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大学教員の就活―面接ではこちらもみてやろう―

(1年以上もほったらかしにしていました。反省しきり……。
じつは昨年度に転籍し、今は別の大学で働いています。あくまでも自分の経験にもとづいて、ですが、今回は自分だったらこの時期に知りたいことを記録します)

大学の「教育職員職」の募集

 6月に入り、本格的に各研究機関の公募情報がオープンになってきた。JREC-INや所属学会からのメールが続々と届く毎日ですね。
 わたしがいる文系・人文社会科学系では、よっぽど後任が見つからなかったり開講時期が迫っていたりしない限り、現在は公募で募集していることがほとんどだと思う。わたしは今の職場で3校目だけれど、すべて公募でした。
 履歴書と研究業績書、着任後の抱負、現在の研究状況と研究計画、さらに「小論文」がある場合はそれを作文して、書類一式を揃える。ここまででめちゃくちゃな労力と時間がかかる。最近は研究業績書で文科省の書式を使うところが多いと思うが、一方で大学独自の書き方が指定されるので(西暦か和暦か、発表年月日か年月か、学会名まで書くか否か、概要の文字数は200文字程度か以内か……)いくらアレンジできるとはいえ、募集要項に合わせてちょこちょこ直すうちに気が狂いそうになる。こんな細かいところを見ているのかしら?と思うけれど、「。」か「.」か、なんていう本当に細かいところを見て、書式が整っていない!と指摘(&減点)する選考委員はどの大学にも確実にいる。気をつけましょう……。
 自分の代表の業績数点と学位記のコピーも封筒に詰めて、書留で郵送。締め切りに間に合えばいいので、早く送らなきゃと焦らなくて大丈夫です。数日間はそわそわするけれど、書類選考でまず3週間〜1ヶ月ほどかかるので、気にせず過ごすべし。忘れたころに面接連絡が届きます。

応募者が「みるポイント」:控室まで

 現在はゼミ生など学生たちに就活指導をするので、面接ではたんに受け答えをするだけでなく、自分が相手(企業・面接官)をみてやりなさいな、と伝えている。面接に進んだからにはぜったいに内定を得たいのだけれど、しかし、もしも働いたときに自分のポリシーや考え方や性格と合わなければ苦痛だからである。「なんでこんな仕事をしなきゃいけないんだ?」と思うことは確実にある。あるけれど、その頻度はなるべく少ないほうがいい。
 今まで経験した面接のパターンはばらばら。多くの場合は4、5名のライバルがいる。その学科の教員の職位やジェンダー構成にもよるが、面接で研究テーマや研究業績はもちろん、年齢やジェンダー、現在の職位などがばらばらな人が集まることが多い。わたしが落ちた大学で就職していたのは、わたしより圧倒的にキャリア・業績・知名度のある方であったり、ポスドクのお若い方であったりした。いろいろな可能性を試したいのだろう(ただしわたしの場合、最初に就職した大学のときはわたし以外の人はいなかった。たいていはそんなリスクはおかさないと思う……)。

 受付で名前を述べ挨拶をすると、控室へ案内される。控室には自分ひとりしかいない。他のライバルとのバッテイングがないように、廊下でもすれ違わないように計画して時間と場所が組まれている。
 ここでまず、みるポイント。もしも万が一、別の候補の姿や名前が見えてしまったら……もしかしたら選考委員会は、この公募に対してあまり「丁寧」に仕事していないかもしれない。最終でない限り面接なんて交通費が出ないことがほとんどなのに、貴重な時間をさいてお金を払って訪問した応募者に失礼な大学は、たぶん就職したとしても教職員を雑に扱うだろう。
 逆に、控室まで案内する職員さんなどがこちらに「丁寧」に接してくださる場合は、公募の候補者を大事にしてくれる。業務に真摯に取り組んでいるのだなと思える(それでうっかり勘違いして、受かるのでは?と思っちゃうのだが)。

応募者が「みるポイント」:面接本番にて

 面接室では選考委員が数名いる。わたしの経験では、6、7名程度のところから10名近いところまであった。選考委員の中心は公募を出した学科専攻の教員だが、そのほかに学部長や他学部の教員など大学全体の教員が選考委員を務めている。
 みるポイントの二つ目。面接が始まるときに、選考委員それぞれが自己紹介をしてくれるところは、とても「感じが良い」。選考委員長の導入で「◯◯学科の△△です」と自己紹介がある。教員同士の関係がまぁ良好なのかな、と思えるところである。さらにポイント三つ目は、質疑応答で選考委員の教員が話すことに他の教員が反応しているか。これもなかなかグッとくる、教員同士が良い雰囲気なのかなと感じるところだ。もちろん実際はもっと複雑な人間関係があるのだが、少なくとも面接という場の雰囲気を良くしてくれていることで好感をもて、ぜひわたしをこの大学の一員に!と願ってしまう。
 面接では、こちらが提出した応募書類や模擬授業にもとづいてさまざまな質問を出される(模擬授業や質疑応答はまた別の機会にぜひ)。まずは研究や担当する授業内容に関する質問があり、学生対応や学生指導についての質問、そしてまるで学会発表のような、各選考委員の研究や関心にもとづいた質問が出される。
 質問のどこにウェイトがあるかで、その大学や学科の体制や現状が伺える。それが、みるポイントの四つ目である。
 学生対応について多く尋ねられる場合は、それに力を入れていることがよくわかる。さまざまな学生がいてマニュアル通りの対応ではNGなのだろう(実際にそうだった)。ありきたりの答えにせず、自分の学生対応の経験から正直に答えるといいと思う。
 研究についてよく尋ねられる場合は、研究活動や外部資金獲得などに力を入れてもいい、ということが察せられる。たとえば学会発表で校務を欠席することも認められるのだろう。ありがたい。
 そして授業や校務(学内委員)について多く尋ねられる場合は、これはもうもちろん、大学の仕事をがんばってくれる人かどうかをみられている。オープンキャンパスや各種入試、保護者対応のほか、地域連携・高大連携にも積極的に参加するか、さらに学内の複数の委員会も担当できるかどうか。はっきり言って「働ける人」かどうか……。ハードです。が、悪いことではないし、業務自体はどこの大学も似たようなものだと思う。もし自分が選考する立場だったら、やっぱり前向きに協力できる方と一緒に働きたいから。
 もちろん、選考委員の態度もしっかりみておきたい。これまでわたしが経験したのは、「こちらの発言の途中で遮られる」、「思いっきりあくび・寝ている」、「「あなたの説明では意味がわからない」または「自分にわかるように説明してほしい」と言う(そこは「学生にわかるように」では?)」。さらに終わった途端に雑談し、「あー疲れた」「お腹すいた」など言ってしまう教員もいた。いや我慢してくれ……せめてこちらが部屋を出ていくまでは。つまり、同じ「大学教員・研究者」、もしかしたら「同僚」になるかもしれない人間に対して、敬意が払われているかどうかである。この業界はおおむね買い手市場なので、選考する側が立場が上だと勘違いすることがあるのだろう。
 一方で、面接が終わったあとに出口まで送ってくれたり、最後まで丁寧に挨拶してくれたりするところは、やはり「大事にしてくれる」のかなと思う。面接する側も休日出勤で大変だろうが、もちろん応募してきたこちらも、精一杯の準備をして臨んでいるのだ。応募者側の立場を汲み取り、対等に接してくれる大学はとてもありがたい。なんといっても、数カ月後は一緒に働く仲間になっているかもしれないのだから。

ということで、就活をがんばろう

 この先数十年の人生を考えたとき、大学という職場がはたして「良い」環境なのかは疑問だろう。はっきり言って、きつい。仕事は年々ハードになる。しかしやはり、好きなテーマを設定し好きな研究を自分なりに計画してできること、研究室という自分だけの空間をもてること、そして学生たちと日々接して刺激を受けられることは、他にはない「良い」環境である。
 少しでも「良い」環境を求めて、ぜひとも諦めずにがんばりたい。

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