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植物癒しと 蟹の物語 小林大輝著


この時代だから、生まれた寓話。


自分の声が聴こえなくなったとき心の植物を癒やす旅が始まる ——

“がんと向き合う家族が小説家に依頼し完成した「生きる」ことについての物語”
限りある「いのち」と向き合うことは、「いかに生きるか」を問うこと。
ファンタジーや寓話という手法で語られる文学作品『植物癒しと蟹の物語』は、
混沌としたこの時代のノイズの中に響くコトバを与えてくれる。

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COMMENTS ~コメント紹介~
この物語を読んだ方たちから寄せられたコメントをご紹介します。


自粛中、家の中で、庭で、ぼんやり考えていたことの答えを言葉にしていただいたよう。
かちかちになっていた心を優しく解きほぐしてくれました。
コトリンゴ (音楽家)

「声」を聞けるとはどういうことか。
言葉や意味の奔流の中で、「声」はいつもかき消され、届け先に行き着かない。
本書の読者は、震えるような足取りで「声」が湧き出る源泉へ降りてゆく、
ひとつの孤独な精神に出会うことになるだろう。
平川克美(文筆家・隣町珈琲)


僕が15才の春だったろうか。父は短冊に墨で『自然と共に歩め』と書き、
多くを語らず僕の机の前に張った。
古本癒しであった父が透明になる前のこと。
関口直人(カフェ「昔日の客」オーナー)

ここにいなくなったあとの余白で、
つなぎとめたい想いと離れてゆく寂寞をすみずみまで味わっていたい
花本武(今野書店)


自分だけでなく誰かの苦しみや寂しさに、そっと寄り添うこと。
ひとはそんなときに「再生」するのかもしれない、と真に思う物語でした。
加賀谷敦(あんず文庫)


ABOUT ~あらすじ~


ヒトの声に耳を傾け、心を癒やす街の植物は、時に、己が植物であることを忘れてヒトそのものになりきり、元気になろうとする元気すら、なくしてしまうという。
──そんな傷ついた植物の声に耳を傾け、心に寄り添うのが「植物癒し」の仕事。
「植物癒し」が街で出会い言葉を交わす植物や、「蟹」という見たことのない不思議な生き物、そして、常に彼らの傍らにある「ヒト」──。
やがて浮かび上がる、それぞれの「生きる」ことへの問いと導き出す真実とは。
植物癒しとともに、“本の旅”を終えたとき、どこからともなく聴こえてくる小さな心の声に、どうか耳を澄ませてみてください。


【著者コメント】
(『植物癒しと蟹の物語』あとがきより)
暗闇と出会わない人生など、きっとどこにもないのだと思います。今回の幸運な出版によって、「誰かひとりのための物語」が種を蒔くように、多くの人々のもとへ届いていくことを喜ばしく思います。


この本を手に取ってくださった方にとって、ここに記された物語がほんの少しでも足元を照らす日々の支えや慰めとなることを願っています。


【著者略歴】
小林大輝
KOBAYASHI Hiroki

1994年生まれ。兵庫県出身。2018年に幻冬舎・テレビ朝日・pixiv 三社合同の小説コンテスト、ピクシブ文芸大賞で大賞を受賞し、幻冬舎から『Q&A』を出版。テレビ朝日にてドラマ放送。2019年、韓国語版が出版される。


Editor's Voice ~出版社コトノハより~


「ねえ、思い出してみて。君はヒトじゃなくて花なんだよ。
ここに咲いているだけでいいんだよ」
(『植物癒しと蟹の物語』より)


━━この物語に登場する「植物」のような時期を経たことがあります。
そんなとき癒やしてくれたのは、この仕事を通じて
自分の言葉に耳を傾けてくれた仲間や読者の存在でした。
自らを癒やすことはきっと、誰かを助けることになるのだと信じています。

人間の声をそのまま受け取るという、本書で語られる植物も本来は自浄作用によって自らを癒やせます。
けれど、いったんくたびれてしまった植物を癒やすのは、「無(Nothing)」で耳を傾けてくれる植物癒しの存在でした。
でも、もちろんそこには「何もない」わけではないはずです。

人間は夢を見る生き物
2019年、作家の小林大輝さんから見せていただいた『植物癒しと蟹の物語』は、彼の友人であり、スクールカウンセラーである方の、がんを患った家族のために書かれた作品で、当初小林さん自身が10冊のみ自費出版した本でした。

100ページほどの短いこの小説を一読した私たちは、「生きる」ことについて書かれた物語に引き込まれ、もっと多くの人に届けたいという思いから今回の出版に至りました。

「いかに生きるか」。小説『植物癒しと蟹の物語』は、先行きが見えず混迷する社会で見落としがちなこの根源的な問いを、私たちに優しく投げかけます。

その“解”は、読んでいただくお一人お一人に託すこととし、ここでは制作過程で編集者が本書と向き合い、思い至ったことを1つ書き留めておきます。
人が生きる意味や、存在理由を支える「夢」。言い換えれば「志」や「理想とする姿」は、時に、私たちが進む航路のはるか先を照らす灯台となり、時に、先の見えない闇で足元を照らすたいまつとなります。

夢は、そうして背中を押してくれる、美しく頼もしい存在です。

けれども時として、人はそれがどこまでいっても到達しえない幻想だと感じたり、周囲の期待に応えられない自分に嫌気がさしたりと、あんなにも輝いて見えた夢がいつしか、自身に重くのしかかるプレッシャー・自身を縛りつける鎖と化してしまうことがあります。
そうして複雑に見え始めた世界でさまよいそうになったときには、日々のなかで埋もれていきがちな小さな心の声にこそ、そっと耳を傾けてみる。── そんなシンプルなことが、自らを癒やし、また誰かを助けていくことにもなるのだと信じてやみません。


みなさんは、この物語から何を感じるでしょうか?


やさしい文体で書かれた文学作品『植物癒しと蟹の物語』。
植物癒しが、道中に出会う仲間との会話のやりとりには、シンプルでいて力強いたくさんの言葉が詰まっています。
ここでは、作中で多く語られる「夢」にまつわるフレーズを少しだけ抜粋しておきます。

「ヒトは夢を見る生き物だろう?」
「目を開いているか閉じているかの違いだけで、いつもぼくらは夢を見ているんだよ」
「これまで歩いてきた道がみんな夢だったんだ」
「Nothing But Dream」
(すべて『植物癒しと蟹の物語』より)

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