なぜこの一般向け書籍を上梓するに至ったのか?~新著『認知症を止める 「脳ドック」を活かした対策』で伝えたい想い (1)
私の書籍について話をさせて下さい。『認知症を止める 「脳ドック」を活かした対策: 異変(萎縮・血管)をつかんで事前に手を打つ』というタイトルで、三笠書房さんから本日5月11日に発売されます。筑波大学名誉教授、現メモリークリニックお茶の水理事長で、認知症医療の第一人者でもある朝田隆先生との共著です。
「番外編」の私的な連動企画として、書籍には書ききれなった内容についてnoteに綴ります。
第一弾は、本書籍を上梓するに至った経緯・想いをお伝えします。
1. 脳の研究者としての問題意識
私は、米国ジョンズホプキンス大学医学部で30年にわたり脳の研究をして、多くの論文も発表してまいりました。その一方で、脳の病気の多くが一度発症すると治すことが難しく、なかなか対策を打つことができないことに歯がゆい思いをしてきました。
どんなに素晴らしい研究の成果が出たとしても、社会に価値として還元できていないことに不足感を覚えていた、とも言えます。
2. 深刻化する「認知症」という社会課題
事実、私たちの健康寿命を奪う要因を見てみると認知症がかなりの速度で増え続けており、現在では介護要因の圧倒的1位となっています。
一方的に増え続けているというのが現状なのです。そして私たちの人口ピラミッドを見てみると、今後高年齢者は増え続けます。
このまま放置すれば2050年には、認知症患者は1000万人を超え、全人口の10人に1人、高齢者の3~4人に1人が認知症になるという試算もあります。自分の周りを見渡した時、このような割合で認知症の方がいるというのは恐ろしいことです。その一人に自分が含まれているかもしれないのでなおさらです。
なぜこうも脳の病気が増えているのかを考えますと、その要因の一つに、他の病気が減り長生きできるようになった、ということもあります。いまや女性の二人に一人は90歳を超える時代です。ただ、それだけでは説明がつかないほどに認知症は増え続けています。
3. 研究界で得た正しい知識を伝えたい
そのような中、最近専門家の中で通説になりつつあるのが、「認知症は生活習慣病である」という考え方です。しかしながら、この考えはまだ世間には浸透しておらず、厚労省の指針では、まだ認知症は生活習慣病には含まれていません。
「認知症は生活習慣病である」ということは、
認知症は、遺伝とかくじを引くように発症するのではなく、改善する余地がある生活習慣の長年にわたる蓄積の結果であるということ
発症してからではできることは限られており、予防が最大の防御であるということ
を意味します。
長年続けてきた研究界で限界を感じていた私が、「研究の成果を社会に還元する」ということを志した際、まず始めなくてはいけないと考えたのが啓蒙でした。
研究で得た最先端の知識と開発してきた技術を皆様に伝えることにより、自分の脳にもっと興味を持っていただき、そして「脳の健康は自分の手で管理できるんだ」という責任感と自信を持っていただきたいと考えています。
今回発表した『認知症を止める 「脳ドック」を活かした対策』はまずその第一弾となります。ぜひ手に取っていただき、今後の脳健康を考える指針としていただけると幸甚です。
次回は、具体的な認知症対策を考える上で、米国で長年研究してきた者の視点から捉えた日本のユニークさと可能性について触れたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Information
書籍の情報
著者 : 朝田隆、森進
出版社 : 三笠書房 (2023/5/11)
発売日 : 2023/5/11
単行本 : 224ページ
電子書籍もありISBN-10 : 4837929419
ISBN-13 : 978-4837929413
本書の目次
はじめに|あなたの「健康寿命」は「認知寿命」が決めている 森進
1章|あなたの脳の「今」と「これから」を知るために ―「健康寿命」も大事。「認知寿命」はもっと大事
2章|「脳ドック」で脳の状態がここまでわかる ―ブラックボックスだった脳を “見える化” する
3章|認知症は「迎え撃つ」時代へ ―脳を早く老化させていないか
4章|「認知症グレーゾーン」で踏みとどまるには ―チェックポイント、検査、薬
5章|脳の健康を守り続ける効果的な「セルフケア」 ―食、運動、睡眠、そして日常
おわりに|認知症は、「早期発見、早期絶望」から「早期発見、早期治療」の時代へ 朝田隆
(本書の1~3章は森進、4~5章はcが主に執筆しました)
プレスリリース
株式会社エム プレスリリース
株式会社エム、『認知症を止める 「脳ドック」を活かした対策』を三笠書房より発刊
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