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SS『窓の外の』

目的地に進む電車の中から外を見た。すぐ横に山がある。木、木、木⋯。そのなかに、小さな鳥居とお社が見えた。
一瞬の時間だったのに非常に心が引かれ、不気味に思うと同時に美しいと感じた。
森の中の道を歩いている。どこかは分からない。けれど怖くない。人はいないし、近くに家があるとは思えない。自分が歩いている道はしっかりと舗装されている。立ち止まることはせ
ず、この道を進む。
すると少し開け、小さな鳥居が現れた。
「ああ」
僕はなにかに納得した。鳥居の前で足を止める。暖かくも寒くもない。空気は澄んでいる。
背後でカサっと音が鳴った気がした。振り向くが何もいない。
鳥居の端を通り歩く。少し暗い。けれど道はしっかり見える。
お社が現れた。そこで女の子がこちらを見て笑っている。
これは夢だ。そう僕は知っていた。実際の僕は何をしているんだったかな。そんな事を思いながら女の子に笑い返した。少女は嬉しそうにクルッと回って消えた。
ただ金木犀の香りが残っているだけだ。
さあ、起きなければ。

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