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「夜空の満月」
夜の暗がりに溶け合った
しなやかな黒が時折輝きを見せながら
うねるように目の前を過ぎていく
一瞥する瞳は満ち足りた月のようで
媚びることもなく独りを生きる凛々しい後ろ姿は
隠し切れない愛らしさを道に残し去っていく
塗り潰された物陰の闇に重なる直前
スラリと伸びた心の声は
右へ左へふわりと揺れて
潔い良い挨拶を一つ交わしていった
“さよなら”なのか“それじゃ”なのか
声のない気持ちの揺らぎは、きっと自分だけに正直で
他人には曖昧な、いじらしい響きを残す
しなやかな夜が溶けた暗闇の向こうは
一体どこへと通じているのか
そこまで考えて見上げた空には
雲を払う月の姿が
それは遙か遠くからこちらを見つめる
まあるい瞳のようだった
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