サンクス、ゴッドマザー。

アルコールに溺れて記憶をなくしたことなんて、私は一度もなかった。ずっとそう思っていました。その言葉を聞くまでは。

ある日、少し飲み過ぎて帰ったあと、遠距離中のパートナーと電話をしました。

仕事の話をした記憶は十二分にあります。ベッドに転がり、真っ白な天井と枕を交互に見比べながら。

でも、そんな言葉を発したことを何一つ私は覚えていません。

「なんで、結婚できないの」だなんて。

私はそんな生ぬるい言葉を吐き出したのか。出来なくても仕方がないと割り切っているつもりだったのに。諦めていたと思っていたかったのに。

何気なくパートナーが「この前、そう言ってたよ」と私に言って来たときの情景を、今でも私はふと思い出してしまうのです。ほんの少し苦い、オランジェットを頬張った時。なんだかその時と似ている気持ち。

迷いと、苦しみと、葛藤と。
時に面倒なその気持ちを大切に携えながら、それでもやっぱり歩んでいきたいと思いました。

こんな言葉も少しアルコールを体に含ませてあげないと書けないのは、ちょっと情けないけど。

でも、素直にさせてくれてありがとう、ゴッドマザー。美しい氷が飴色のアマレットに沈んでいくたびに、素直になれる気がします。

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