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ショートショート【幽霊になれなかった私】を解説してみた

私は以前、こんなショートショートを上げたのですが、

どうか解説をさせて下さい。

「いや、無名のnoterが自分であげたショートショートの解説するとかなんなん? 」って感じですけれど、私、本のあとがきとか筆者の解説を読むのが好きなんです。

自分でも書いてみたいなって子供の頃から思っていて、完全に自己満足ですけれどちょっとこの機会に書いてみたいと思います。

私の自己満足に付き合ってくださる、コアなフォロワーさん、通りすがりの優しい方、途中まででも良いので良かったら覗いていってくれませんか?

そしたらとても嬉しく思います。
どうか温かい目で見守ってやってください。

解説

生きたいと消えたいがせめぎ合う、そんな日常。

孤独に苛まれ
不安に苛まれ
そして人の目に恐怖する。

消えたくもなるのだけれど、それでもやっぱり生きたい、生きていたいと思う。

消えたいと生きたいの狭間。

だから私は幽霊になった。

言葉を発さず、微動だにせず、人目につかないよう、気づかれないよう。

怒らせないよう、叩かれないよう、落胆させないよう、期待させないよう、縮こまって気配を消して、音を消して、姿を消して。

そして私は幽霊になった。

生きたいと消えたいの狭間、中途半端な気持ちで生活していて、人に怯えて存在を消して生きていたらいつのまにか幽霊になっていた。


あれだけ望んでいたのはずだったのにちっとも嬉しくなんてなかった。

なぜ嬉しくなかったのか?


ふよふよと彷徨う私はしきりに目元を擦った。

『消えたいって望んだのはあんたじゃないか。』

”誰か”の言霊が空気を揺らした。

私は堪えきれずに涙を溢す。

本当は消えたいわけじゃなかった。
人間に戻りたい。
そんな思いから彼女は泣いた。


『私、ずっとずっと寂しかった。誰かに見つけて欲しかった。私を見つけて、私を見て欲しかっただけなんだ。』

言霊として発した私の想いをソイツは嘲笑った。
ソイツに実体なんてなかったけれど、なぜかはっきりと嘲笑われていることが分かった。

本当は消えたいわけでも幽霊になりたいわけでもなかった。

「孤独で寂しかった、でも人が怖い」その辛さから消えたいと願ってしまった。

ソイツはそのことを最初から分かっていたから「愚かなやつ」と嘲笑した。


再び空気が揺れた時、ソイツは先ほどとは違う意味ありげな嘲笑を響かせた。

『だったら見つけてもらえよ。』

言霊は響かなかったけれどそう言われた気がした。

『人々がおまえの存在を認識することができたのなら人間に戻してやる。』

ソイツはそう言いたかった。


『こんにちは。』
道ゆく人に挨拶をした。
やっぱり気づかれない。

『いつもありがとう。』
宅急便のお兄さんに感謝を伝えた。
お兄さんはビクッとして辺りを見回す。

「ねえ、先生。体調悪いから薬を変えて欲しいんだ。」
病院の先生に初めて要望を伝えた。

「今でも充分強い薬出てますよ。」

お、返事が返ってきた。
でも先生はパソコンを見たまま、1度もこちらを見なかった。


ワタシヲミテ。


先生はぎょっとしたようにこちらを見た。

最初はなかなか気づかれなかった彼女だが、踏み込んだ関係になっていくにつれて存在に気づかれ始める。

二重かっこと普通のかっこがあるのにも実は意味があって、二重かっこは幽霊の世界で発する言語「言霊」での会話を表現したかった。

普通のかっこは人間の発語による会話。
だから普通のかっこでくくられている会話では返事が返ってきていてなおかつ人間に戻れている。

でもここではまだ存在が薄い。


「おはよう。今日も暑いね。」
私は学校で初めてクラスメートに話し掛けた。

その子はこちらを振り向くと「おはよう。」って言ってにっこりと微笑んでくれた。

やっと見つけてもらえたことが嬉しくて私はその子の腕を掴んだ。


掴めたんだ。

クラスメートに話しかけたことにより存在を完全に認識される。

その証拠に相手の腕を掴むことができていて幽霊ではなくなっている。



「え・・・? 」

その子は困惑しているような複雑な表情を浮かべ私を見上げる。


私を見つけてくれた。


その高揚感と感謝が思わず口から零れる。

「ありがとう。大好きだよ。」

私はその子の腕をきゅっと握った。

「っ・・・。やめてください。」

でもその手は振り払われてしまった。

「なんか怖いし、気持ち悪いです。」

その子は不快感をあらわにするとそそくさとその場を去ろうとする。

「待って。行かないで。」

私は追いかけたのだけれど、その子は悲鳴を上げながら全速力で逃げていった。

人付き合いが極度に苦手な彼女はクラスメートとの関係がうまくいかなかった原因が自分にあることに気づいていない。

彼女が孤独な原因が垣間見れる。


だって幽霊なんだもん。
怖がられたって仕方がないよね。

そうやって言い訳してみる。

もう幽霊ではなかったが、クラスメートに逃げられたことにいじけている。


それから私はとぼとぼと歩いてうちに帰った。

重たい玄関ドアを開け「ただいま。」と言うと「おかえりー。」と家族の声がした。

私はとっちらかった自室でノートパソコンを立ち上げる。

キーボードを叩いて文字を入力する。

・とぼとぼと「歩いて」いること
・彼女のただいまという声に家族の返事が返ってきていること

などから人間に戻れたことを強調している。


本編を引用しながらの解説は以上でした。


おまけ

このショートショートは現実と創作が入り混じっています。
投稿直後にさっそくそのことに気づいてくださったフォロワーさんがいて、病院のくだりがリアルだと言って頂けました。(す、鋭い!!)


孤独だけれど人が怖い
消えたいけれど、生きていたい

そんな相反する私自身の想いを創作に反映させたかったのでこのショートショートを書きました。


最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
深く感謝、申し上げます。



タイトルは「幽霊になりきれなかった私」の方が内容にあっているけれど、でもやっぱり「なれなかった」のほうが語呂がいいんだよなぁ。




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