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【CQ×TRAPOL】北海道弟子屈町で、アイヌ文化と白銀の世界に触れるサステナブルツアーを開催。極寒の地で取り組む「住民主体」の町おこし【弟子屈ツアーレポート前編】

ゼロカーボン社会を目指し、行動変容を呼びかける『CQプロジェクト』は、ローカルフレンド(現地の人々)と出会い、現地に溶け込むような旅を提供するサービス『TRAPOL(トラポル)』とコラボして、環境課題への価値観を変える「サステナブルツアー」を企画・開催しています。

今回は、CQ×TRAPOLのサステナブルツアーの第3弾として、2024年1月23日〜24日に北海道「弟子屈町(てしかがちょう)」を訪れました!

北海道といえば、先住民族である「アイヌ」の歴史と文化が残る土地。本ツアーでは、そんなアイヌの精神や風土を受け継ぎ、古き良き生き方を実践しているローカルフレンドに会いにいきました。

「所有」という概念を持たずに、縄文時代から1万年以上もの間、平和な時代を築いてきたアイヌ民族。そんな彼らの精神世界に触れ、現代を生きる私たちの生活を振り返ることで、新たに見えてくる価値観に迫ります。

ツアーレポートの前編では、弟子屈の雄大な自然とアイヌ文化を通じて、自然との共生について考えた3日間のツアーのうち、1日目の様子をお伝えします!

ツアー1日目:極寒に輝く自然に圧倒され、ローカルフレンドの地域愛に暖められたツアー初日

■女満別空港に集合。バスに乗って、美幌峠へ

北海道のなかでも「道東(どうとう)」と呼ばれる東側に位置する弟子屈町。豪雪地帯に指定されているこの土地は、冬になると気温がマイナス20度を下回ることも珍しくないほど、厳しい寒さが訪れます。

行政面積の65%が「阿寒摩周国立公園」に指定されており、人の手がほとんど入っていない自然本来の姿が見られることが特徴です。

夏は新緑、秋は紅葉と、四季折々の風景を楽しめる土地ですが、そのなかでも雪が積もり、白銀に染まった冬の弟子屈の景色は圧巻の美しさ。

過酷でありながらも、貴重な自然とともに暮らす人々の生活に触れることが、ツアーにおける目的の1つです。

今回のツアーでは、全国から20人以上の参加者が飛行機に乗って、女満別(めまんべつ)空港に集合しました。飛行機を降りてすぐに見えてきたのは、どこまでも続く真っ白な積雪。同じ冬とはいえ、都会で感じたものとは違う、別格の寒さを感じました。

バスに乗り込んでまず向かったのは、「美幌峠(びほろとうげ)」。日本最大のカルデラ湖である「屈斜路湖(くっしゃろこ)」や、火山ガスが吹き出す「硫黄山(いおうざん)」を見下ろすことができる絶景スポットです。

この日は風が強く、美幌峠に続く坂を登っていく間に、舞い散る雪が顔や耳に当たって、痛いほどの冷たさが伝わってきます。

積もった雪に滑らないように気をつけながら、懸命に登っていった先に見えたのは、広大な屈斜路湖とその先に広がる知床の峰々。

「寒い!」と口々に言いながら、凍えそうになっていた参加者のみなさんも、美幌峠から見える景色に圧倒され、思わず目を奪われていました。

美幌峠で集合写真!

これから3日間かけて、この美しい土地で暮らしてきた人々が、どんな生活を送り、何を考えているのかに触れられると思うと、胸が高鳴ります。

■夜は、ローカルフレンドに「弟子屈の魅力」と「環境課題への取り組み」を聞くインプットタイム

バスに乗って、さらに数時間揺られ、ようやく目的地である弟子屈町に着いたころには、もうすっかり日が暮れていました。

ツアー1日目の夜は、湯島地区で町民に愛されているカジュアルバー「Third place Livingbar 221(リビングバー つつい)」に集合。

「Third place=家でもない職場でもない第3の居場所」、「Livingbar=人と人を繋ぐ場所・居心地の良い空間」という2つのコンセプトを店名に込め、地元に暮らす人々の憩いの場となっています。

ここでは、弟子屈で暮らす3人のローカルフレンドに、この土地の魅力と、地域をあげて行っている環境課題への取り組みについて教えてもらいました。

ツアーのローカルフレンドであり、弟子屈町公認アナウンサーの川上椋輔さん

まず、弟子屈町の魅力について教えてくれたのは、川上椋輔さん。宮城県出身の川上さんは、アナウンサーとして就職したことを機に、北海道で暮らし始めたのだとか。

その後、コロナ禍を通して生き方や働き方について考えなおした彼は、アナウンサーを退職し、地域おこし協力隊として弟子屈に移住したといいます。

現在は、地域おこし協力隊としての活動を続けながら、弟子屈の活性化を目指す「合同会社BASE CAMP TESHIKAGA」の代表を勤めていると教えていただき、その行動力に驚きました。

川上さんによると、「弟子屈」という地名も元々はアイヌ語に由来しているのだそう。アイヌ語で、「テシカ=硬い岩盤」と「ガ=〜の上」という2つの意味が組み合わさった言葉が、現在の地名となっています。

75%の快晴率を誇る弟子屈町は、北海道のなかでも雪が比較的少ない地域のため、旅行初心者でも訪れやすい場所なのだとか。

さらに、道東の中心部に位置するため、知床や北見、釧路などの人気観光スポットに車で1時間ほどで行けるアクセスの良さも魅力の1つ。

「たんちょう釧路空港」「女満別空港」「中標津(なかしべつ)空港」と3つの空港を利用でき、空からのアクセスにも恵まれています。

また、摩周湖や屈斜路湖、硫黄山、川湯温泉など観光資源が有名な弟子屈町ですが、最近じわじわと注目を集めつつあるのが、地域での「地熱・温泉熱」の活用。

暖房の熱源として温泉熱を利用するだけでなく、マンゴーのビニールハウス栽培や、地熱を利用したイチゴ農園が運営されています。

地域ならではのサステナブルなエネルギーの活用が、環境課題への貢献と地方創生を同時に叶える取り組みとして、話題になっているのだと教えてもらいました。

次に、弟子屈町が行う「持続可能な観光地づくり」の取り組みについて教えてくれたのが、観光クリエイターの木名瀬佐奈枝さんです。

木名瀬さんは、奈良県で生まれ、大学在学中に弟子屈町へ移住してきたのだそう。現在は藁(わら)でできた家で暮らしながら、道東の観光事業に幅広く携わっています。

木名瀬さんによると、弟子屈町では住民主体で観光を盛り上げていたものの、コロナ禍で観光客が過去最低レベルまで落ち込んでしまったのだそう。

そんななか、町民が「このままではいけない」と立ち上がり、自分たちの町に誇りを持ち、観光地としての魅力を高めていくため、平成20年に発足されたのが「てしかがえこまち推進協議会」です。

そんな協議会の活動の一環として行われているのが、「エコツーリズムの推進」。弟子屈町では、エコツーリズムを「地域ならではの資源を地域振興や環境保全に活かしていく観光のあり方」と定義しています。

弟子屈町は北海道では初めて、国の「エコツーリズム推進全体構想の認定」を受け、弟子屈の美しい自然を守りながら、観光を楽しんでもらうための独自のエコツーリズムを築いてきました。

さらに、「サステナブルツーリズム」にも取り組んでおり、世界基準の持続可能な観光ガイドラインを全国的にも早くから導入した先進的な地域としても知られているのだそうです。

そして、最後にまちづくり会社「テシカガタウンラボ」の代表であるローカルフレンドのたーちゃんに、弟子屈町の中心市街地の動きについて教えてもらいました。

「テシカガタウンラボ」では、弟子屈町で事業を行う町民を集め、「自分たちの町を自分たちで面白くする」をテーマに、まちづくりを行っています。

そんな「テシカガタウンラボ」をあげた一大プロジェクトが、弟子屈町の中心市街地に建設予定の、温泉熱を活用した温泉サウナやプール、図書館が併設された複合施設の運営です。

まだ設計段階の施設ですが、このプロジェクトが成功することで、弟子屈町がさらに盛り上がると思うと、ワクワクするお話でした。

■弟子屈について学んだ後は、特製の「摩周和牛」料理やオードブルを囲んで乾杯!

弟子屈についてたくさん学び、おなかもぺこぺこになったところで、ツアー1日目のディナータイムがスタート! この日は、地元で料理人をするローカルフレンドがバーに訪れ、出張レストランを開催してくれました。

今回、ローカルフレンドが振る舞ってくれたのは、弟子屈の特産品である「摩周和牛(ましゅうわぎゅう)」

美しいサシの入ったお肉が並び、ツアー参加者からは歓喜の嵐

弟子屈町内に位置する、世界2位の透明度を誇る「摩周湖(ましゅうこ)」の麓で、のびのびと育った摩周和牛は、柔らかな肉質とさっぱりとした脂身が織りなす絶妙なバランスが特徴です。

さっと焼いて、塩をかけただけのシンプルな食べ方でも、口に入れた瞬間に脂身の豊かなうま味が広がります。数回噛んだだけで溶けてなくなってしまうほどの柔らかさに、思わず感嘆の声が漏れてしまうほど。

そんな摩周和牛を、ステーキやローストビーフ、肉寿司などさまざまな料理で振る舞ってもらい、お肉のおいしさを余すところなく味わいました。

地元のレストランで作ってもらった鮮やかなオードブル

さらに、地元でレストランを営む方が用意してくれた特製オードブルが各テーブルに並び、豪華なディナーを囲みながら、ローカルフレンドとの親睦を深めました。

■おいしいディナーを味わいながら、弟子屈町民のあたたかさに触れ、1日目が終了

丁寧に作られた食事からは、ローカルフレンドのもてなしの気持ちが伝わってきて、おなかも心もいっぱいに。

おいしい食事を通じて、その土地の特産品やローカルフレンドのあたたかさに触れることができるのも、サステナブルツアーの醍醐味の1つです。

食事が終わったあとも、ツアー参加者のみなさんとローカルフレンドが、地域の活性化や環境課題への取り組みについて、熱心に話し込んでいたのが印象的でした。

ローカルフレンドのみなさんも集まって、みんなで記念撮影!

土地を愛する人々と出会い、「自然との向き合い方」を学ぶ時間の重要性

寒さの厳しい真冬の北海道に降り立ち、弟子屈に訪れたツアー初日。町を取り囲む自然の荘厳さに圧倒されながらも、ローカルフレンドの地域愛に触れることができた1日となりました。

この日、お聞きしたなかでも特に心に残ったお話がありました。それは、弟子屈町公認アナウンサーである川上さんがお話してくれた発信への想いです。

「地域の人が『地域の今』を知らない、地域の人が『地域の魅力』を知らない。だからこそ、僕は観光客ではなく町民に向けた発信をしていきたい」

この想いは川上さんが、地震で被災した町にボランティアとして訪れたときに、町で暮らすおじいちゃんに「この町は、外から来たお前たちが、ボランティアをしたくらいでは変わらない。この町を変えるのは、この町の住民たちだ」と言われたことがきっかけに芽生えたのだそうです。

川上さん自身、どんなに魅力的な町に訪れても、その町に住んでいる人にとってはその魅力
が当たり前になってしまっていて、素晴らしさに気がついてもらえないことにもどかしさを感じていました。さらに、川上さんは次のように続けました。

「町は、その町に住む人がそれで良いと思った町にしかならない」

これは、私たちが暮らす地球にとっても言えることではないでしょうか。地球に暮らす私たちが自然の美しさを忘れ、壊されていくことに対して「それでいい」と思ってしまえば、環境は破壊されていくばかりです。

そうして止まることのない気候変動が、いずれ弟子屈の地に降り注ぐ美しい雪すらも溶かしてしまうかもしれません。

私たちは、地球の「今」を知らないのかもしれない。そう考えながら、自然に目を向けてみることが、今回の旅を課題解決に向けた行動変容に繋げる扉になるはずです。

レポート後編では、さらに弟子屈の雄大な自然に入り込み、縄文文化やアイヌの精神世界に迫ります。

(取材・執筆=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)/(撮影=深谷亮介(@nrmshr)、ツアー参加者提供)

高めよう 脱炭素指数!

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