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在宅勤務と昼休みキャンプ

「そうだ。メスティンを持って昼休みに河原に出かけよう」――。

リモートワーク中の4月の午後、ふと思い立った。メスティンで昼食用のご飯を炊いて河原や公園で食べる。仕事の合間に、自然に触れてリフレッシュできる。そんな空想が広がった。なんだったらノートパソコンも持参して企画書を作ってもいい。良いアイデアが浮かびそうだ。

休暇を取って、車に道具や食材を積み込んでキャンプ場に行く。そんな気合を入れたキャンプは楽しいけれど、そうそう行けない。それにちょっと疲れる。もっと気軽に、日常生活の延長でゆるーくキャンプ気分を味わえたら楽しいのに、と常々思っていた。在宅勤務のおかげで、そんな日常に近いキャンプを実践するチャンスがやってきた。

2020年春から私の職場は原則、在宅勤務に移行した。そのため職場近くの飲食店を巡ったり、フードトラックで売りに来る弁当を選んだりするというランチタイムの楽しみを失った。

妻は仕事で朝からいない、子どもたちは学校。家にいるのは私一人。昼食はほぼ毎日、自宅だ。定番は、手軽に用意できるレトルトカレー。高カロリーな昼食に、歩く機会が減ったことが重なって少し太った。無理もない。地下鉄の階段を上り下りするだけでも、それなりのカロリーを消費していたことを実感する。

そんなある日、ネットショップを検索していて、「メスティン」のページを開いたところで手が止まった。ひと目見てびびっと来た。「これはよさそう」と直感した。

メスティンは、アルミ製の飯ごうで、ポケットストーブと固形燃料を用意し、着火して20分ほど放置しておけば米が炊ける。少し調べると、キャンパーの間ではかなり人気らしく、メスティンを使ったレシピ本なども出ている。いろんなメニューを楽しめそうだ。

早速届いたメスティンを使って、まずは自宅のベランダで米を炊いてみる。ダイエット中の身には、米の量は0.7合ぐらいがちょうど良い。水の量は、200mlだと米が柔らかくなり過ぎた。180mlで好みの硬さになった。何度か試行錯誤した結果、かなりおいしく炊けるようになった。こんなプロセスも楽しい。

5月のある日。朝から良い天気だ。いよいよ「昼休みキャンプ」を実行する。

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ママチャリに乗って、近所の河原にでかけた。米は、自宅で仕事している間にメスティンで炊いたものを持っていくことにした。蒸らしている間に河原まで到着する計算だ。本日は、缶詰の焼き鳥を載せただけのシンプルなメニュー。あくまでも日常の延長だから時間や手間をかけないことが大切だ。

よく晴れた河川敷では、空高くでひばりがさえずっている。米に焼き鳥のタレが染みておいしい。おこぼれを狙って、カモやスズメ、ハトなどが寄ってきたので、米粒を少しだけ分けてあげる。のどかな気分になる。

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別の日には、ノートパソコンを持参した。キャンプ気分のリモートワークだ。この日は、ネットで購入したカツオの切り身を載せて、漬け丼にした。水筒には温かいお茶を入れてきた。川面を渡る5月の風は、まだ冷たい。お茶で体を温めながら、しばらくキーボードを叩いた。

リモートワークになってから、メールのやり取りが格段に増えた。対面で会話できない分、密なコミュニケーションが要求される。急かされた気分でメールを送るので、少しずつ言葉足らずになる。相手も同様らしく、送られたメールを見て刺々しい気分になることも少なくない。陽の光を浴びて、風に吹かれていると、いやな気分が消えていく。穏やかな気持ちになり、メールの文面も優しくなる。間違いなく仕事に良い影響がある。

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週末のある日、長男は塾のリモート授業があるが、娘は予定がないというので、ランチキャンプに誘った。メスティンでいつもより多めに米を炊いて、二人で自転車をこいで河原へ繰り出した。2合まで対応しているので、二人なら十分だ。この日は、妻が出勤前に弁当箱に詰めてくれたおかずを持参した。

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娘には、皿の代わりにメスティンの蓋にご飯を盛り付ける。ちょっと多いかなと思ったが、あっさりと平らげた。育ち盛りはさすがによく食べる。この日は、少し遠回りして河原をサイクリングした。向かい風の中長時間走ったので家に着く頃にはもうお腹が空いてきた。

外出がままならない生活の中でも、メスティン一つでキャンプ気分を味わえる。家に閉じこもってばかりで、ストレスを抱えたリモートワーカーには、昼休みキャンプで午後の風に吹かれることを提案したい。

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