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「強み開発のリフレクテッドベストセルフ」の介入検証 ~フィードバックの情報源と内容はどのようなものが望ましいのか?~

こんにちは。紀藤です。本記事にお越しくださり、ありがとうございます。
さて、本日も強み論文のご紹介です。強み論文100本ノック、29本目です。

今日のテーマは、先日の記事でもご紹介した強み開発の「リフレクテッドベストセルフ・エクササイズ」の介入の効果の検証です。それでは早速みてまいりましょう!

(ちなみに「リフレクテッド・ベストセルフ」なるものが何かということは、こちらの記事をご覧ください)

<今回ご紹介の論文>
『思春期リーダーを対象としたリフレクテッド・ベストセルフのフィールド実験:フィードバックの情報源と内容に関連する心理的リソースを探る』
Spreitzer, Gretchen, John Paul Stephens, and David Sweetman. 2009. “The Reflected Best Self Field Experiment with Adolescent Leaders: Exploring the Psychological Resources Associated with Feedback Source and Valence.” The Journal of Positive Psychology 4 (5): 331–48.


30秒でわかる論文のポイント

  • 本研究は、108名のリーダーシップコースに通う高校2年生(=思春期リーダー)を対象に、リフレクテッド・ベストセルフ・エクササイズの有効性を検証するものである。

  • 具体的には、(1)フィードバックの内容(長所のみ or 長所+改善点)、(2)フィードバックの情報源(専門家 or 専門家+個人的な関係)によってどのような変化が生まれるかを検証した。

  • その結果、専門家+個人的な関係の情報源の組み合わせのフィードバックのほうが、よりポジティブ感情・主体的資源・関係性資源に関連するという結果になった。

リフレクテッド・ベストセルフの効果を生み出す3つの資源

リフレクテッドベストセルフ(映し出された最高の自己像)の構成を促す3つの資源があります。それが、以下の3つです。

1,ポジティブ感情の資源(喜び、好奇心、希望、感謝などの感情)
2,関係性の資源(他者との繋がりの基盤となる対人関係の質)
3,主体性の資源(自分の人生に影響を与える出来事をコントロールできるという能力があるかについての信念)

これらによって、人は自らの経験や幅を拡げ、「最高の自己像」なる自己概念の一部を改定し、アップデートすることができます。そしてこのことにより、自尊心や自己効力感、幸福度などに影響がある、とされています。

さて、リフレクテッド・ベストセルフは「リフレクテッド=映し出された」という名前の通り、「他者からのフィードバック」等によって、自らの自己概念は、改定されていきます。

としたときに、そのフィードバックの情報源や内容によって、アウトカムが変わってくるのでは?というのが本論文で検証しようとしたことです。

具体的には、「フィードバックが誰から行われたか(上司なのか親しい友人なのか)」は上記の3つの資源の「関係性の資源」に関わると想定されます。また「フィードバックがどのように行われたか(長所のみ or 長所も改善点も」は、「ポジティブ感情」に影響すると考えられるわけです。

そのような背景から、以下のような仮説を立てました。

研究の仮説

フィードバックの情報源 ー専門家のみ vs 専門家+個人的な関係

(仮説1a)専門家と個人的な情報源からフィードバックを受けた人は、専門家だけからフィードバックを受けた人よりもポジティブな感情を経験する

(仮説1b)個人的な情報源からフィードバックを受けた人は、専門家のみからフィードバッ クを受けた人よりも、より多くの主体的資源を経験す

(仮説1c)専門家と個人的な情報源からフィードバックを受けた人は、専門的な情報源のみからフィード バックを受けた人よりも、より多くの関係的資源を経験する

フィードバックの内容 ー長所のみ vs 長所+改善点ー

(仮説2a)強みに基づくフィードバックのみを受けた人(強みに基づくフィー ドバックと改善に基づくフィードバックを受けた人)は、強みと改善が必要な領域に関するフィードバックを受けた人よりも、より大きなレベルのポジティブ感情を経験する。

(仮説2b)強みに基づくフィードバックのみを受けた人(強みに基づくフィードバック と改善に基づくフィードバックを受けた人)は、強みと改善が必要な領域に関す るフィードバックを受けた人よりも、より大きなレベルの主体的資源を経験する

調査方法

◯参加者:
111名の高校2年生(ミシガン・ユース・リーダーシップコースに参加、平均年齢14~15歳、公立高校出身が83%)

◯設計:
リフレクテッド・ベストセルフ・エクササイズ(以下RBSE)について、各条件に割り当てるフィールド実験を行った。上記のフィードバックの情報源と内容に従って2✕2の研究デザインを利用した。

※個人的な関係=友人、家族、同僚、チームメイトなど
 専門家=教師、上司、コーチなど

条件1:参加者は、「個人的な関係」と「専門家」からから「自分の最大の強み」に関する話を2つ聞くよう求められた

条件2:参加者は、「個人的な関係」から「自分の最大の強み」に関する話を2つ求められた

条件3:参加者は、「個人的な関係」から、「自分の最大の長所」と「自分がどのように改善・ 成長できるか」について、2つ聞くよう求められた

条件4:参加者は「専門家」から、「自分の最大の長所」と「自分がどのように改善・ 成長できるか」について、2つ聞くよう求められた


◯手順:
上記、条件1~4のそれぞれの条件下において得られたフィードバックを読んで、「最高の自己像(リフレクテッドベストセルフ)」を作成するように求められた。例えば以下のような、「最高の自己像」が提出された。

<最高の自己像の例>
自分に自信があり、人々を助けるために働いているときが、自分のベストな状態だと感じている。私は良いことをすることに憧れ、人々の集団の中で懸命に働き、その見返りとして、他の人々にも懸命に働き、ベストを尽くすよう鼓舞する。人助けをしているときは、自分自身のことをとても良く思っているし、自分が助けている人たちに誇りを感じている。自分に自信を持つことは、他人を貶めることなく、自分の目標を設定し、それがどんなに困難なことであろうと、何が必要であろうと、いつかは必ず達成できると確信することにも大いに役立っている。

その上で、行動計画を立てて、発表するようなワークを行った。

◯測定した内容
・介入前と介入後で、以下の項目を測定した。

1)ポジティブ感情
2)エンパワーメント
3)性格特性的強み_勇気
4)性格特性的強み_愛情
5)性格特性的強み_親切さ

、スコアと、並びに行動計画の記述内容から測定をした。

調査結果

結果については、以下のような内容となった。

◯仮説1 → 支持された
幅広いフィードバック上情報源を持つ条件(個人的+専門家)の参加者は、専門家のみの条件と比較して、よりポジティブ感情的、主体性資源、関係的資源を報告した(仮説1をある程度支持した)

◯仮説2 → 支持されなかった
フィードバックの価値に関する 仮説2a-2bはほとんど支持されなかった
。 強みに基づくフィードバック(長所)のみを受けた条件の参加者は、よりポジティブ感情を報告すると予想されたが、実際には、長所+改善点のフィードバックと改善フィードバック を受けた人に比べて、よりポジティブな感情を報告しなかった。

介入前後の各スコアの変化


RBSEと3つの資源の間において、フィードバックの情報源と内容がどこに影響を及ぼすかをモデル化したものです。

まとめ

この論文の結果、

1)「幅広い人からのフィードバックのほうがよりポジティブ感情への影響がある」
2)「強みのみのフィードバックより、強み(長所)+改善点のフィードバックのほうが、ポジティブ感情、関係性資源、主体的資源、いずれにもポジティブな影響がある」

という結果は、フィードバックの情報源・内容ともに、広く、率直に色々もらえることが、個人の成長にも資するということを示した論文であったと感じます。強みのフィードバックは感情に影響を与えるので、優先したほうがよいものの、フィードバックには改善点もあると、より効果を発揮することが示された論文で、何事もバランスが大事であることを考えさせられました。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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