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ロボット大賞を受賞した惣菜盛付ロボット「Delibot」開発者インタビュー

2022年10月19日、コネクテッドロボティクスがTeam Cross FAと開発した、惣菜盛付ロボットシステム「Delibot」が第10回 ロボット大賞にて中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)に選ばれました。

これまで難しいとされていた機能を実現した業界初の惣菜盛付ロボット「Delibot」について、ロボット開発の裏には、どんなストーリーがあったのかを探るべく、開発者にインタビューを行いました。

Delibotとは?

惣菜盛付ロボット「Delibot」は、食品産業の中でも生産性が低く、自動化が進んでいない惣菜業界の盛付工程をサポートするロボットです。

ポテトサラダなどの形が定まっていない食材を決められた量つかみ、自動で食品トレーに盛り付けることができます。マグネット式のハンドを取り替えることで、異なる惣菜やサイズのトレーに盛り付けることが可能で、1台につき1時間250食の盛付を行い、1人分の作業を省人化することができます。



塚本 光一
コネクテッドロボティクス株式会社  開発部門  VP of Software

—— 開発のきっかけについて教えてください。
経済産業省が惣菜の盛付がテーマのプロジェクトを行っていて、そこに参加させていただいたのがきっかけです。

当時、CRはAI検査ソフトウェアという食品工場向けシステムの開発を行っていたのですが、ちょうどそのタイミングでプロジェクト関係者の方に、食品工業への関心があって様々な技術を持っているということを知っていただき、お声がけいただきました。

このプロジェクトでは、食品製造分野において惣菜やお弁当などの盛付工程は自動化の難易度高く、人手不足などの課題があったので、その課題の解決を目指しました。

——業界初のロボットとのことですが、どういった特徴があるのでしょうか。
ロボットではなく自動化という観点だけでいうと、すでにチューブ型のポンプで押し出して盛り付けを行うものはありました。ただ、手で盛り付けたものに比べて見栄えが悪かったり、チューブの中で詰まってしまったりと課題が多くありました。

これまで、盛付ロボットの開発自体はいくつかの企業で行われていて、ほとんどの企業がAIを使用していましたが、確実に現場で使えるものを目指し、必要最小限でかつ運用可能なものにこだわって開発を行い、シンプルでかつ手盛りに近い状態になるよう設計を行いました。
また、惣菜を掴むハンドの形を工夫をしたので対応できる食品が多いのも特徴の1つです。

——惣菜業界にはどのような課題があったのですか。
惣菜盛り付けの自動化がほとんど進んでいないことと、人手不足が課題でした。現場では、人が足りていないことに加えて外国人の方への教育コストもかかり、ゴールデンウイークなどの連休はどうしても人が集まりづらく、盛付工程の自動化に向けて少しでも前進をしたいという思いがあります。

——どのようにロボットを開発し、課題を解決されたのですか。
そもそも今まで実用的なロボットなぜが生まれなかったのかというと、ポテトサラダなどの密度が一定でなく、粘性の高い惣菜は、体積が一緒でも重さが違うことがあるためハンド部で決まった重量を掴むことが難しく、仮に決まった重量を掴むことが出来てもハンド部にこびりついてしまうため、盛り付けの際に重量が変わってしまうことがあるからです。

他の会社は定量を掴むときに画像認識やAIを使って重量推定の精度を上げ、なるべく一回で掴むアプローチをしていました。ですが、現実はそんなにシンプルではなく、中の見えないところにニンジンやキュウリが隠れているので、表面一生懸命見て判断しても最終的には重量を測ってみないとわかりません。なので、1回の精度にこだわらずに何回か取り直すアプローチをとりました。振り返ってみるとその考え方の変化は非常に大きかったと思います。

国際食品工業展(FOOMA JAPAN)出展時の様子

——お客様、パートナーと一丸になって開発を行われたとのことですが、
どのような苦労があったのでしょうか。
一番の苦労は、惣菜盛付ロボット開発の難しさをお客さんもCRのエンジニアもよくわかっていなかったことです。

はじめにお客様側から惣菜6種類に対応できるように要望があり実験を行ったのですが、正直どの惣菜も全く上手く行きませんでした。そこで、お客様に課題を解決することの難しさを理解してもらって一番生産量の多い惣菜を選定いただき、とにかくその惣菜の定量盛付を成功させることに集中しました。

開発中は、実験したことや取り組みはとにかく全部報告し、お客様からアイディアをもらうということをしていて、チャレンジして、失敗して、報告して、フィードバックをもらって、また実験してということの繰り返しでした。

——開発を行う上で外せないと思ったことはありますか?
現場の人が使えるレベルのものを目指すうえで、惣菜を掴むハンドの取り付けや取り替えは極限まで簡単なものにしたいと思いました。

例えば、ハンドの取り替えにドライバーを使わないといけないとなった場合、技術が必要なほか、手間がかかって工場の生産効率が落ちてしまうため、とにかくシンプルなものになるよう工夫しました。

また、最初に対応した惣菜がポテトサラダだったのですが、それにしか使えないようでは実用性がないので別のハンドに取り替えるかシステムを変更することで様々な製品に対応できるようにしました。

——開発を行う中で衝突した壁や苦労した点はなんでしたか?
新型コロナウイルスなどのによる半導体不足の影響で仕入れることができる部品の幅が限られていたので、物の選定・入手に苦労しました。部品の遅れが開発の遅れにもつながるため、その遅れを解消するための工夫も必要でした。

また、これまで誰も実現したことがないのにも関わらず、6ヶ月で解を見出す必要がありました。それに加えて、試作品ではなく工場に導入するレベルの製品を作らなくてはならなかったため、時間に余裕がなく本当に厳しい戦いでした。

展示用デモ機の盛付風景

——過去の開発経験が生きたことはありましたか?
少し前にCRで行っていた食洗機の開発経験が生きた部分があるのではないかと思っています。

当時開発をしていた食洗器はDelibotとは対極にあると言っていいくらい複雑なシステムでした。ソフトだけではなくシステム全体が複雑で開発に苦労をしたので、お客さんも触れて私たちも面倒見切れるくらいのシンプルなものにしようという気持ちがあり、ことあるごとにシンプルにするよう判断をしていました。

——今後の展望を教えてください。
Delibotを日本の食品工場どこでも見かけるようなロボットにしたいです。そのためには、小型化と対応食品の種類が重要です。

食品工場は狭いところが多く、多くの生産ラインではポテトサラダだけでなく多様な総菜を扱っているので、より広く使っていただくために数十種類の食材を盛り付けられるようにしていきます。


ここまでお読みいただきありがとうございました。
惣菜盛付ロボット Delibotについて詳しくはコチラをご覧ください。


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