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1つの色に染まらず、旅人のように生きる。世界一周したライターが旅に惹かれる理由

こんにちは!伴走支援やWEB制作事業を行う株式会社クリエスタです。

クリエスタで働くメンバーの素顔に迫るインタビュー企画。第5回は、ライターの岡村幸治さんにインタビューしました。フリーライターになった経緯や2023年の世界一周の旅について聞きました。

岡村幸治(おかむら・こうじ)
神奈川県横浜市出身。大学卒業後、スポーツ新聞社に入社。野球記者を務めた後、2021年からフリーライターへ。朝日新聞デジタルやはたわらワイドなどで執筆。得意ジャンルはスポーツとキャリア。趣味は旅行で、2023年には全財産17万円から世界一周の旅に出かけた。


ライターのスキルを活かして経営戦略に携わる

——クリエスタでの仕事内容を教えてください。

現在の僕の仕事は主に2つです。1つ目はクリエスタ公式noteの運用。設立してまだ1年も経っていない会社なので、一人でも多くの方にどんな事業を行う会社なのか、どんなメンバーがいるのかを知ってもらいたいと考えて、noteでの発信を始めました。

今定期的に出しているコンテンツは、毎月の活動を伝える月報やメンバーインタビューが中心です。近々、また新しい企画をできないか考えています。

2つ目は経営戦略を立てること。月2回ほど社長とふたりでミーティングをして、組織体制のあり方や新規事業の方針などを話し合っています。

——経営戦略を担っているのは、ビジネス経験が豊富だからでしょうか?

いえ、ビジネスのことはよく分かりませんし、経営の経験もありません。そこはまったく期待されていないと思います(笑)。ただ、ライターとして培ってきたヒアリングスキルや言語化スキルが経営戦略に活かされている気がします。

社長の考えを深掘りして整理したり、お客様や他のクリエスタのメンバーに伝わりやすいように翻訳したり。やっていることはライター業に似ています。僕自身はビジネスを興した経験はないのですが、経営者と1対1で話して、会社の重要な決定をする場面に携わらせてもらえるのはありがたいですね。

クリエスタのメンバーたち

書く仕事のスタートはスポーツ記者

——クリエスタ以外のお仕事についても教えてください。

2021年からフリーランスのライターをしています。仕事内容や仕事量は毎月変わりますが、インタビュー記事を中心に執筆しています。得意なジャンルはスポーツとキャリアです。

——書く仕事を始めたのはいつですか?

新卒でスポーツ新聞社に入社して、野球記者になったのが始まりです。

——昔から新聞記者を目指していたのでしょうか?

新聞記者になりたいと思っていたわけではないですが、スポーツはずっと好きだったんです。小学生では野球をやっていて、中高は陸上部。幼い頃からプロ野球や箱根駅伝をテレビで観ていました。

なので、漠然と「スポーツに関わる仕事をしたい」という思いを持っていました。その後、大学生で就活をするころになって、書くことも好きだから、スポーツライターになればいいじゃんと。スポーツの試合を見て、お金がもらえるなんて最高じゃないですか(笑)。

——書くことも子どものころから好きだったのですか?

好きでしたね。僕、紙とボールペンが好きなんですよ(笑)。なぜかはよくわからないのですが、紙に文字を書く行為自体が好きで、小学生のときからノートにいろいろ書いていたのを覚えています。

——幼いころから好きだったスポーツと書くことを両方仕事にするなんてすごいですね。

いや、そんなことはありません。野球記者になれたのは、ただ運が良かっただけなんです。

——どういうことですか?

実はスポーツ新聞社は補欠合格だったんです。内定していたわけではなく、辞退者が出たら繰り上げで入社できるという状態で。補欠なので入社が約束されているわけではなく、メーカーに入社するつもりでいました。

大学4年生の8月に「辞退者が出たので繰り上げ合格です」と連絡があって、結果的に入社が叶いました。

——補欠合格からの内定はうれしいですね。

もう1つラッキーだったのが、1年目から記者になれたこと。新聞社とはいえ総合職の採用なので、新入社員はまず営業や社内のレイアウトを担当するケースが多く、1年目から記者になることは稀なんです。しかし、当時は東京オリンピックが近づいていることもあり、若手記者を増やそうという考えがあったのか、たまたま1年目で記者になれました。

——すごい!ラッキーが重なってスポーツ記者デビューを果たしたのですね。

しかも、なぜかスポーツ新聞の中でも花形と呼ばれる巨人の担当記者になることができて。今考えても、なぜ自分が抜てきされたのか分かりませんが、実力を見込まれたわけではないことは確かです(笑)。本当にラッキーでしたね。

フリーランスに転身。世界一周へ

——スポーツ記者の仕事はどうでしたか?

やりがいのある仕事でした。自分は長年野球ファンだったので、テレビで見たことのあるプロ野球選手に直接、話が聞けるのは本当に刺激的でした。

ただ、きつかったのも事実です。当時は大学を卒業したばかりでインタビューの仕方も文章の書き方も習ったことはありませんでした。右も左も分からない中で「とにかく取材だ!ネタ取ってこい!」という感じだったので。

新聞記者時代の仕事風景

——現場で仕事をしながら学んでいく、みたいな世界なんですね。

まさにそうですね。十分に取材ができなくて、上司に怒られることも多々ありました。

——2020年末で新聞社を退職したと聞いています。記者で磨いた「書くスキル」を活かして独立というイメージでしょうか?

いや、まったく違います。会社をやめた理由はいろいろあるのですが、一番大きかったのは、自己肯定感が下がったことだと思います。

スポーツ新聞では、基本的に勝ったチームを大きく取り上げて、負けたチームは数行程度の小さな原稿になります。つまり、担当記者としては、巨人が勝つと大きな原稿を書くことになるわけです。でも僕は取材が苦手で、ネタを仕入れることができていなかった。

だから正直な話、試合を見ながら「負けてくれ」と祈っていたんです。記者はあくまでも仕事なので、そのチームのファンになる必要はありません。しかし、巨人の選手たちを普段から取材させていただいているにもかかわらず、ある意味で彼らの不幸を願っているわけじゃないですか。それはあまりにもチームや選手たちへのリスペクトがなさすぎる。

記者として以前に、人間として最悪だなと思ったんです。このまま新聞記者の仕事を続けていたら、毎日「自分はクソみたいな人間だな」と思わなければいけない。そんな状態で幸せになれるわけないと思って、新聞記者をやめることにしました。

最近は原稿を書かなければいけないプレッシャーがないので、純粋な気持ちで巨人を応援しています。記者時代に取材した選手たちが活躍しているのは嬉しいですね。

——退職後は?

やめた後のことは考えていなかったので、しばらくは仕事をせずにニート生活を送っていました。

数ヶ月経って「そろそろ仕事したほうがいいかな」と思って、ライターの仕事を始めました。YouTuberやブロガーに憧れたりもしたのですが、記者の経験も活かせるしやっぱりライターがいいなと。

——2023年には世界一周の旅に行ったんですよね。なぜ世界一周?

会社員時代に、坂田ミギーさんの世界一周旅行記『旅がなければ死んでいた』を読んで世界一周に憧れて。実は、会社を辞める表向きの理由は「世界一周に行く」だったんです。親にも上司にもそう言っていて。ただ退職直後はコロナ禍でなかなか海外に行くことが難しく...。

ずっと行くタイミングを見計らっていて、いけると判断したのが2023年でした。一度中断期間はあったのですが、2023年の3月から11月まで旅をしました。

世界一周の旅で訪れたベトナム・ホイアン

——旅はどうでしたか?

とても楽しかったのですが、スタートから大変でした。これは完全に自分が悪いのですが、世界一周に出発しようと思ったときに、全財産が17万円しかなかったんです。フリーランスになってからゆるゆると仕事をしていて、会社員時代の貯金を食いつぶしてしまっていて。

——17万円の資金でどうやって世界一周したんですか?

2つの手段でなんとか資金を賄いました。1つ目は、旅をしながらライターの仕事をすること。「世界ではたらく日本人」という企画を立てて、海外で日本人にインタビューしました。

2つ目は、旅を応援してくれる方に支援を募りました。Twitterで「旅の仕事ください」「世界一周のスポンサーになってください」と投稿したところ、炎上はしてしまったのですが、そのおかげで拡散され、多くの方から支援していただきました。

——個人のSNS発信でスポンサーが集められるのですね。

僕もできるかどうかは分からなかったのですが、当時は予算200万円に対して17万円しかない状態。可能性のあることはなんでもやるしかないと思って発信しました。

支援してくださる方のおかげでなんとか23ヶ国を巡ることができました。旅を支援してくれた方には感謝してもしきれません。

ライターと旅人は似ている

——フリーライターになって4年目。今後の目標を教えてください。

以前は「旅をして自由な人生を送りたい」と考えていたのですが、最近はちょっと意識が変わってきています。そんなに「自由」にこだわらなくてもいいかなと。会社員になることも検討しています。

というのも、僕は「旅をしたい」というよりも「旅人でありたい」気持ちが強いのだと思ったんです。

世界一周の旅で訪れたヨルダン・ペトラ

——旅をしたいというより、旅人でありたい。どういう意味でしょうか?

僕にとっての旅の魅力は、刺激と多様性です。新しい文化や価値観に触れることができ、いろんな世界があると知れる。だから僕は旅が好きなんです。ただ、よく考えてみると、刺激と多様性を感じるために、必ずしも旅に出る必要はないと気付いたんです。

海外に行くことだけが旅じゃない。新しいコミュニティに飛び込むとか、昨日とは違ったことに挑戦するとか、価値観が違う人と話すとか。これは全部「旅」で、日常的に旅をしようとする姿勢を持つことが「旅人であること」だと思っています。

——なるほど。旅に出なくても「旅人のように生きられる」ということですね。なぜ旅人でありたいのでしょうか?

長く同じ世界にいると、その場の価値観に染まってしまうことがあると思います。会社であれ、コミュニティであれ。新聞社には新聞社の常識があるのと同じように、フリーランスのコミュニティにも、なんとなくその世界ならではの価値観があるように感じています。

どんな集団にも「色」があるのは当然です。それ自体は自然で、悪いことではない。ただ、その中に長い間、身を置いていると、自分もその色に染まっていく。そして染まっていることに無自覚になる。つまり、考え方が偏ってきてしまうんです。

僕はそれが怖い。だから、染まりたくないんです。この世界にはいろんな人がいて、いろんな考え方があるということを常に頭に入れておきたい。1つの場所に所属するのではなく、いろいろな世界を見ながら、生きていきたいんです。それは、ライターの仕事にも通じるような気がします。

——「ライターの仕事に通じる」というのは?

ライターって主人公キャラじゃない気がするんです。「何かをする人」というよりも、「何かをする人」を取材する人、というか。一歩引いて、俯瞰して物事を見るのが大事なのかなと。

アスリートや経営者の取材をして原稿を書く仕事をしていますが、僕自身はスポーツや経営のプロではありません。でも、スポーツや経営の世界に染まっていないからこそ書けることがあるはずなんです。読者は僕のような一般の方であることが多いので。

そういう意味で、ライターは旅人と似ていると思います。たとえば、生まれてからずっと地元で暮らしている人は、その地域の魅力に気づかないことがある。他の地域と比べなければ、その町の特性は見えてこないですよね。「土の人」と「風の人」の話でいえば、ライターも旅人も「風の人」だと思います。

僕は、専門家やその道のプロフェッショナルの方を心の底から尊敬しています。ただ、自分はきっとそのタイプではない。だから、これからもさまざまな世界にお邪魔させてもらいたいと思っています。1つの場所に留まらず、いろんなところに旅をして、取材して生きていきたいです。


取材・執筆:虎尾 ありあ

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