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ドタバタ米国留学記 #12 不測の事態

念願叶って24歳でロサンゼルスの語学学校へ留学するものの、出発したその日から「ろくに準備もせず出国してしまったことを大いに後悔する」っていう、先が思いやられる衝撃のはじまりからの、英語まみれの授業、寮での生活、クセのある人々など、たった16週間に起きたおもしろエピソードをたっぷりと綴ります。

運転手と金髪女

忘れちゃいけない50ドル案件については、「全然連絡が取れない」の一点張りがさすがにおかしいと感じ、「とにかく運転手と話がしたい」と事務局で粘ることにしました。
クラスにも行かず、事務局にある椅子に座って待ちますが、待つように言われてからそのまま10分、20分と刻刻と時間が過ぎていきます。
その間、何もなし。
こちらに声をかけることもなく、何かをしている様子もなく、確実にシカトされている状態で頭にきまして、「どういうつもり?」と言うと鼻で笑われるっていう、あまりにもバカにした態度だったので「ふざけんな」と、壁を蹴っちゃったんですね。
思わず足が出ちゃった感じなんですけど、奥から学校長が出てきてものすごく怒られました。
で、しばし、睨み合い。

悪いけど、ずっと前から相談に来てんのよ。
人に待てと言ったまま放置ってどういうこと?
完全になめてるだろ、ワタシのこと。
運転手に連絡取れないって、ウソだよね。
この前、ここにいたじゃん。
会ったんだよ、ワタシは。
その時アイツが逃げたからここに来たんでしょうが。
連絡取れないわけないんだよ。
ワタシは9月には帰らないといけないの。
いいかげん知らん顔すんのやめてくんないかな。

って、頭の中で叫ぶ、っていうね。
英語で出てこないわけだ、こんなの。
だから、無言のまま睨むだけ、ってことになり、余計に怒られて終わりですよ。
どうして壁を蹴ったのか?としつこく問いただされたんですけど、理由が ↑ なわけで、説明できないので「I'm sorry.」とだけ言って椅子に座りました。
その後、学校長はスタッフの金髪女に何か言ってましたけど、彼女は自分に都合良く説明をしたんだと思います。学校長はこっちを見て、呆れた顔で首を横に振っていたので。
ワタシは無言でその場を立ち去り、クラスへ行きました。
その後どうしたのかは悔しくてあまり覚えていないんですけど、「諦めてたまるか」と腹をすえた気はします。
そこから、めげずに、事務局へは行きましたからね。
ワタシが帰国するまで、金髪女はワタシには愛想が悪かったですけど、ワタシは「お前、いつかバチ当たれ」と腹の中で呪ってやりましたよ。

財布をなくす


定期的に行われるテストで、ワタシはレベルが上がり新しいクラスに入りましたが、この文法クラスの授業は、質疑応答のようなリスニング&スピーキングも取り入れるものだったので、ついていかれずだいぶ戸惑いましてね。

クラスの先生は、日本大好き、秋田県で英語の先生をしていた経験のある「チャック」。

はじめに「stand up!」と全員立たされ、チャックが同じフレーズで一人一人に問いかけていきます。それに返せると座れるんですけど、そもそも何を言ってるのか意味がわからないので、ワタシは反応できないわけです。
結局ワタシだけ最後まで立っている状態で、チャックはワタシがわかるまで頑張ってくれるんですけど時間切れ。チャックは「残念」と悔しそうでしたが、仕方なく座らせてもらう感じで終了しました。
わからなくて答えられず肩を落とすワタシに、「It's OK〜」と微笑んで肩をそっと抱いてくれる、とても優しい先生です。

音はわかるんですけど、その意味がわからない。「あれは一体、何を言っていたのか?」と授業が終わってから調べてみました。
チャックが言っていたフレーズは「Would you do me a favor?」。
「お願いがあるんですけど」っていう意味です。
その答え方は、皆マチマチ。正解はなく「No problem.」とか「Sure. 」とか反応できれば OK っていうものでした。中には「Sure. What can I do for you?」とか言えちゃう人もいて、会話のキャッチボールが成り立つわけですね。
チャックは、たぶん、こういうのを楽しんでるんですよ。でも、一人がこんな風に答えると次の人は更にハードルが上がる感じで、受け答えの数がどんどん増えていくんです。見ている側もどんなやり取りをするのか期待しますから、後になればなるほどプレッシャーがかかるっていう、大喜利みたいなことになるんです。
オチを言わないといけない雰囲気になる。
面白いこと言えよ、みたいな。
そこまでのレベルじゃないワタシには、正直キツかったですね。しょっぱなから質問の意味がわからないなんて、もうお手上げですから。

授業でビリッケツの洗礼を受けた日、心なしかボ〜ッとしていたんですかね。
部屋に戻ったら、首からぶら下げていた "バッグ型の財布" がないことに気づきます。

「ウソ!?」
顔面蒼白。

現金、クレジットカード、学生証など、必要なものが全て、どこかに消えたんです。

ヤバい。これは非常にヤバい。

その日は、ワタシ一人で行動していました。
というのは、長期で来ていた人たちがサマーバケーション(2週間の夏休み)に入っていた時で、皆どこかへ出かけちゃっていて、ナオもヒロもケンも、誰もいないんですよ。
「どうしよう」
頭の中が真っ白になりながらも、無意識に向かった先はナッシュの部屋でした。
ナッシュは、ワタシがロスに到着した日に出会った寮の階段に座っていた日本人留学生です。
ワタシは彼とも仲が良く、「バケーション中、オレは寮におるよ」と言われていたのを思い出したんですよ。
で、「どうか、部屋にいてくれ」とドアをノックすると、ナッシュが出てきてくれました。

神様、ありがとう!

で、出てきた言葉が
「Would you do me a favor?」
ナッシュは、「Sure, what's up?」と答えてくれて
ワタシの口から自然と「I lost my wallet, but I don't know where it is.」と出てました。
「マジか〜!ヤバいやん!」となり、「今日行ったとこ全部回ろう」と一緒に探してくれることになりまして、カフェテリア、図書室、パソコンルームと順に辿っていくと、ありました、パソコンルームに。
使っていたパソコンデスクには何もなく、ダメ元で受付に尋ねてみると
「どんなバッグ?」と聞かれたので
「青い布で、ほっそ〜い紐がついていて…」と説明していると
「これね」と、ワタシのソレが目の前に現れました。

「Ye〜〜s.  This is i〜〜〜t !」(そう〜〜、コレです〜〜〜! )

「You are really lucky」と、中身が全て無事なことを知らされました。

本当に、ラッキーでした。
財布をなくし、人の手を煩わし、心配をかけ、心から反省です。
一緒に探しまわってくれたナッシュには、感謝しかありません。
ナッシュはいつも、「ちゃんと食べてるか」と気にかけてくれたり、砂埃が目に入った時は「擦ったらあかん。これで洗いや」とアイボンを貸してくれたりと、まるでお兄ちゃんのようなしっかり者で、いつもお世話になっていただけに「マジ、ありがとう」と、この時は心の中でもしっかりと手を合わせました。

危機一髪?

寮では、相変わらずどんちゃん騒ぎの日々で、新しい人が入ってきてはその輪が広がっている感じでした。
そんなある日のこと。
ルームメイトがまだいないワタシは、部屋でテレビを見てまして、そのまま寝落ちしちゃったんですね。
ベッドに座った姿勢のまま、電気もつけっぱで。
完全に寝ていたんですけど、「ガチャッガチャッ」という音で、目が覚めます。
何の音?と耳を澄ますと、ドアから聞こえてくるわけですよ。
ドアの前まで行ってみると、「ガチャッ」と大きな音が1回してドアノブが周り、少しだけ開きました。
何だ?と思ってワタシがこっちからドアを開けると、警備員が立っていましてね。

だいぶ寝ぼけていたのでうろ覚えなんですけど、「What happened?」と聞いたと思います。
警備員は「No. no, It's OK」みたいなことを言って両手を振りながら後退りして去って行ったんですね。
「一体、何だったんだ?」と時計を見ると3:00過ぎくらいだったので、「寝よ」と電気を消して横になりました。

次の日友達に「夜中に部屋の鍵がガチャガチャいうからドア開けたら警備員が立っててさ〜」と話していると、そこにいた全員が「What !?」と固まります。
「それって、どういうこと?」と。
「いや、それがわからないから、みんなはどう思う?って聞きたいんだけど」と言うと
「No〜〜〜〜〜!」と、そこにいるメンバー全員の顔が引きつっているわけですよ。
「アユミ、それ、ヤバいやつ」
「アユミ、危なかったんだよ」
「アユミ、無事で良かった」
眠っているうちに忍び込んで何かを盗む気だったんじゃないか、と。
合鍵で開けたら起きていたから逃げた、と。
襲われてたかもしれない、と言われた時はじめて「アレ、ヤバかったんだ」と知り、背筋と思考がフリーズしました。

「これは報告した方が良い」と促されましたが、まさかあの事務局へ?と思い「被害は受けていないから、たぶん取り合ってくれないよ」というと、「確かにそうかも」となり、留学生の間で情報として伝えることに留めました。

学校からすぐ近くの所に警察署があるので、通報すればすぐ来ます。
何かあったら、即警察を呼ぶよう言われました。
合鍵で入ってこようとしたのが警備員なら、警備に助けを求めても意味がありませんからね。
ルームメイトがいないから目をつけられたのかも、という意見もありましたけど、真実はわかりません。たまたまかもしれないし、狙われたのかもしれないし。

寮は二人部屋なので、ルームメイトと気が合わない場合は最悪ですから、自分からシェアを希望しようとは思わないので、「外側から鍵を開けられちゃうなら防ぎようがない。どうにも出来ない」っていうのがワタシの結論です。

こんなことがあっても、「部屋はやっぱり一人がいい」って思っているっていうのに、程なくして台湾人がやって来ます。
この方のクセが強すぎて…


つづく・・・


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