徒然 私の『村上さん』はどこにいる
Aマッソという芸人を知っているか。
昨年の女芸人No.1決定戦 THE Wの決勝進出者であり、衝撃的なネタをしたことでTwitterのトレンドにも入った芸人だ。
そして、今、私の最推し芸人だ。
(最近、宣材写真が変わって最高すぎるめっちゃいい2人が伝わる写真になりました)
右側がネタ作成者である加納愛子。
左側が村上愛。
2人は小学校からの幼なじみだ。
女芸人、というジャンルではないネタを重ねる、確実に人気が出る、既に少しずつ一般にも認知され始めたのではないか、というこの2人は本当に面白い。
最近、ネタ番組でよくやっているネタはこれではないだろうか。
Aマッソの味がする。
この動画の単独ライブは、アーカイブ期間に毎日見たと言っても過言ではないぐらい、面白く面白く面白いライブだった。
このネタも加納さんのイカれていて、頭のおかしい世界観を感じられるのでぜひ見てほしい。
漫才もコントもやる彼女たちは、完全に加納さんがネタを作っている。完全に。
加納さんは、同志社大学を中退している。
文學界で短編小説を発表するような文才のある人間だ。
心底羨ましい。
あんなに面白いネタが書けるのだから、文章も書けるのは当たり前だけど、本当に羨ましい。
初めてのエッセイ本は、即重版って。
なによー!もうー!
と、文章を書くために大学に通い勉強している身としては悔しさすらある最近の加納さんの活躍は、私を実に刺激する。
(こちらでも読めるそうなのでぜひ)
彼女は、尖っている。
大学にランドセルで通う、成人式に「振袖なんて」と出ない、そんな尖った人間だ。
先にあげたネタだけでも伝わる異常さ、
ただ普通には転ばんぞ、よくあることなんてしないぞ、誰にも思いつかないようなことをしてやろう、そういう思考が感じられる。
Aマッソの存在を知ったのは、兄からオススメされたからだった。もうなんの記憶もないけれど、確か兄が単独ライブに行ったんだった。その前から教えられていたか?
そう、そうだ。ゲラニチョビだ。
これがめっちゃ面白いから見ろって言われたことから始まった。
そして、次第に好きになり、ずっとYouTubeをつけているような日々が始まる。
でも、その頃、Aマッソは炎上した。
大坂なおみさんを揶揄したネタにしてしまったから。
ライブの漫才で、人種差別的なことをネタの中に入れてしまったから。
正直、炎上しそうな人達だ。
それは、ギリギリを攻めることを目的にしているからだろう。
今までのお笑いはそういう文化だった。
でも、今は時代が変わってそういうのが許されない時代になった。
価値観の変動は大事だ。
そうして、時代に順応していく。
それでも、なお、加納さんは攻めた笑いをする。
テーマのギリギリを攻める。
「お題のギリギリを攻めたいんよね、1個目に考えるような文章は書きたくない。テーマがあれば、それから限りなく遠いけど繋がってるものを書きたい。なんで、思考1周目みたいなものが評価されるんだよ!それじゃダメだろ!」
私がコピーライトの授業を受けて思ったことを言うと、兄は「加納さんと似てるなぁ」と言った。
加納さんもそうなんだ。
「とかげは、加納さんみたいだよね、凄いよ、めちゃくちゃ考えてめっちゃちゃんとした作品作ってて」
そんなことを言ってくれる。
「同期がわかりやすさしか求めてない、面白さがわかってない、考えることの面白さを求めてない、簡単な面白さだけしかないんだよ」
私は、同期との価値観の違いに悩んでいた。
分かりやすいドラマチックだけを求める人が多かった。
私は芸術大学の文芸学科という小説家を目指す人の多い場所に通っている。だから、期待していたんだ。
もっと『面白さ』を求める人が多いのだろうって。
それは違ったんだ。
学科で出会った人は小説を読む人が少なかった。小説を書く人が少なかった。素敵っぽいものを求める人が多かった。
そして、彼女たちは、私の作品を「わからない」と批判した。
それが悲しくて、仕方なかった。
分からないことはしていない。
私は出来るだけ面白いことがしたかった。
読んでいて裏切るような、ちゃんとオチがつくような、そういう話を書きたかった。
前提があるのなら、条件があるのなら、その裏をかきたい。
みんなが考えること、を一歩抜けた場所に行きたい。
例えばこの作品。
【絵を見て情景描写をしよう】というお題があるのだとしたら、創作していいとしても別の描写は入れたくない。ここに描かれていることのみで、見方を変えたい。写真だとしたら、目線は自分。そこを変えたら、この絵のまま傍観者の妙が出てくるだろう。
なんて考える。
他にもこういうのがある。
【六枚の写真から選んで短編小説を書く】というお題に対して、
出来ること。
別に写真使用の最高枚数の指定はない。
普通なら一枚を選ぶだろう。
だったら、全部を使ってオチをつれたらすごくない?
そんなことから考える。
こちらも【絵を見て創作描写】
こちらは、目が行くのはクマの後ろ姿だ。
絵の作品としてその背中がすべてを物語る。
としたら、この作品から小説を書く場合、そこから始めたらありきたりだろう。絵の強さに負けていると言える。
なら、別の目線で書こう。別の人を主人公に持ってこよう。
その思考と共に、
「鳥の目が怖いな」が現れる。
一見幸せそうな絵。
それが、監視下の社畜のような怖い場所だったら、このポップな絵すら恐怖をより引き立てるのではないか。
そんな思考を働かせる。
そして描いた作品だ。
しかし、これらの作品はゼミ生の半分に理解されなかった。
その切なさに私は叫んだ。
「何故、こんなに面白い作品を書いているのに理解されないのか!もっと面白いと言ってくれる人がいてもいいのではないか!」
私の思い上がりだと言われても仕方ないけれど、私は私が満足いく作品を作り最高に面白い作品だと思っている。
私は赤の他人の理解者を求めていた。
兄は時折そんなことを言った。
AマッソのYouTubeを見てて、私も強くそう思う。
本当にそうなんだろうって。
この感覚の根拠はどこから来るのか。
全部、私たちの妄想かもしれない。だけど、実際にそうなんだと思うんだ。
それは何故か。
ラーメンズの小林賢太郎が相方片桐仁に同じことを言っていたからだ。
ラーメンズが大好きだった。今だって本当に素晴らしいコントだと思う。
このコンビの凄さは、小林賢太郎の作るコントだろう。
言葉遊び、面白いことを追求しようとする姿勢、真剣な物語、そういうのが小林賢太郎だ。
だけど、彼一人ではラーメンズではない。
あの面白さは、片桐仁の存在があるからなのだ。
ネタは作っていない。だけど、存在が面白い。素が面白い。
そして、小林賢太郎は片桐仁で面白いことがしたかった。
そう言っていた。
それはとても素敵な関係だ。
きっと、これはAマッソにおいてもそうなのだと思う。
ラーメンズとAマッソに私は近いものを感じるのだ。
最愛のお笑い芸人。
小林賢太郎も加納愛子も面白いことを追求することに全力をかけている。
そして、個人の活動もすこぶる調子がいい。
一人でもいい作品が作れる人間だ。
だけど、私たちは相方との絡みを見ていたいと思う。
それは、その時がより輝いて見えるからだ。
村上さんは何も考えてないように見える。
ネタも作らない。ネタを作っている加納さんの横で、スマホをいじっている。
そんな村上さんを加納さんは甘やかすのだ。
村上さんにネタを考えろ、なんて思わない。
そして、村上さんも加納さんにおんぶにだっこであることを恥じないし、加納さんに対してコンプレックスを感じていない。それは、この動画を見てもわかるだろう。
たぶん「加納、すごいな~」って思っている。
そして「村上、すごいな~」って思っている。
そう、そうなんだ。
私にも村上さんのように「何かわからんけどめっちゃ面白い存在」が欲しい。そして、その人が「なんかわからんけど、とかげ、おもろいわ」と思ってくれるような関係が欲しかった。
Aマッソは、小学校からの幼馴染。
ラーメンズは、芸術大学時代からの仲間。
いまのところ、私にはそんな存在がいない。
いまのところ、私を理解してくれる人は現れない。
言葉を尽くして、友達を増やして、会話をしても、まだ現れない。
家族や先生には認めてもらった。
だけど、それでも『仲間』はいないのだ。
相方が欲しかった。
きっと、これから現れる。現れると信じている。
だけど、少し不安を感じ始めているんだ。
コロナにより、やっと入った大学は入学式も新歓も文化祭もなくなった。
サークルに入ることもできずに大学二年生の夏も終わってしまった。
出来ることなら、いくつものサークルに入って適当に、でもたくさんの人と関わって、仲間を見つけようと思っていた。
だけど、上手いこと行かず入れていない。
せっかくなら、ミルクボーイやななまがりを輩出した落研に入りたかった。
んん~。
今からでも入れるはず。
入れるはずだけど、やっぱりビビってしまう。
だけど、ビビっていたらダメだろう。
少しだけ仲のいい男子で、今年ゼミが同じ子が落研に入ってた。
だから今日「どんなかんじ?」って聞いてみた。
彼にも相方がいる。だけど、全然活動できてないそうだ。
「今からでも入れると思うけど」そう言われた。
私は乗り込んだ方がいいだろうか。
兄に「コントを書いてほしい」と言われた。
誰かコンビを想定して書いたらいいよ、と。
そして、「Aマッソでやってみて」
やってみようと思う。
今からでも遅くない。
だけど、私は虚無と二人でコンビを組んで、コントをやるのだろうか。
やっぱり、本当の相方が欲しい。
適当に理解してくれて、「面白いと思うぜ」なんて言ってくれる人がいたら、嬉しいのです。
きっと、そうしたら、私はもっと生きやすくなるだろう。
そういう人とぶつかって、話し合って、解決して、作り上げる。
そういうのがしたいんだ。
もともと、演劇がしたかった。
人と作品を作り上げることがしたかった。
そもそも、私は一人で小説を書くなんて向いていない!面白がりたい!
すぐに感想が聞きたい。会話がしたい。
コンビって素敵だと思う。
お笑いが大好きなんだ。
なんて、ことを書きたいなと思っていたらAマッソが結婚していたということを明らかにした。
マジかよ。ちょっとショックがあった。それは驚きでしかない。
彼女たちは、モテない女をネタにする必要がない、女芸人は不幸せであるべきだの枠から外れる存在なんだ。
ただの芸人なんだ。
『女芸人』という型から外れてくれる存在なんだ。
ただ、そのニュース記事で『人妻コンビ』と書かれているのはなんか、もう、めっちゃジェンダーだなって思う。
男性芸人が結婚してたとしても『人旦那』なんて言わない。そもそもそんな言葉はない。だからきっと『既婚者』と言われるだろう。
バンドbacknumberは『全員既婚者』とTwitterとかで書かれていた。
『人妻』という言葉は、男性の所有物である。
所有者が判明した!という感じ。
ああ、嫌だな~って思う。
でも、あのAマッソが「人妻」といじられるのは面白いとは思う。
とにかく、Aマッソは面白い。
きっと、これからめっちゃテレビに出て、当たり前の存在になってくれるだろう。
企画力もMC力も実力のあるコンビだ。
男性コンビの冠番組が当たり前にあるけれど、やすともぐらいじゃないか!女性芸人の冠番組って!あと、ハイヒール!
なにわの芸人の次はAマッソだ。
そんなことより
私にとっての『村上さん』はどこだ!
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