる少年ジャンプ+の新連載はすべて英語でも、全世界で、同時連載をするという方針にしようと思っています。

籾山:漫画家さんで今日のイベントを聞かれている方は少ないかもしれませんが、ジャンプ+で連載すると全世界で英語でも同時に連載できるということになります。

描かれた作品がたくさんの人に読んでもらえるということで、ぜひご興味がある方がいらっしゃれば、ジャンプ+での連載を目指してもらえると嬉しいです。

ちなみにMANGA Plus by SHUEISHAでも、英語で連載の作品に関しては、今年からアプリで初回無料で全話読むことができるという機能を実装しています。

つまり、連載途中からでも新規の読者が、SNSで話題になっているから読んでみようとか、アニメが始まったから読んでみようと思ったとき、1話目から最新話まで初回だけは追いつくことができます。

そうすると、さらに最新話を読む読者が増え、また翌週にSNSで話題になって、再度また新規読者が入ってきて、というふうに最新話の読者がどんどん雪だるま式に増えていくと。ムーブメントが大きくなっていきます。

そういった例が日本では、『怪獣8号』や『タコピーの原罪』などで生まれてきているんですけど。

それを海外にも広げて、最新話が更新のたびに全世界でトレンド入りして、世界中で売れる、そんなヒット漫画を作っていきたいというふうに考えています。

そして、次の発表ですが、こちらはまだ詳細を発表できないんですが、今年は海外のクリエイターによる自由な漫画投稿のプラットフォームをMANGA Plus by SHUEISHA内に開設したいなというふうに考えています(※編注:8月30日に発表されたMANGA Plus Creators by SHUEISHA)。

海外の作家さんの面白い作品から、MANGA Plus by SHUEISHAに掲載されるパターンもあるでしょうし、逆に日本でも、これは魅力的だというふうに思ったら、日本語に翻訳して海外の漫画家さんの投稿作品をジャンプ+で連載するみたいな。

そういうケースも、将来的にあったら良いなというふうに考えています。こちらは詳細が決まり次第、リリースなどでお知らせしたいと考えています。

「MANGA Plus by SHUEISHA」の目標

籾山:そして今後のMANGA Plus by SHUEISHAの目標についてですが、どれくらいの読者がMANGA Plusで連載を読んでいるのかという数字です。

籾山:作品名は伏せふせさせていただいたんですけど、人気漫画に関しては、200万人以上の人が最新話を読んでいます。

日本の「ジャンプ+」でも人気連載は200〜300万人ぐらいに読まれていますので、現状でも、足すと500万人の読者が全世界で最新話を毎回読んでくれると、それくらいが現実的な数字になってきています。

なので、5年後ぐらいには人気作を、毎週1,000万人、海外を含めてであれば、きっと実現できるんじゃないかなと思っています。

ジャンプ+とMANGA Plus by SHUEISHAを含めて、1,000万人が連載を追ってくれる漫画が載っているプラットフォームにしていきたいと考えています。

そのためには、やらなくてはならないことが多く、まだ足りていないと考えています。

漫画編集部もそうですし、集英社全体としても、海外を対象に雑誌のWebサービスを展開するという経験がほとんどないなかで運営している状況でして、プロモーションや海外読者の反応をどう作品づくりに活かすのかとか。

そういったことがまだ課題だと考えています。なので、もっともっと知見がある方のアイデアや、技術を持つ方の力をお借りしたいと考えています。

冒頭でもお話ししましたが、現在、「ジャンプアプリ開発コンテスト」という企画を募集していますので、ぜひこちらにご応募いただいたり、あと右に、こちら私のTwitterのスクショなんですけど、ちょっとしたことであればDMでも結構ですので、ぜひ連絡をいただければ幸いです。

籾山:「MANGA Plus by SHUEISHA」の海外のパートは以上になります。ありがとうございました。

「ジャンプアプリ開発コンテスト」2022が開催中!

マンガ創出に繋がる新しいアプリ・WEBサービス開発企画を
少年ジャンプ+編集部が募集します。
受賞企画には、
開発資金を最大5000万円提供します。

ジャンプアプリ開発コンテスト

大賞は賞金100万円の他、複数の賞を用意。応募受付期間は、9月16日(金)23:59までです。

ご応募についての詳細は下記のページをご覧ください。
https://jumpplusappcompe.com/

登壇者

細野修平
少年ジャンプ+編集長。「月刊少年ジャンプ」、「ジャンプSQ.」、「週刊少年ジャンプ」を経て、「少年ジャンプ+」の立ち上げに関わり、2017年から同誌の編集長を務める。主な立ち上げ担当作品は『テガミバチ』『終わりのセラフ』『DRAGON BALL外伝 転生したらヤムチャだった件』など。

籾山悠太
少年ジャンプ+副編集長。週刊少年ジャンプ編集部、デジタル事業部などを経て、2014年に「少年ジャンプ+」の立ち上げに関わり、2019年から同誌の副編集長を務める。主な立ち上げ作品は『カラダ探し』『花のち晴れ』など。

よろしければTwitter、noteともにフォローの上で更新をお待ちいただけると励みになりますので、よろしくお願いします!

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