ポジティブ心理学の5つのエクササイズ介入研究 -半年間に亘る比較調査でわかったこと-
こんにちは。紀藤です。本記事にお越しいただき、ありがとうございます。
さて、本日ご紹介の論文は、2005年のポジティブ心理学の比較的初期の論文です。
し、それが幸福度や抑うつにどのような影響を与えるのかを半年間に亘って調査をした、興味深い論文となっています。
ということで、早速見てまいりましょう!
30秒でわかる論文のポイント
本論文は、ポジティブ心理学の有効性を検証するものである。具体的には、ポジティブ心理学の介入が、幸福度と抑うつにどのような影響を与えるのかを調べた。
成人577名に対し5つのエクササイズを割り当てた。エクササイズの内容は、1)感謝の訪問、2)人生でよかったこと3つ、3)最高に輝いていた時の自分、4)強みを新たな方法で活用する、5)強みの特定である。
そして各エクセサイズの実験群にて、介入前~介入6ヶ月後まで定期的に幸福度と抑うつの変化を調べた。その結果、3つの介入(上記1,2,4)が幸福度と抑うつに影響を与えることがわかった。
なお、これらの介入は単発ではなく、複数を組み合わせる「ショットガン効果」を狙うことが有効だと思われる。
ポジティブ心理学が登場して5年目の話
「ポジティブ心理学」とは”人間の力強さや生きがい、最高の自己を引き出すための心の状態を研究する”ということで、2000年に生まれた新しい学問です。
それまでの心理学は、マイナスから元に戻す”治療”的な色合いが強かったところ、人間の可能性を追求しようということでセリグマン博士が提唱し、急速に市民権を得てきました。
そして、今回ご紹介の論文はその発足から5年経った2005年に、どのような進捗がポジティブ心理学の研究において見られたのかをまとめた論文になります。
それから時間も経っている今であれば、研究はもっと進んでいるでしょう。
しかし読んでみると、「なるほどなあ」と納得してしまう内容が多分に含まれており、また、今の研究へのバトンが渡されていると感じます。
では、どんなことがこの論文に書かれているのでしょうか。
本研究の内容
この論文では、インターネットで募集をした577名に対して行った実験と、その定量的な結果を示しています。具体的な内容としては、以下の通りです。
調査概要
◯調査する内容
1,「幸福度」
・スティーン幸福指数という新しい尺度(20項目)を開発
・3種類の幸福な生活(楽しい生活、夢中になれる生活、意義のある生活)を測定した。
2,「抑うつ度」
・CES-D症状調査(Radloff, 1977)を用いた
◯研究の参加者
・成人577名
(男性42%、女性58%。白人が77%、年齢は2/3(64%)が35~54歳。
学歴は39%が四年制大学の学位、27%が大学院の学位を持っていた。
参加者の約3/4が所得水準を「平均」以上であった))
ポジティブ心理学の5つのエクササイズの実践
そして上記の参加者を、6つのグループにわけました。プラセボ対照群(1グループ)+ポジティブ心理学介入の5つのエクササイズ(5グループ)にわけて、以下のエクササイズを行ったのでした。
結果
では、上記のエクササイズを行った結果わかったこととは、一体どのようなことだったのでしょうか?
結論としては、「5つ中、3つのエクササイズが効果があった」となりました。以下まとめてみます。
2つのエクササイズ(【人生でよかったこと3つ】【特徴的な強みを新たな方法で活用する】)は、6ヶ月間幸福感を高め、抑うつ症状を減少させた。
1つのエクササイズ(【感謝の訪問】)は、1ヶ月間、大きく幸福感を高め、抑うつ症状の減少させた。
また、全体としてプラセボ対照群を含めて、「テスト直後」により幸福度が高く、より抑うつ度が低い傾向がありました。プラセボ対照群のワーク内容(初期の記憶を思い出す)も幸福度は一時的に高まりましたが、一週間後とそれ以降はベースラインに戻る結果となりました。
まとめ
継続してこそ意味がある
さて、この実験は後日談(?)があるようでした。実験では参加者に対して「指定されたことを1週間行うように」と伝えていました。しかし、6ヶ月の終了時に聞くわけです。「ほんとに1週間だけやりましたか?」と。
すると、自主的に継続している人も存在しており、データをとってみると、実践を継続することが幸福度スコアに優位な影響を表していたことがわかった、とのこと。つまり、続けていた参加者が最も幸福度が高かった、と言う結果になったそうです。
「ショットガン効果」を狙え
また、ポジティブ心理学に関わる先駆者たちは、複数のエクササイズを重ねて行う「ショットガン介入」によって幸福度が高まることを示しました。
今回のエクササイズは1グループ1エクササイズでしたが、これを複数重ねて実施すると、相乗効果によって、より効果を発揮することが期待できるだろう、としています。
たとえば、「感謝の訪問」などは、1ヶ月間の効果は非常に高いため、スターターとしてはよいかもしれないですし、6ヶ月間で徐々に高まっていく「人生のよいこと3つ」「特徴的な強みを新しい方法で活用する」などは、日々の習慣として組み込むとよいのかもしれません。
ということで、本日の研究は「ポジティブ心理学(強みの活用を含む)」の介入が、幸福度と抑うつに影響を与える、というお話でございました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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