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退職後、田舎に半移住。豊かな暮らしを追求。

立山さん夫妻 70代 元自営業 相模原市と北海道の二重生活
70歳まで自営で営業の仕事をした後、夫婦で北海道に半移住。

コトモファームとの出会い。「偶然」だったが「必然」とも思えた。


旦那さん:
 60代の後半を迎えた時、「さて、自分の最終コーナーをどう生きるか」今の仕事を然るべきタイミングでスパッと辞めるには、どう準備していけばいいか。又、辞めた後の人生の路線はどう進んでいくのか。生と死、残る家内のことも考えながら、様々に思いを巡らせていました。リセット後のテーマの一つに「農ある暮らし」が浮かんでいたのです。

 ある日、ふとTVの画面に目をやったら、そこにコトモファームの取組が写っていたのです。早速、藤沢へ行って自然栽培入門です。「農ある暮らし」がスタートした瞬間でした。

コトモファームで3年目。そこで学んだ数々の気づき。


奥さん:
 私はもともとTVの園芸番組を先生にして、20年以上、自宅の庭を菜園にして色々野菜を作っていました。そんな中、ここ藤沢で水も肥料もやらずに草を刈り敷くという、今までと180度違う栽培方法で育てた野菜を食べてみて、その味の濃いことにものすごく感動したんです。もっと色々作ってみようということで体験サービスも3倍に増やして、藤沢での栽培にのめり込む分、自宅の菜園は休業状態です(笑)
コトモファームで友達もできたし、また収穫物を交換しあったり、畑で景色を眺めながら食べるおにぎりの味は別格です。

旦那さん:
 途中でコトモファーム上級者(農起業向け)コース上級者コースを夫婦で受講したりしながら、畑に関する理解が進んでいきました。水もやらず肥料もあげずにおいしい野菜が育つカラクリは水を求めて自ら深く手根が伸びてゆき、後に栄養素を求めて根ががっちり張って根性のある茎葉に育っていくと知って、腹にストンと落ちました。まるで子育ての要諦を見せられていると思ったりしましたね。

 間引くという作業の大切さもよく分かりました。勿体ないから、そのままにしておくことで、風通しが悪くなり、病気になりやすく、虫を呼び、成果も悪くなる。これも社会生活、親子関係にも風通しや節度を保つことの大事さを暗示させます。

 上級コースでは電子顕微鏡の画像で、1gの土の中に10億もの生き物がいることや、そのことによって豊かな土地になっている。人間もこの地球上で色々な生き物と一緒に生きていることなどを実感させられましたね。

春から秋まで北海道。半移住の生活スタイル。


旦那さん:
 仕事をスパッと辞めて、70歳からの自由時間というご褒美を与えられました。無上の喜びです。長期に滞在しながら農作業も出来る「クラインガルデン」という制度を利用することにしました。北海道の「なつみの里」というところです。そこは20世帯が入居可能な施設で1年更新ですが、10年間は更新できるのです。地質はやや酸性に傾いた20〜30cm掘ると硬い粘土層にぶつかるという、栽培には良好とは言えない環境です。それでも初年度の昨年、藤沢から持ち込んだ種を全て蒔いてみましたが、育たないものはありませんでした。どちらかと言えば酸性好みのジャガイモ、カボチャ、スイカ等は良くできました。それにカンピョウの素である夕顔も苗をもらったので植えて放置したままでしたが、白い花の美しいこと、大きな葉の表面がビロードのようななんとも言えぬ手触り、「実」は長さ70cm直径が25cm、ビックリでした。

奥さん:
 クラインガルテンという制度を利用して、主人が北海道で半年暮らすと言いだした時、私は余り気乗りしなかったんです。土いじりはいいけどもう一つの楽しみのテニスが出来なくなるかもしれないし・・・もともと、私は新しい生活にパッと馴染めるような行動力がないので・・・

 それが行ってみたら、なんとなんと、半年間楽しい毎日でしたね。
向こうへ着いて、すぐにテニスの同好会に入る段取が出来ていて、週2回存分にテニスができました。北海道を去る時は、送別会を2回も開いてもらったし、今年も春の桜の頃に会えるのを楽しみに待たれているほどです。目の前の畑で採った旬の野菜が毎食食卓に並んで、窓から見える大草原、鳥の声、はるか遠くの雪を残す峰に美しい夕日が沈んでいく。絵のような景色を眺めながらの食事も楽しみの一つでした。

最終コーナーの人生の過ごし方


奥さん:
 私自身は、還暦祝にと家族全員での一泊旅行がついこないだのような感覚なので、まだ「死」についてはピンときません。性格的にはあまり先のことを考えられないタチなので、好きな土いじりとテニスが出来て、たまに旅行に行けたら幸せなんです。

旦那さん:
 70歳の今、医者にかからず、薬も飲まずに入られることは、実に幸運、感謝の極みです。子供の頃、将来なりたくない職業が営業マンでした。その最も嫌っていた営業という仕事で46年間生活してきたものですから、世の中は面白いものです。スタートが生命保険会社、転職して損害保険会社、独立して、当時は草分だった生損保兼営の保険代理店として半世紀近く生きてきました。世の中で一番嫌いな職業をなんとかこなせば、世の中で怖いものはなくなるんじゃないかって、逆説的な発想のスタートでしたね。いつも人と違った道を自分で考えて進むみたいなことをやってきました。

 仕事を通じて、多くの人のケガ、病気、死ぬということ、医療の現場、賠償をめぐる人間模様をたくさん経験できたのも、大嫌いな仕事に就いたおかげだったと思うんです。人間も生物種の一つに過ぎない。このことを改めて思います。自然と融合する中で、多くの生き物と共存させてもらう気持ちを持ちながら、「葬式無用、戒名不用」の最後の瞬間までサラッと、にこやかに過ごしていこうと思います。

(2017年3月8日)

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