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ドタバタ米国留学記 #11 ベストフレンズ

念願叶って24歳でロサンゼルスの語学学校へ留学するものの、出発したその日から「ろくに準備もせず出国してしまったことを大いに後悔する」っていう、先が思いやられる衝撃のはじまりからの、英語まみれの授業、寮での生活、クセのある人々など、たった16週間に起きたおもしろエピソードをたっぷりと綴ります。

一番の仲良し

丘の上に建つリッチな寮から見る眺めは最高で、学校やカフェテリアへの道のりが遠くなったことなど1ミリも気にもならない、心地良い毎日を過ごしていました。
ルームメイトはまだおらず、夜は早めにシャワーを浴びて一人快適にテレビドラマを見て寝落ち、っていう極楽な日々。
たまに、ホームステイしている友達が泊まりに来たりして、ホント自由を満喫していましたね。

中でも一番仲良くなった日本人の友達「ナオ」とは、一日中ずっと一緒に過ごしていました。
彼女はホームステイなので夕方には家に帰るんですけど、学校にいる間も放課後も連れ立って行動していたので、彼女抜きでワタシの話は出来ないくらいです。

学校が終わった後、大学内のパソコンルームや図書館に行ったり、歩いてすぐのアップタウン (街) のカフェに行ってはフラッペを飲み、いろんなお店をプラプラしてました。
学校から一番近いスーパーは徒歩20分くらいの所にあり、炎天下を歩いていくので着いた頃には汗だくなんですが、日本の夏みたいにベタベタしないので苦ではなく、結構頻繁に行ってましたね。
スーパーはどでかい敷地の中にあって、薬局や洋品店などいくつかお店がありました。小規模なショッピングモールみたいな感じでしょうか。
駐車場がとてつもなく広いんですけど、ある時、消防車が止まっていたんです。
それも、でっかい "はしご車" が。
何事かと思って近づいてみると、誰も乗っていません。どういうこと?と思っているところへ、消防士さんが現れました。
「Hi♪」
ナオが、「何かあったの?」と聞くと、「買い物に来たんだよ」と。
はしご車で、寄り道。
日本だったら絶対叱られるやつ。
ありなんだ。
アメリカ、スゲ〜。
しかも「乗ってみるかい?」とか言ってくるし。

反射的に「ノ〜ノ〜」って答えちゃいましたけど、あそこで「イエス!」って言ってたらきっと乗せてくれたんでしょうね。
後で思いましたよ、失敗したな、って。
カフェでも、警察官が普通にランチしてたりしてビックリしましたけど、「こういうのが普通って、なんかイイな」と思いました。

カリフォルニアの夏は37度を超えますが、湿度が低いので日本より過ごしやすく感じます。
学校に通いはじめてすぐ、クラスの先生(リカルド)から「来てすぐは大抵の人が喉を痛めるから注意して。カリフォルニアは乾燥してるからね」と言われました。
たしかに、袋を開けっぱなしの状態で3日間放置してあるスナック菓子がパリパリのままですから、相当乾燥しています(ワタシはそんな怪しいもの食べませんが、これは友人の証言です)。
更にリカルドは「カリフォルニアの夏の天気は毎日同じ、快晴。気温も毎日同じ、100ディグリー(約37.7度)。天気予報なんて必要あるのか?と、ニュースを見るたびに思う」って言ってました。
で、「カリフォルニアの夏は、エアコンと日焼け止めとキャンディが必需品」っていうのと、「スプリンクラーには気を付けろ」と教えてくれましたよ。

学校の行事で、ビーチでバーベキューをすることがあり、その際 "日焼け止め" が全員に配られたんです。
めんどくさいな〜って顔をしていたら、リカルドに「塗らないとヤケドする」と言われ、即塗りたくった覚えがあります。
学校の敷地内に生える芝生の上は気持ちが良いので、コンクリートの道ではなく芝生を突っ切って歩きたくなるんですけど、スプリンクラーが動作する時間にうっかり歩いてしまうとずぶ濡れになるので、何時に動くのかチェックして、みんなで気を付けてましたね。
まぁ、濡れてもすぐ乾いちゃうので問題ないんですけど。

映画鑑賞

アップタウンにはカフェ、バー、本屋、99¢ショップ、古着屋など、いろんなお店がありとても便利で、映画館はよく訪れていました。
映画は (学生証を見せれば) 学生料金で見られるので、結構いろいろ観ましたね。
たしか、7ドルくらいだったと思います。
当たり前ですけど、日本語字幕がないので、映画のチョイスを間違えると何の話かわからないまま映画館を出ることになりますから、何を観るか吟味してから行きます。
SF や推理モノなんかは専門用語が多く理解できないことが多い、と聞いていたので、アニメやアクション、恋愛モノならわかるかと思い、それ系を観ていましたね。
一応、リスニングの勉強でもあるので。

『タイタニック』は日本で既に観ていましたが、ロングラン上映されていたので他国の留学生と一緒に観に行きました。
他にも、ハリウッドでリメイクされたSF怪獣映画『GODZILLA』、彗星の衝突によって地球最後の日を迎える人間模様を描いたパニック映画『ディープインパクト』なんかも観ましたけど、専門用語?みたいな知らない単語が多く内容はよくわかりませんでしたね。
『アルマゲドン』はすごく面白いよ、って言われたんですけど、絶対聞き取れない自信があったのでやめました。
活劇小説「怪傑ゾロ」を映画化したアクション映画『マスク・オブ・ゾロ』は、ストーリーもビジュアルもわかりやすかったです。
無人島に不時着した男女が次々にトラブルに巻き込まれていくロマンティックアドベンチャー映画『6デイズ7ナイツ』はラブコメみたいな感じだったので、これも理解できましたね。

コメディ映画ならダイジョブそう、と思いがちですが実は微妙で、ビジュアルだけで笑えるわかりやすいモノならいいんですけど、アメリカの時事ネタや著名人の名前、ジョークなんかを知っていないとわからない、なんてことがあったりするので、オススメされたら観てみる、って感じでした。
「『There's Something about Mary『(メリーに首ったけ)』が面白くて笑えるよ」と聞いて観に行きましたけど、ブラックジョークと下ネタで出来てるコメディ映画でたしかにわかりやすかったですが、いかにも男性陣が好きそうな内容でしたね。
ススメてきたのは、南米の男衆。「男ってのはこういうのが面白いのか」とその時学びましたよ。
『テッド』や『ソーセージ・パーティー』を観て腹を抱えて笑っているウチのボスを見ると、この映画と南米のヤロウどもを思い出します。


ナオと一緒に、ディズニーアニメ『ムーラン』を観に行った時のことです。
近くのコンビニにプラッと買い物に行く感覚で映画館に行っていたので、この日もいつもと変わらず、Tシャツ、短パン、ビーサンで映画館に入りました。

この時は、日本人の「ケン」と「ヒロ」も一緒に行っていて、2人は『アルマゲドン』を観ると言って、別々に観賞することになったんですね。
ムーランは1時間半、アルマゲドンは2時間半の上映時間で、早く観終わったワタシたちがしばらく待つことになり、館内のベンチに座って喋ってたんです。
すると、映画館のアルバイトの男の子がモップを持って通りかかり、こっちを見てニコッと微笑んでくれました。
彼は床掃除をはじめたんですが、途中でそそくさとどこかへ行き、小走りに戻って来てワタシたちの前に立つと「これ、あげる」と言って、ムーランの缶バッジをくれましてね。
どうやら、小学生と思われたようです。
バッジには " not for sale " と書かれていたので、明らかにオマケの品。
ワタシたちがムーランを観たのは知っていたんだと思いますが、学生料金で入ったのは知らないんでしょう。
彼はウィンクして口に人差し指をあて「内緒だよ」と言って去って行きました。

そりゃそうだ。
こんな2人、チビッコに見られて当然です。

バイトの彼は、高校生だったんじゃないかと思います。
24歳のワタシからすれば、彼はどう見ても年下。でも、向こうからしたら "ビーサンを脱いでベンチに座って足をブラブラさせながらお喋りしてる姿" なんてのは、小学生にしか見えないんでしょうね。

なんだかんだ、うれしかったですけど。
缶バッジ、好きですし。
映画を見終わって出てきた2人には爆笑されましたけどね。

このメンバー (ワタシ、ナオ、ケン、ヒロ) で行動することが増え、ケンが車を買ってからはあっちゃこっちゃに遠出するようになります。
ケンとヒロはカップルなので、いつも一緒。2人で出かける時以外は、ワタシとナオが車の後部座席に便乗して、いろんなところへ連れて行ってもらいました。
夜中にサンタモニカの桟橋を散歩したり、チャイニーズシアター辺りをウロウロしたり。
でもね、ケンの車、エアコンがきかないんですよ。
っていうか、壊れてる。
真夏のカリフォルニアですよ。
リカルドは「エアコンは必需品」って言ってましたよね。
エアコンがないと死ぬよ、って。
車内は45度超えるんです。
だから、必ず団扇うちわ持参で乗りました。
気休めですよ。
でも、ないよりマシ。
走っている時は風があるからいいんですけど、信号待ちなんかで止まった時は地獄なので。
全員汗だくで「暑い、死ぬ」って言いながら乗ってましたけど、それ以上に楽しかったですから、全然ガマンできました。

とにかく、車が、有り難い。
あるのとないのとじゃ、全然違いますからね。
これ、友達に乗せてもらうからよかったですけど、もし自分で乗っていたらおしまいです。毎日、遊びまくってたに違いありません。
ワタシは、テレビくらいがちょうどいい、って思いましたよ。

この、ケンの車のおかげでより行動範囲が広がっていき、ロスでの生活を更にエンジョイしまくりますが、トラブルもチラホラ。
後になって震え上がったちょっとした事件については、次回。


つづく・・・


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