『ほわほわさくら』東直子/木内達朗【絵本】#12

きのうは季節外れに雪の話を書いたが、いまはすっかり桜の季節で、それももう散って終わりかけている。

ことしはなかなか咲かなかったのが、咲きはじめると一気に満開で、散るのもあっという間だ。
温暖化で春が年々短くなっているが、桜の咲く期間もどんどん短くなって、そのうち朝顔みたいに朝咲いたら夜はもう散っている、なんてことになるのかもしれない。

週末の晴れた日、家族そろって花見へ出かける。
全員そろってのお出かけで、子どもも心なしか普段よりはしゃいでいるように見える。

花にはまだ興味がないみたいで、
「Tちゃん、桜咲いてるね」
なんて云ってこちらが指さしても、わかっているのかいないのか、ぽんやりしたようすで、それよりは桜並木の鋪道を走る車のほうに興味があって、
これ、バス!
これ、こうしょさぎょうしゃ!
などと得意げに振り返っては教えてくれる。花よりくるま、である。

公園に着いて、てくてく歩く子どもを、大人たちみんなで追いかけて花見をする。
風に吹かれた桜の花びらが、列になってふわっと寄せる波に包まれた子どもは、何が起きたのかわからない、と云ったようすでぽやんとしていたのが、吹き去ったあとに一拍遅れて嬉しくなって、ニコっと笑う。

その吹かれてやって来た花びらの一片を妻が拾って、
「これ、桜だよ」
と教えてやると、
「さくら、ほわほわ」
と云って、このまえ絵本で予習したことを思い出したようすである。

公園のベンチに腰掛け、こめりで買ってきたおむすびと唐揚げ、玉子焼きのセットを、桜を眺めながらみんなして食べる。
もっとも子どもはおむすびに夢中で、もっともっとといって花見どころではない。
花より団子、ならぬ花よりこめり、である。

お腹もいっぱいになったところで、公園内の池のまわりをぐるり散策する。
川の流れを指さして、かわ!かわ!と云ったり、池の鯉をじっと見ていたかとおもうと、不意に、おさかな!と指さしたり。
大人も気づかないような足下に、しゃがみこんでは、
これ、タンポポ!
と教えてくれる。
頭上に広がる満開の桜には、気づいているのかいないのか、見向きもしない。
子の目線はずっと低い。見えている世界は全然ちがう。

おもえば僕も、桜の花がいいなあとおもうようになったのは、三十を過ぎてからで、子どものうちは全然興味がなかったなあ、と子を見て想いだす。
そのせいなのか、花の名前はいまでもさっぱりわからなくて、タンポポとチューリップくらいはさすがにわかるが、梅、桃、桜あたりになると区別はあやしくなり、きのうも子どもが黄色い花を指さして、これ、タンポポ!と云っていたけど、木の枝の先にあるそれは、似ているもののどうもちがうようで、でも何なのか見当がつかない。

子どもといっしょに花の名前も学んでいけたらいい、とおもう。

桜にまつわる記事は以前にこんな話も。

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