ケンシロウ

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ライター/編集者。文芸、映画、写真、事件、スポーツなどについて書いていきます。 書評その他のレビューサイト「あしかレビュー」( https://asikareview.com/ )を運営

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中学受験生が読むべき本とは? 国語出題ランキング付き

2月も後半になると私立中学の入試は一通り結果が出て、受験生のいる家庭はほっとしているところでしょうか。あるいは2次募集に挑むため未だ緊張が解けないという家庭もあるかもしれません。 我が家の長男は昨年春に入試を経験し、現在中学1年生。妹は小学四年生で塾に通っています。再来年の2月にはもう一度あのハラハラする気分を味わうことになるはずです。 長男は、読書が大好きで、小学6年生になると、東野圭吾など大人向けの小説にまで手を出すほど。そのため国語で点を稼ぐタイプでした。読書はほど

    • ヘミングウェイ『老人と海』 人生は厳しい、それでも闘い続ける理由とは

      この夏に小学生の娘が読書感想文を書いている姿を見て、中学2年生の夏休みに、ヘミングウェイの『老人と海』を読んだことを思い出した。新潮文庫の福田恆存訳だった。自分がそのときどんな感想文を書いたか思い出せない。40年近く前のことだ。 この本を選んだのは、自分の趣味である釣りが題材になっていたから。本の薄さも気に入った。夏の午後、エアコンのない部屋で扇風機の風に吹かれて、汗を流しながら読んだ。作品の舞台であるキューバのぎらぎら光る太陽とうだるような暑さが重なる。 不遇の日々を乗

      • 村上春樹『風の歌を聴け』を読み解く 猫と不幸な女について 1

        村上春樹『風の歌を聴け』(以降、『風』)には、音楽や映画、小説が多数登場する。「カリフォルニア・ガールズ」「熱いトタン屋根の猫」「魔女」「ガルシアの首」「コンボイ」「尼僧ヨアンナ」……。ほかにジーン・セバーグやJ.F.ケネディといった著名人への言及も目立つ。 登場人物は、こうした作品や人物について何やら意味有り気に語る。しかし、内容について深く説明するわけではないので、読者は素通りしてしまいやすい。個々の作品や人物について知らなくても、小説を読み進めることはできるからだ。

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        • 在宅勤務と昼休みキャンプ

          「そうだ。メスティンを持って昼休みに河原に出かけよう」――。 リモートワーク中の4月の午後、ふと思い立った。メスティンで昼食用のご飯を炊いて河原や公園で食べる。仕事の合間に、自然に触れてリフレッシュできる。そんな空想が広がった。なんだったらノートパソコンも持参して企画書を作ってもいい。良いアイデアが浮かびそうだ。 休暇を取って、車に道具や食材を積み込んでキャンプ場に行く。そんな気合を入れたキャンプは楽しいけれど、そうそう行けない。それにちょっと疲れる。もっと気軽に、日常生

        中学受験生が読むべき本とは? 国語出題ランキング付き

          江戸川散歩 #1 バスケットのゴール

          2020年4月から在宅勤務が基本になり、平日に外出する機会がほとんどない。部屋に閉じこもってひたすらパソコンに向き合っているので、運動量がめっきり減り太ってしまった。駅まで歩き、オフィスで階段を上り下りし、デスクとプリンターの間を往復する、これだけでもかなりのカロリーを消費していたことが今は分かる。   昼食後の30分。運動不足を解消するため、自転車で江戸川沿いを走ることにした。短い時間だから力を入れてペダルをこぐ。自転車を降りたら少し歩いて、自然や街の風景を観察する。それを

          江戸川散歩 #1 バスケットのゴール

          批評家の自分探しとファミリーヒストリー 書評・江藤淳『一族再会』

          江藤淳『一族再会』(講談社文芸文庫)の書評。文芸批評家は、言葉のリアリティーを取り戻すため、日本の近代化に翻弄される一族の歴史の中にアイデンティティーを探し求める。 「言葉の源泉」を探して 自分の言葉がどこか嘘っぽい、言葉を費やしても対象を言い当てている手応えを得られない。こんな風に言葉からリアリティーを感じられないとき人はどうするか。  文芸批評家・江藤淳にもかつて自分の言葉を信じられない時期があった。1973年に上梓した『一族再会』(講談社文芸文庫)で次のように問う。

          批評家の自分探しとファミリーヒストリー 書評・江藤淳『一族再会』

          最高の刺し身は釣り船の上で

           小学生の頃、夏休みになると叔父が海釣りに連れて行ってくれた。その時食べた刺し身の味を今でも鮮明に覚えている。大人になって、様々な刺し身を食べてきたが、このときを超える味に出合っていない。  その日は、愛媛県のとある漁港から叔父さん、私、弟の3人で乗り合い船に乗り込み、朝早く出発した。客は各自、米と野菜を持参することが条件になっていた。沖に出ると、早速竿を出し、小エビを針に刺して海に落とす。おもりが海底に着くと少しリールを巻いて糸ふけを取り、竿をゆっくり上下させて当たりを待

          最高の刺し身は釣り船の上で