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お家へ帰ろう

私にはとても信頼しているスピリチュアルリーダーの方がいるのですけど、その方に以前、私の前世はバイキングだったと指摘されたことがあるのです。バイキング船の船長だったと。詳細は省きますが、これには本当に本当に腑に落ちました。なぜなら、私はひと度ハンドルを握れば、もうどこまでも走りたい欲求に駆られてきたし、ゴールなんて永遠に来なければいいと何度も思ってきたのです。果てしない海を旅するバイキングは、きっと自由な風を受けながら気ままに旅をしていたことでしょう。当時の私も、ハンドルを握りしめてどこまでも行けるような気持ちでした。ずーっとずーっと昔の、海も時代も超えた自分と繋がった不思議な一瞬でした。

私は、ひと所には留まってはいられない性分なのです。
ええ、寅さんの気持ちが私にはわかります。私、もしかして寅さんなんじゃない?ってくらいわかります。


のんべんだらりとした生活を送っていると、ふとした拍子に、車の中で運転しながらいろいろなことに思いをめぐらせることや、並木沿いの流れるように通過していく木洩れ日を思い出す。そして、どこまでも続く道をどこまでも運転したいという心情が胸の中に蘇ってくるのである。ポールがアパートのドアを開ける時、私はふと後ろを振り返って、そこから見えるWellingtonの景色を眺めた。深い緑色の丘陵に、薄い虹がかかっていた。その虹を見て、私はホストファミリーの家のキッチンから見える、あの美しい景色が無性に懐かしくなった。鮮やかな緑の草が生える牧場とそこにかかる大きな虹。あの、のどかな風の音しかしない景色。なぜ、私はここにいるんだろう。

私は私の町、Whangareiに帰ることに決めた。

ポールにそれを告げると、ポールは残念そうに、「本当にもう帰ってしまうのかい?」と何度も聞いてきた。うん、明日には出発するよ。途中でタウポで一泊するかもしれないけど、もう帰る。なんだかそんな気持ちなんだ。

「またいつか来てくれるかい?」

時間があったらね。Whangareiに戻ったら、アメリカに旅に出る予定だし、アメリカからニュージーランドに戻ってきた後の予定は、まだ全然決めてないんだ。

「なんてこった! ニュージーランドにいられる貴重な時間をアメリカなんかで3ヶ月も無駄にするなんて!! アメリカから戻ってきたら、Wellingtonにおいで。ここに住んでもいいよ。フラット代はいらないから、好きなだけ住むといいよ。君なら大歓迎だ」

ははは。私がここに居座ったら、他の女の子を連れて来れないじゃないの。女の子達がヘンに思うよ。ポールについてきたらお家には別の女がいた、なんていったらせっかくのお遊びが台無しになっちゃうんじゃないの?

ポールは笑っていた。その後、ワインを飲みながら明け方まで盛りあがった。私達はいろんな話しをした。恋愛について、結婚について、生涯の目的について。話し疲れて、お互い寝床に就いた。

翌日、起きたら昼過ぎだった。

ま、まじかーーーっ!!今日1日でどこまで行けるか。出来ればタウポなんかで一泊せずに、Aucklandまで一気に行きたい。しかし!出発が午後では、何時に目的地まで着くかわからない。うがー。

私は急いで支度に取りかかった。ポールが「もう一泊していけば?」と聞いてくる。いいや。もう行くんだ。もう行きたいんだ。私は支度する手を止めなかった。

すっかり準備が整った頃、ポールがコーヒーとサンドイッチを作って持ってきてくれた。「途中でお腹が空くといけないから、腹ごしらえをした方がいい」って…私、さっき食事を済ませたばっかりなのに。でも、ありがとう!ありがたく頂きます。私はポールの作ってくれたツナとマヨネーズたっぷりのサンドイッチを頬張った。バクバク食べる私を見ながら、ポールは何度も何度も繰り返して言っていた。

「いいかい? アメリカはとっても恐い国なんだ。ニュージーランドみたいに平和な国じゃないんだ。危険なんだよ。いいかい? 気をつけるんだよ。アメリカからでもちゃんと連絡くれよ。E-mailでね」

心配してくれてありがとう。お世話になりました。ありがとう。サンドイッチとコーヒーもありがとう。おいしかった。ちゃんと連絡もするよ。あんまし心配しないで。私、大丈夫だと思うよ。

じゃあ私、行くね。
私は靴を履いて、立ちあがった。

最後に、再びポールに抱きしめられて、私達はさよならをした。
私が車のエンジンをかけるときには、太陽は西に傾いていた。

(つづく)


ポール、まるでお母さんじゃん…。
そういえば、私の周りの男の人達って、なんでか知らないけどみんな「いい仕事するお母さん」みたいになっていくんですよ。どんな男気に溢れる人でも、どんなプレイボーイでも、どんな変態でも、みんな「いいお母さん」になっちゃうんです。お腹空いてないか、寒くないか、暑くないか、事故しないか、蚊に刺されたら十字しろ、魚の骨、迷子にならないか…と、とにかくそんなことばっかりいう人になっちゃうんです。

私、よっぽど人としてポンコツなんでしょうね。。。

さて、次回はニュージーランド旅日記最終回です。
その後、私はNZからアメリカ一周一人旅に出発します。アメリカではニュージーランドにはないスケールの大きなドラマや出会いがありました。

アメリカ一人旅の日記もぜひよろしくお願い致します!

#バイキングマインド #ゴールのない放浪が旅なんだ #どこまでも自由に

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