見出し画像

コスモテック、『 デザインのひきだし 』 表紙加工 特集(2011-2020)

コスモテックの青木です。

お客様からコスモテックへお問い合わせを頂くメールやお打合せの際、ありがたいことに、「 コスモさんが表紙を加工した 『 デザインのひきだし 』 全号持ってます 」 「 コスモさんの加工した表紙はどこか異質で物体感・物質感あるものばかりですよね 」 と言っていただくことが増えてきました。

今回はコスモテックでお手伝いさせて頂いた、書籍 『 デザインのひきだし 』 の表紙について振り返りたいと思います。 毎回 表紙加工は、お馴染み 『 デザインのひきだし 』 編集長 津田淳子さんからの一本の電話から幕があけるのです。

ダウンロード (1)


『 デザインのひきだし 』 は2007年の1号から、現在(2021年8月) までに43号が発売されています。コスモテックは今まで計7回に渡り、『 デザインのひきだし 』 の表紙加工に関わらせて頂きました。書籍の中の特集などを含めると、『 デザインのひきだし 』 へのコスモテックの登場回数は… 大変ありがたいことに、ちょっと数えるのがコワイくらいですので、今回は表紙加工のみをご紹介します。

はじめて表紙加工のお手伝いをさせて頂いたのが、今からちょうど10年前の2011年。
当時は、その後発行された 『 デザインのひきだし 』 の約 1/6 もの表紙加工をお手伝いさせて頂くことになろうとは… 想像もつきませんでした。


◉ 『 デザインのひきだし13 』 表紙(2011年)
青焼きへの箔押し

画像1
画像2

文 : 青木(コスモテック) 
「 青焼きって? 」 そうです、あの独特な濃紺色の、主に建築図面や機械の設計図の複写で使われているアレです。

青焼きをそのまま表紙にしているので、通常の書籍の表紙では有り得ない薄さ! 最初に 『 デザインのひきだし 』 編集長の津田さんからお話を頂いた際も 「 え!? 青焼きって、あの青焼きですよね? しかも、表紙にって… え??」 って訊き直してしまいました。

記事 : コスモテックブログ( 2011年06月04日 )

◉ 『 デザインのひきだし20 』 表紙(2013年)
複写伝票への箔押し

ダウンロード

文:青木(コスモテック)
ぺらっぺらの伝票。しかも3枚複写式。
なぜこれを表紙にしようと思い付いたのか… 謎過ぎる。
津田さんのアイディアには毎度度肝を抜かされます。

伝票用紙でできた表紙の1枚目に箔押しして、箔押し時の加圧によって複写の2枚目、3枚目にも写すという仕様。

箔押し加工時に圧を強くし過ぎてしまうと、複写の2枚目、3枚目がべったりとくっついてしまい、剥がしにくくなってしまう。重なっている2枚目、3枚目の紙がくっついてしまわないよう慎重に加減して加工しました。

記事 : コスモテックブログ( 2013年10月09日 )

◉ 『 デザインのひきだし22 』 表紙(2014年)
役目・役割を終えたお札が漉き込まれた紙への箔押し

画像4
画像5

文:青木(コスモテック)
役目・役割を終えたお札が最大で一冊あたり 約5万3000円分 漉き込まれた紙( 紙幣混抄紙 )に箔押ししました。

お札が漉き込まれたこの紙は、見た目は非常に薄く柔らかそうですが、お札の破片は箔押し加工の高圧力をもってしても潰れないほど強靭!加工は通常のデコボコしたテクスチャーの紙のように一筋縄ではいきませんでした。

記事 : コスモテックブログ( 2014年06月02日 )

◉ 『 デザインのひきだし26 』 表紙(2015年)
パルプシートへの箔押し

画像6
画像7

文:青木(コスモテック)
パルプシートは、シート状になった 「 紙を作る原料のかたまり 」 みたいなものです。紙の断面はガサガサしていたり、端っこはくるっと丸まっていたり、更には1シート毎にサイズが少し異なっていたりと、荒々しく、素の状態。

表面のボコボコ感は激しく、手触りはガサガサ。表面も結構硬い。
それ故に箔押しはきれいに定着せず、完成した表紙もランダムに箔の擦れを引き起こし、味わい深い仕上がりに。

記事 : コスモテックブログ( 2015年10月17日 )

◉ 『 デザインのひきだし32 』 表紙(2017年)
工業用包装用紙へのエンボス(浮き出し)

画像8
画像9

文:青木(コスモテック)
『 デザインのひきだし 』 編集長の津田さんと表紙の校正をやり取りする中で、圧を限界までかけまくって、材料がぶち破れるくらいの圧をかけることに。

よく見ると、直線的なグラフィック部は紙が圧に負けて貫通してしまっているところもあります。 本番では、津田さんの 『 これでいいんです! 』 に背中を押されて、ガッツリ圧で押し込みました。

記事 : コスモテックブログ( 2017年09月17日 )

◉ 『 デザインのひきだし39 』 表紙(2020年)
ティッシュへの箔押し

画像10
画像11

文:前田(コスモテック)
ティッシュペーパーも、まさか自分が書籍の表紙を飾る日が来るとは夢にも思わなかったことでしょう。ティッシュペーパーへの箔押しは圧力の強さによっては、押した際に箔ごとティッシュの層がはがれてしまうことがあります。

校正では、ティッシュ5枚重ねの方は押した時に1番上の層のティッシュペーパーが箔に持って行かれて剥がれてしまう確率が高かったため、本番はティッシュ10枚重ねの方で加工をおこないました。

◉ 『 デザインのひきだし41 』 表紙(2020年)
表紙へテープスタンピング加工

画像12
画像13

文:前田(コスモテック)
表紙では、私の note でもご紹介させていただいたコスモテックの新しい技法である「 テープスタンピング 」という加工をご採用頂きました。

「 テープスタンピング 」 は、テープを型抜きしながらベースとなる用紙に圧着させることで、用紙にテープが埋め込まれたようなおもしろい表現ができる技法です。「テープスタンピング」 が流通する初めての機会となり、たくさんの方に興味を持っていただきました。

「こわくはないんですか?」

「 青木さん、これだけの変わった素材に箔押しするのって、こわくはないんですか? 」 と尋ねられることもあります。

ぶっちゃけ、こわい!
もし、ちゃんと押せなかったら…と、頭の中にちらつきます。


今までの多種多様な箔押し経験値があったとしても、経験では測れないことが、 『 デザインのひきだし 』 編集長の津田さんからのご依頼には詰まっています。経験したことのない加工だと、やはりこわい。


そんな後ろ向きな自分も感じながら、一歩前へ前進するのは、やはり 『 お客様に喜んでほしいという気持ち 』 と 『 おもしろそう! 』 が勝ってしまうからです。

表紙の加工を初めて任せていただいた2011年頃は、ご依頼主である津田さんに喜んで頂きたい・あっと驚かせたい! という一心でした。その後は、SNSが発達し手に取って下さるお客様をより近くに感じ取ることが出来るようになり、津田さんと 『 デザインのひきだし 』 愛読者の皆様に 「 この技術・加工よ、届いてくれ! 」 という思いも強くなっていきました。

画像16


一歩踏み出すのはコスモテック自身の決断ではありますが、そのきっかけや後押しは編集長である津田さんや 『 デザインのひきだし 』 愛読者の皆様の大きな力によってもたらされています。

押してみたい。喜んで頂きたい。

今から10年前、 『 デザインのひきだし 』 表紙の加工をお手伝いさせて頂くようになり、この10年の間に7巻の表紙加工をお手伝いさせていただきました。その中で、技術以上に得たもの・培ったものは 『 思いに応える 』 ということだと感じています。

画像15


時代は流れ、令和になり、箔押しの匠 佐藤から現場リーダーの前田にバトンタッチを経て、こうして今も変わらず 『 デザインのひきだし 』 表紙の加工に従事させて頂けることに心から感謝しています。


【 連絡先 】

ようこそ!行列のできる『箔押し印刷工房』へ
http://blog.livedoor.jp/cosmotech_no1/

有限会社コスモテック 青木政憲
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?