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墜落

ここがどこかわからない
見渡す限り岩と氷だ
どうやら突端にひっかかり
今にも滑り落ちそうだ

空気は薄く朦朧とする
遠くから声がする
やっときたね
手招きが見える


僕は飛んでいたはず
海と大陸を続けざまに越え
昼も夜も区別なく
誰とも交信しないままに

灯りが見える
反射はない
あれはたしかに
地上の光だ

でも声がした
降りてしまえば
二度と飛べない
まやかしの休息だと

僕はただ
凍った翼で暗闇をいく
氷点下の空気と
あの清潔な星を友として

僕は耐えた
孤独がなんだ
これは闘いだと
飛び続けた

美しさは僕のもの
偽りのない純粋さ
小さな輝き
壊れないもの


あともう少しだろう
凍えるか滑落か
せめてあの岩の上へ
鳥に見つかるように

ああギヨメ
あなたがうらやましい
嘘じゃない
ほんとうにうらやましい

山腹に墜落する直前
警告が聞こえた
己を愛せよと
僕は間違ったんだ





#詩 #創作 #山 #海 #鳥 #飛行機 #翼 #氷





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